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魔闘会2日目は2回戦。第1試合には百合子さんが出場する。
「さて、百合子さんの真の実力を見せてもらいましょうか。」
「去年の魔闘会でも2年生なのに3年生と互角に戦えていたから、2回戦では真の実力は見れないかもしれないな。」
「そうね。2回戦を勝ち抜く自信はあるみたいだったし。」
昨日と同じく、出番まで聡と並んで観戦する。
「聡、どうした?憂鬱な顔をして?」
「姉貴が心配で。」
「陽菜さんも百合子さんと同じ班だったっけ。やっぱりお姉さんが傷つくのを見るのはつらい?」
「いや、姉貴が誤って他の生徒を殺してしまったりしないか心配してるんだ。」
「そっちか。」
「大丈夫じゃない?陽菜さんも我を忘れるほど熱くならないと思うし、最悪の場合でも国防軍から派遣された優秀な魔法使いが間に入ってくれると思う。」
「そうだといいんだが。」
出場する生徒が所定の位置に着き、合図を待っていた。
「第1試合を開始する。準備はいいか?」
「「「はい。」」」
「では、始め!」
ゴーー!
審判による試合開始の合図とともに、百合子さんが魔導砲を放つ。
「魔導砲は当たらなかったか。」
「牽制のための魔導砲だから、威力だけを見せつけておいて当てる気はなかったんじゃないかな。」
「そう?」
「ほら、2年生の方を見て。」
おぉ!
「あれが聡のやりたかった魔導楯を切るというやつか。」
2年生の魔導楯がスパッと切れていた。
バコッ!
「ぶへぇっ!」
魔導楯を切った勢いそのままに”楯系”の2年生が陽菜さんに殴られて場外まで吹っ飛ばされた。
「うわっ、痛そう。」
「顔面でまともに受けたからね。」
「あの殴り方はまだましな方だよ、、、」
「聡はどんな殴られ方をしたんだ?」
「思い出したくもねぇ。」
続いて陽菜さんは別の2年生に向かう。
ゴーー!
陽菜さんは2年生の放った魔導砲を華麗に避けて肉薄する。
バシッ!
「はぅっ!」
すれ違いざまに魔導剣を叩きつけて2年生の意識を刈り取った。
「『安心せい。峰うちじゃ。』とか言ってそうな顔だ。」
「魔導剣って峰うちもできるのか?」
「魔導剣の刃を形成し続けるのには意外と魔導力が必要なんだよ。姉貴なら刃の形成を瞬時に行えるから、普段は単なる棒でしかない。」
「そうだったのか。」
「でもあれで殴られると、すげぇ痛いぜ。」
「経験者は語る、ってやつ?」
「あぁ。」
陽菜さんは最後の2年生も気絶させ、2年生は全滅した。
「残りは3年生同士の戦いか。」
「それもすぐ終わりそう。」
「そうね。3年生2人の魔導砲に百合子さん1人で対抗できてるみたいだし、陽菜さんが参戦したら均衡はすぐに崩れるだろうし。」
「両手で魔導砲を放つとか、すげぇとしか言いようがないよな。」
「しかも魔導砲は連射ができなくて必ず溜めを作らなきゃいけないんだけど、そのタイミングまで正確に相手に合わせられてるから。」
「悔しいけど、百合子さんは強いね。」
魔導砲を放っていた3年生の1人が陽菜さんに意識を向けた瞬間、百合子さんの魔導砲が打ち勝ち、よそ見をした3年生をそのまま吹き飛ばした。
「勝負あったか。」
「でも降参しないみたいだぜ。巨大化させた魔導楯で対抗するつもりだ。」
「最後まで戦い抜くつもりなのね。」
「はっ!」
陽菜さんが詰め寄って魔導楯を切り取るが、
「何を!」
すぐに魔導楯を修復して追撃を許さない。
「さすがは3年生だな。2年生と同じというわけとはいかないみたいだ。」
「”大砲系”の生徒が陽菜さんに対してフェイントを入れたから、陽菜さんの踏み込みが甘くなったのかもしれないよ。」
「美姫さんは、そんなとこまで分かるのか、、、」
「覚悟を決めたおかげで集中力が増して、全力以上の力を出せているのかもしれないね。百合子さんに対しながら陽菜さんにフェイントを入れるなんて、普通じゃできないもの。」
「窮鼠猫を噛む、ってやつか。」
「ちっ!」
追撃をあきらめた陽菜さんが魔導楯から距離をとると、
ゴーー!
間髪入れず百合子さんの魔導砲が魔導楯を襲う。
「もう終わりにしましょう。」
更に威力を増した魔導砲によって、魔導楯を形成した”楯系”の生徒の後ろにまわった”大砲系”の生徒もろとも魔導壁まで吹き飛ばした。
「第1試合の勝者は3年生1班!」
審判が百合子さんの班の勝利を宣言し、第1試合が終了した。




