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竜の女王  作者: M.D
2170年夏
115/688

22

「百合子さんがこっちに向かって手を振ってる気がしない?」

「本当だ。あの女、性懲りもなく!」


 百合子さんたちは颯爽と闘技場を出て行った。


「負けた3年生4班も残念だったな。あの実力だったら上手く2年生2班と共闘できていたら勝てたかもしれないのに。」

「百合子さんの3年生1班の方が1枚も2枚も上手だったから、それはない。」

「そうか?」

「私も樹君に賛成ね。試合開始直後に百合子さんが牽制のための魔導砲を撃って3年生4班の足止めをして、陽菜さんを2年生2班に向かわせることで、各班撃破の体制を整えたんだもの。」

「あの魔導砲にそんな意味があったのか。」

「陽菜さん1人で2年生を倒せるという自信があったからとれた作戦とも言えるけど。」

「姉貴ならやれるだろうな。」


「それに、3年生4班にも迷いがあったと思う。」

「迷い?」

「3年生4班は”大砲系”の生徒2人に”楯系”の生徒1人の班構成だっただろ。」

「あぁ、そうだな。」

「もし2年生2班と共闘できると予想していたんだったら、恐らく”楯系”の生徒を控えに回していたはずだ。」

「3年生4班は2年生2班がどう出てくるか分からなかった、というわけね。」

「そう。3年生4班は百合子さんたちの1班よりも実力で劣っているから、2年生2班が少しでも勝てる可能性のある自分たちを狙ってくるという考えを捨てきれなかったのかもしれない。」


「昨日の第1試合のように”楯系”の生徒がいなくても3年生が2年生に負けることはないと思うが。」

「昨日とは違って2年生2班の他に、百合子さんたちの3年生1班もいる。百合子さんだったら、2年生2班が3年生4班を倒せるよう側面支援するような気がするんだ。」

「そして自分たちは漁夫の利を得ると。百合子さんの考えそうなことね。」

「なるほどな。」

「劣勢を逆転するためには『絶対勝つんだ』という強い意志が必要なんだと思う。3年生4班はそれがなかったんだよ。」


「樹たちは第3試合なんだろ?まだ控室に行かなくてもいいのか?もうすぐ第2試合が始まるぞ。」


 聡の言うとおり、第2試合に出場する生徒はもう所定の位置に着いていた。


「美姫さん、行こう。」

「うん。」



 控室に行く途中で麗華さんと好美さんが待ち伏せていた。


「ごきげんよう、美姫さん。」

「何の用ですか?」

「あらあら、剣呑なこと。華麗さのかけらもないわね。好美もそう思わない?」

「はい、そのとおりです。」


「用がないのであれば失礼します。」

「私達がただあなた達を待っていたわけがないでしょう。おバカさんね。」

「では、どういうご用件でしょうか?」

「ここで土下座してこの前のことを謝罪しなさい。そうすれば、この後の試合で手加減してあげても良くてよ。」

「は?」

「私は寛大だから、今土下座して謝るならこの前のことを許してあげても良い、と言っているのよ。」


「この前のこととは?」

「頭でも打って覚えていないの?高校の屋上での出来事のことよ。」

「あぁ、麗華さんが失禁した事件のことですか。」

「そのことは言わないで!」

「麗華様、、、」

「好美、美姫の話は嘘よ!真に受けてはダメ!」

「本当のことですけどね。」


「美姫、あなたって人は、、、それに、美姫が告げ口をしたせいで私は停学になったのよ。そのことで、こっぴどく怒られたわ。お婆様が庇って下さらなければ今頃どうなっていたことか。」

「私は告げ口なんてしてません。」

「そんなことないわ。美姫が告げ口をしなければ、龍野家から六条家に抗議なんて来るはずないもの。龍野家当主の亜紀様と仲がいいことなんてお見通しなんだから。」

「あれは亜紀様が私のことを慮ってされたことで、私からは何も言っていません。」


「分かったわ。あくまでそう言って謝罪もしないのであれば、この後の試合でボロ雑巾のようになるまで叩きのめしてあげるから。」

「麗華さんにできますか?」

「そのための準備はしきたわ。」

「対戦表を操作したりですか?」

「あら、分かっていたのね。でも、もう対戦相手は変えられないからどうしようもないわよ。」

「そんなことをしたことがバレたらどうなるか分からないのですか?」

「私は六条麗華よ。どうとでもなるわ。」

「どうしようもないですね。」


「それに、今の私がこの前の私と同じだと見くびってもらっては困るわ。あなたに復讐するために特訓をしてきたんだから。」

「それが高校を休んでいた理由ですか。」

「それだけではありませんが。」

「好美は余計なことを言わない。」

「すみません。」


「麗華さんがどんな特訓をしたのか知りませんが、私は負けません。」

「あら、そう。でも、美姫がどれほど強いのかは分からないけど、最初にボロ雑巾のようになるのは美姫じゃなくてそこの彼だから。」

「!?」

「高校に入る直前に魔法使いの能力が確認されて、まだうまく魔力を使いこなせないみたいじゃない。その彼が魔導砲の集中砲火を浴びたらどうなると思う?」

「くっ!」

「私の魔導砲の威力は知っているでしょ。それに、私の他にも”大砲系”の生徒が彼を狙うわ。」

「3年生にも命令したんですね。卑怯ですよ。」

「卑怯なんかじゃないわ。これが戦術というものよ。さぁ、改めて言うわ。ここで土下座してこの前のことを謝罪しなさい!」


(美姫さん、僕なら大丈夫。そのために”楯系”魔法を特訓してきたんだから。)

(樹君、、、)

(そうですな。ワシもついておりますし、謝罪などする必要はありませんな。)

(ありがとうございます。)


「謝罪する理由がありません。それに試合も負けません。」

「何ですって!」

「麗華様、そろそろ。」

「分かったわ。美姫、おぼえてらっしゃい!目にもの見せてあげるんだから!」


 そう言い捨てて麗華さんは去っていった。

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