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(後はどうやって魔力倍化2型を発動させるかですね。)
(美姫さんが魔法の腕輪をしていない方の手を樹君の手の甲に重ね、樹君の魔法の腕輪にも触れられるよう密着すればよいはずですな。エレナ様の補助があれば美姫さんが”楯系”の魔法の腕輪を着けていなくても”楯系”魔法の魔力倍化2型を使用することが可能だと思いますが、いかがでしょうか?)
(可能じゃろう。)
(つまり、魔導楯の発動は僕が行って、追加の魔力供給を美姫さんから受ける、という感じになるということでしょうか?)
(そのとおりですな。)
(ぶっつけ本番になりますが、上手くいきますかね?)
(失敗した場合は、ワレとグレンで助けてやるから心配せんでもよいのじゃ。)
(そのためにワシが樹君の中にいるのですからな。)
(よろしくお願いします。)
(ちなみに、双子の魔法使いで魔力倍化ができるんだったら、三つ子の魔法使いだと魔力3倍化ができるのでしょうか?)
(それはほぼ不可能に近いでしょうな。)
(だと思いました。)
(まず、双子の魔法使いが生まれる確率は低く、まして三つ子の魔法使いなど歴史上ほとんどいないのですな。樹君は、魔法の腕輪への適正が胎児が育つ過程で母体から影響を受ける、という話を知っていますかな?)
(肯定。ホルモンの影響だとか言う話を百合子さんから聞きました。)
(そのとおりですな。ワシも少し前に論文を読んで知りました。では、美姫さんは、魔法使いの女性が子供を産む間隔を最低でも2年はあけないといけない、という話を知っていますか?)
(はい。純一先生の補講で聞きました。)
(ワシは双子の魔法使いが生まれる確率が低い理由には、この2つの説が関係しておるのではないかと考えておるのですな。子供を魔法使いとするために胎児の期間に与える何らかの物質を貯めるのに必要な期間が約2年であることが、子供を産む間隔を最低でも2年はあけないといけない理由なのではないか、と推測しておりますな。)
(なるほど。)
(この考えが正しいとすると、双子の場合、1人当たりに与えられる何らかの物質が半分になってしまうため、魔法使いになる確率が低くなると思われますな。実際、魔法使いの家系では双子は忌み嫌われる存在ですしな。)
(つまり、双子が生まれた時には、片方もしくは両方とも 魔法能力喪失者である可能性が高いと。)
(そうですな。)
(であれば、三つ子の魔法使いがほとんどいない理由も説明がつきますね。)
(あくまで仮説で実証されたわけではありませんが。)
(それでも疑問に対する正解に近い答えが得られて良かったです。ありがとうござます。)
闘技場の所定の位置に着くと、麗華さんが不敵な笑みを浮かべていた。
(麗華さんは私たちに余裕で勝てるとでも思っているような表情ね。)
(同意。3年生も心なしか僕の方を見ているような気もする。)
(ほんと、卑怯な手を考えるんだから。)
(開始早々魔力倍化2型の準備を始めると怪しまれるから、美姫さんは一旦麗華さんに向かっていくふりをして、すぐ戻ってきてほしい。)
(そうね。分かった。)
「第3試合を開始する。準備はいいか?」
「「「はい。」」」
「では、始め!」
審判の合図とともに、美姫さんが麗華さんに向かうふりをすると、
「私に謝らなかったことを後悔するといいわ!」
麗華さん、好美さん、そして”大砲系”の3年生2人が同時に魔導砲を放つ。
グゴーーー!ゴー―!ゴー―!
ゴー―!ゴー―! グゴーーー!
(麗華さんの宣言どおり、3年生も樹君を狙ってきたね。)
(それに2つの魔法の腕輪を使って単純に2発の魔導砲を撃つのと、魔力倍化1型を使って威力を2倍にした魔導砲を織り交ぜてきた。僕にあんな威力の魔導砲を受け流すことができるのだろうか?)
(魔導楯の制御はワシがやることにしましょうかな。樹君は魔導楯の維持に集中して下さい。)
(了解。)
美姫さんがギリギリで戻って来て、
(美姫さん!)
(うん!)
手を僕の手に重ね、腕を密着させてくる。
(いくぞ!)
魔力倍化2型を使って6枚の魔導楯を発動すると同時に魔導砲が当たり、辺りが魔導力の光に包まれ真っ白に染まる。
(魔力がすごい勢いで吸われていく!)
(あの威力の魔導砲ですから、美姫さんの魔力があるとはいえ、魔導楯を維持するのには樹君も相応の魔力を消費する必要がありますな。)
(樹君、頑張って!)
歯を食いしばって耐える。
(樹君、もう少しの辛抱ですな。)
(でも、もう限界に近いです。)
(やはり初めてということもあってか、美姫さんからの魔力供給効率が悪いようですな。しかし、ここは耐えるしかありませんな。)
(了解!)




