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「もうおしゃべりは終わりですか?」
「何ですって?」
麗華さんが美姫を睨みつける。
「もしかして、私たちが話し終えるまで待ってくれていたのかしら?美姫は卑怯だから、その間に魔導弾を撃ってくるかと思ったんだけど。」
「そんなことをしても諒太さんが身を挺して防いでしまいますから。」
「あら?やけに諒太を持ち上げるわね。もしかして、諒太に気があるとか?」
「そんなことはありません。」
「まぁ、そんなことはどうでもいいわ。」
「どうでもいいのかよ。」
「これから美姫に私の魔導砲を受けてもらいましょうか。もし、避けたりしたらどうなるか分かるわよね。もう樹は立っているのが精一杯のようだけど?」
好美さんが僕の方に腕を向ける。
「卑怯者!」
「前にも言ったけどこれが私たちの戦術よ。」
「どこが戦術だ。正々堂々戦えよ。」
「これは女同士の話なの。諒太は黙っていて。さぁ、どうするのかしら?」
(美姫さん、僕のことは構わず―――)
(でも、それだと樹君が!)
(僕は大丈夫。情けない話だけど、最悪はグレンさんに助けてもらうことにするよ。)
(分かった。)
「私はあなたには負けません!」
「そう。好美、やっておしまい。」
「はい。麗華様。」
ゴーーー!
パリンッ!
「ぶへぇっ!」
好美さんの魔導砲を魔導盾で受け流しきれずに魔導壁まで吹き飛ばされた。
(いてぇ。)
(それでもあの好美という生徒は手加減をしてくれたようですな。闘技場外まで吹き飛ぶ程度に威力を抑えてくれたようですな。)
(まだ、僕が生きている、ってことはそうかもしれません。)
「大丈夫かい?」
国防軍に所属していると思われる魔法使いが声をかけてきた。
「はい。」
「今から医務室に連れて行くから。」
「すみませんが、このまま試合を見ていたいので、医務室に行きたくないです。」
「しかし、君はかなりの怪我をしているから―――」
「お願いします。」
「分かった。でも危険に思えた時は問答無用で医務室に連れて行くからね。」
「ありがとうございます。」
闘技場の壁にもたれかかるようにして、試合を見つめる。
「好美、なに生ぬるい魔導砲を撃っているのよ。」
「すみません。」
「しょうがないわね。美姫に対しては本気でやりなさい。さぁ、私と好美で美姫を叩きのめしに行くわよ。」
「はい。」
ゴーーー!ゴーーー!ゴーーー!ゴーーー!
麗華さんと好美さんの魔導砲が美姫さんを襲う。
(2対1、いや、麗華さんたちは2つの魔法の腕輪を使っているから4対1か。美姫さんもなかなか反撃できないですね。)
(多勢に無勢ですから仕方ないですな。諒太も上手いこと魔導盾を使って美姫さんの行動を制限していますし。)
ゴーーー!ゴーーー!ゴーーー!ゴーーー!
パシーッ!パシーッ!パシーッ!パシーッ!
「どうして俺を巻き込むんだ!?」
「先輩も魔闘会に参加しているのですから、ここは共闘ということでお願いします。」
「くそう。なんでこうなった!?」
(それに対して、美姫さんは残っている3年生の”楯系”の生徒をうまく楯に使うようになりましたな。)
(同感。でも、僕がもっと強ければ、、、)
(今それを言っても仕方ありませんな。今日のことを糧に、これから強くなっていけば良いのですな。)
「あいつが邪魔ね。好美、やるわよ。」
「はい。」
グゴーーー!グゴーーー!
麗華さんと好美さんが魔力倍化1型を使って強烈な魔導砲を放つと、
パリンッ!
「ぶへらっ!」
”楯系”の3年生は魔導壁まで吹き飛ばされた。
(3年生なんだからあのくらいの魔導砲は受け切ってほしいですね。)
(そうですな。しかし、楯役がいなくなって、美姫さんはこれからが正念場ですな。)
「美姫には避けられてしまったわね。想定内だからいいんだけど。好美、続けるわよ。」
「はい。」
ゴーーー!ゴーーー!ゴーーー!ゴーーー!
麗華さんは喜々として美姫さんに魔導砲を放ち続けた。




