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竜の女王  作者: M.D
2170年夏
122/688

29

 コンコンコン


「美姫ちゃん。今いいかしら?」

「はい。どうぞ。」


 病室に入ってきたのは亜紀様、その執事である左衛門さん、そして護衛と思われる男性の3人だった。


「美姫ちゃんのことが心配だから来てしまいました。」

「亜紀様、お忙しいのに来て頂きありがとうございます。」

「肋骨を骨折していた、って聞いたときにはびっくりしたけど、手術が無事終わって良かったわ。」

「ご心配をおかけして申し訳ありません。それに、病室の手配までして頂きありがとうございました。」

「いいのよ、かわいい美姫ちゃんのためだから。」

「ありがとうございます。」

「それに、医師には万全の体制で臨むよう指示してあったから、傷が残るようなことはないと思うわよ。」

「お医者様の話だと、手術痕は残らないそうです。」

「そう。それは良かったわ。」


「美姫ちゃん、何か困っていることはない?」

「樹君も無事ですし、今のところはなにもありません。」

「そうそう、樹君には感謝しないといけないわね。」


 亜紀様は僕の方に向き直った。


「美姫ちゃんを守ってくれてありがとう。もし、樹君が魔導砲を防いでくれていなかったら、と思うとぞっとするわ。」

「いえ、僕が至らないせいで美姫さんに怪我をさせてしまいました。」

「それでも樹君がいたおかげで美姫ちゃんが大怪我をしなくて済んだのだから、私も樹君をお世話したかいがあったというものよ。」

「ありがとうございます。」



「純一から樹君は ”銃剣系”の魔法の腕輪に適正があると聞いていたけれど、”楯系”魔法も使えたのね。」

「はい。そうみたいです。」

「でも、いくら何でも短期間であの魔導砲を防ぐことができるような魔導楯を発現できるようになるとは思えないわ。正さんは魔力の暴走ということで魔闘会の場は収めたと聞いているけど、本当は魔力の暴走なんかじゃないんでしょう?」


(正さん、って?)

(六条軍務尚書のことよ。)

(あぁ、軍務尚書って、六条正、っていうんだったっけ。)


「無我夢中だったので、よく覚えていないんです。」

「でも、誰かに教えてもらわなければ、短期間で”楯系”魔法を使いこなすことなんてできないわ。まさか、命の危険にさらされて本能的に”楯系”魔法を使えるようになった、とか言わないわよね?」

「はい。」

「それじゃ、国防軍の施設でも使って教えてもらったのかしら?」

「何も明かさないことを条件に教えて頂いたので、申し訳ありませんがお話できません。」

「誰から教わったのかも言えないのね。」

「すみません。桐生家に関係のある方としか言えません。」

「そう。”楯系”魔法を教えられる人は限られているから、言えないのは仕方ないかもしれないけれど、いつか話してくれると嬉しいわ。」

「はい。」


(やっぱり亜紀様も樹君の魔導楯について質問してきたね。)

(誰しもが疑問に思う事だろうけど、さすがにグレンさんに教えてもらったなんて言っても信じてくれないだろうし。)

(それはそうよ。記録上は亡くなった方なんだから。)

(説明の仕方を事前に決めておいてよかった。)


「それにしても、過剰なまでに魔導砲を集中させるなんて、麗華さんは卑劣な手を使うわね。大会の趣旨とは大きくかけ離れた行為だから、抗議するつもりよ。」

「亜紀様は魔闘会を見にいらしていたのですか?」

「ううん。私は忙しくて見に行けなかったから、映像で試合を見たのだけれど、美姫ちゃんが怪我をするどころじゃない魔導砲の威力と数だったわ。3年の生徒も加担していただなんて、言語道断よ。」

「私もあれほどの魔導砲だとは思いませんでした。それと、3年生は麗華さんに命令されてのことなので、あまり責めてあげないで下さい。」

「美姫ちゃんは優しいのね。でも、3年生は麗華さんの命令を毅然と拒否すべきだったのよ。」


「おそらく、麗華さんの命令を拒否できない理由のある”大砲系”の3年生を選んであの試合に出したのだと思います。」

「樹君、それはどういうこと?」

「麗華さんがあの試合の対戦を仕組んだようなんです。」

「つまり、麗華さんの言う事聞く3年生を使って美姫ちゃんに仕返しをするために対戦表を操作した、ということ?」

「そういうことです。」

「もしそうだとすると、一大事ね。でも、その証拠がないわ。」


「証拠ならあります。」

「本当に?」

「はい。職員室のサーバを調べたところ、操作される前の対戦表を見つけました。」

「職員室のサーバには電子鍵がかかっているんじゃないの?樹君はその鍵を開錠する技術をもっているの?」

「いえ、サーバを調べたのは百合子さんです。僕にはできないので、どのようにして鍵を開錠したのかまでは分かりません。」

「そう。百合子さんも”大砲系”だったわね。どうして”大砲系”にはやんちゃな生徒が多いのかしら。」

「生徒数が多いので、そういう目立つ生徒も多いのかもしれません。」

「そうかもしれないわね。なんにせよ、証拠があるのだったら、何かあった時の切り札にはできそうね。」


「それと、麗華さんが狙ったのは私ではなくて樹君なんです。」

「どうして麗華さんが樹君を?」

「私が麗華さんに謝罪をしないと試合で集中的に樹君を狙う、と試合前に脅してきたんです。まさか本当にそんなことをするとは思えませんでした。」

「そうだったのね。前回、うちから六条家に厳正な処分を要求して、相当絞られたはずなのに、麗華さんも懲りないわね。」

「それについてなのですが、麗華さんが停学になったのは私が亜紀様に告げ口をしたせいだ、と言いがかりをつけてきたのです。」

「まぁ!それで美姫ちゃんに謝罪をしろ、と言ってきたのね。逆恨みもいいところだわ。」

「はい。私も告げ口なんてしていない、と言ったのですが、信じてもらえなくて。」

「麗華さんも困ったものだわ。誰に似たのかしら。」

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