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竜の女王  作者: M.D
補講4
128/688

03

「特化型補助具は”銀を主体とする金属”の配合率を変え、さらに複雑な文様を彫ることによって、魔導力を変質させて様々な効果を付与することを可能とする。補助具に彫られている文様はこんな感じだね。」


 電子版に様々な文様が映し出される。


「見て分かるように、汎用型補助具に彫られている文様は簡単なものだけれど、特化型補助具に彫られている文様はかなり複雑だ。特化型補助具による効果は”銀を主体とする金属”の配合率とこの複雑な文様によって得られている、と考えられているんだ。」

「文様によって効果が変わるなんて不思議ですね。」

「そうなんだよ。文様によって効果が変わる理由を解明しようとはしているけれど、まだほとんど分かっていないんだ。」

「だとすると、どうやって新しい特化型補助具を開発するんですか?」

「運任せだね。」

「運任せ、って行き当たりばったり、ってことじゃないですか。」

「そうなんだが、今のところ法則なんかは見つかっていないから、昔から伝えられている文様を組み合わせたり新しい文様を彫ってみたりして、効果を確かめるしかないのが現状だ。だから、まだ歴史の浅い”楯系”は特化型補助具の種類も少ないんだ。」

「それで”楯系”の魔導翼がなかったりするんですね。」

「そういうことだ。」


「2つめは作成方法の違いだ。補助具を作成するためには、魔法使いが魔力を流しながら補助具に文様を彫っていく必要があって、機械加工ができないんだ。」


 電子黒板にその様子が映し出される。


「補助具って手作りなんですか?」

「そのとおり。補助具は職人が手作りしていて、5個作って1個良品が取れればいい方らしい。機械加工ができれば大量生産も可能になって値段も下がるんだろうけど、いまだ実現はしていないんだ。」

「魔力を流す経路を機械に組み込めば機械加工もできるようになるはずだから、そんな工作機械を作れば補助具の価格を下げられるかもしれないですね。」

「樹君と同じように考えている人もいて研究もしているみたいだけれど、実現は難しそうなんだよ。東京大学にもそんな研究をしている人がいるから、興味があるんだったら進学して研究してみる、というのも手だね。」


「東大か。目指してみようかな。」

「そのためにはもっと勉強を頑張らないといけないよ。魔法使いの優先枠があるとはいえ、試験の点数があまりに悪いと不合格になるからね。」

「頑張ります。」

「樹君、私も応援するよ。」

「ありがとう。僕は魔力量も少ないし、国防軍に入っても活躍できるかどうか分からないから、研究者になろうかと思い始めていたところだったんだ。突然魔法使いになって、将来がどうなるか不安だったんだけど、目標ができたような気がして少し気が楽になった気がする。」

「よかったね。」


「今から目標を1つに絞って邁進するのもいいかもしれないけれど、樹君はまだ高校1年生なんだし、これから別にやりたいことが出てくるかもしれない。だから、今はいろんなことに興味を持って関わってみると良いと思うよ。」

「はい。」

「将来どういう道に進むにしても、高校での勉強をしっかりすることに越したことはないけれど。」

「そうですね。」


「でも、東大に合格できなかったら研究者ではなくて補助具職人になる、というのもありかもしれない。」

「樹君、先生も言ったとおり今から逃げ道をつくるような考えをしちゃダメよ。」

「あくまで可能性の話だって。ちゃんと勉強するから。」

「本当に?それじゃ、これから補講や生徒会がない放課後は一緒に勉強しようね。」

「・・・了解。」


「ちなみに、補助具職人って、どんな人がなるんでしょうか?やっぱり手先が器用な人がなるんでしょうか?」

「補助具職人の大半は退役軍人だね。前にも言ったとおり、魔法使いの魔力量は歳とともに増減し、30歳手前までは魔力量は鍛錬や経験に応じて増加し続けるけれど、それ以降は下限値まで減少していくんだ。

 魔力量の下限値が高い人はそのまま国防軍に残ることが多いけど、それ以外の軍人は退役して何らかの仕事に就くことになるんだ。補助具は魔力を流しながら文様を彫っていく必要があって、魔法使いしか補助具職人になれないから、それなりに待遇が良くて退役後の仕事としては良いほうだと思うよ。」

「補助具職人も有望か。」

「樹君、さっきの話をもう忘れちゃったのかな?」

「いや、そんなことはないよ。ただの感想だから。」


「どうして補助具に文様を彫るときに魔力を流す必要があるのでしょうか?」

「それはまだはっきりとは分かっていないけれど、魔力を流しながら文様を彫ると補助具に含まれている魔石が文様に沿って整列して固有の振動数を持つようになるから、というのが今のところ有力な説なんだ。

 魔法の腕輪が呪文を詠唱と同じ振動数の振動を魔石に与えて魔法を発動させるように、補助具も特定の文様によって魔石に固有の振動が与えられることで効果が発揮されるのではないか、考えられているんだ。」

「難しいです。」

「理解するには高校で習う物理や化学の知識が必要になってくるから、樹君や美姫さんには難しかったかもしれないね。」

「結局、真面目に勉強するしかない、という事ですか。」

「そういうこと。何かを理解しようと思うと基礎知識が必要になるから、高校で習う程度の知識は身に着けておいた方が後々苦労しなくて済むと思うよ。」

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