表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
竜の女王  作者: M.D
補講1
11/688

03

 美姫さんと話をしているうちにあっという間に寮に着いた。


「美姫さんは何号室?」

「601号室。樹君は?」

「僕は701号室だから、ちょうど美姫さんの部屋の上だ。」

「ご近所さんだね。」

「寮なんだからご近所さんも何もないと思うけど。」

「それでも、3~6階が女子寮、7~10階が男子寮になってるから、部屋が上下になるなんて奇遇だと思わない?」

「作為的なものを感じなくもないけど、エレナ様が何かしたとか?」


(ワレは何もしておらんのじゃ。)

(それじゃ、全くの偶然なのか。凄い確率だ。)

(本当にそうね。)


「6時になったら食堂で一緒にご飯食べない?説明では聞いたけど初めて食堂を利用するから少し不安なんだ。」

「いいよ。私も樹君と食べようと思ってたから。」



 美姫さんと楽しい夕食をとった後、それぞれ自分の部屋に戻ってエレナ様の話を聞くことにした。食堂で黙っている2人というのもおかしかろうということで。


(魔力についてじゃったのう。)

((はい。お願いします。))


 魂の絆で結ばれているため距離は関係なく話ができる、らしい。


(人間が魔力と呼んでおるのは、先程も言ったように精神エネルギーじゃ。人間は運動すると熱エネルギーを発生するように、精神活動をすると精神エネルギーを発生するのじゃ。)

(運動すると体が熱くなるので熱エネルギーを発生させているのは分かりますが、精神エネルギーを発生させているなんて感じないですけど。)

(勉強した後、疲れたりはせんかのう?運動して発生した熱エネルギーによって体温が上がると辛くなるのと同じで、精神活動をして発生した精神エネルギーが体内にたまると疲れるのじゃ。)


(確かに勉強しすぎると頭が痛くなりますね。)

(樹は頭が痛くなるほど勉強したことないくせに、分かったようなことを言うでないのじゃ。)

(あ・り・ま・す!エレナ様本当に神様なんですか?すごく人間臭いですけど。)

(美姫の魂と結合しておるからのう。美姫の影響じゃ。)

(人のせいにしないで下さい!ところで、精神活動というのは、父が言っていた思考と同じですか?)


 美姫さんが脱線した話を元に戻した。


(思考というのは精神活動の一部じゃ。無意識に手を動かしていることもあるじゃろう?あれも精神活動の一部じゃ。)

(つまり精神エネルギーというのは、脳だけじゃなくて体中の神経を使った際に発生するエネルギーだということですか?)

(その通りじゃ。樹、アホじゃと思っていたが、なかなかどうして。できる子ではないかのう。)


 エレナ様はいつも一言多いような気がする。


(魔法使いと呼ばれておる人間は、普通の人間と比べて精神活動に対する精神エネルギーの発生量が少し多いのじゃ。本来は非効率なことなのじゃが、それを逆に利用するとは、人間も捨てたものではないのう。)

(少し多いだけだから、魔法の腕輪が必要という訳ですか。)

(その考えで間違ってはおらんのじゃ。それと、魔法使いは神経系に精神エネルギーを流す訓練を受けておるようじゃからのう。訓練されていない樹みたいな人間に、無理やり大きな精神エネルギーを流すと神経系がズタボロになるから、修復に2日間かかってしまったのじゃろう。)

(それで僕は2日間も眠っていたんですね。エレナ様のせいで。)

(ワレのせいとか言うでないのじゃ。美姫を助けるためじゃ。名誉の負傷だと思っておくのじゃ。)


 エレナ様の僕に対する扱いがひどい気がする。


(エレナ様は天界に帰るために精神エネルギーをためる必要があるんですよね?)

(そうじゃ。しかし、ワレが美姫の魂から分化して天界に帰るための門を開くためには、これまで美姫から吸収した精神エネルギーでは全く足らなくてのう。)

(美姫さんから吸収って、、、今、さらっとひどいことを言ったような。)

(美姫は精神エネルギーの発生量が多くて、排出が追い付いていないからのう。ワレが吸収しなければ体に悪影響を及ぼして、もう死んでいたかもしれんのじゃ。)

(言い訳臭いうえに恩着せがましいとは。)

(事実なのじゃかから余儀ないではないか。)


(そうだったんですか。今まで生きてこられたのはエレナ様のおかげだったんですね。ありがとうございます。)

(美姫さん、今の会話のどこに感謝する必要があるの?)

(樹、うるさいのじゃ。ワレも美姫の魂に間借りしている存在じゃから、すこしは役に立たんといかんのじゃ。)

(・・・決めました。今までの恩返しに、私はエレナ様が天界に帰るための精神エネルギーを集めることにします。)

(そこまでしなくてもいいんじゃない?)

(必要なエネルギーはどのくらいなんですか?)


 僕の言葉を無視して話が進んでいく。


(最低でも今まで美姫から吸収した千倍は必要じゃのう。)

(千倍!ふつうに無理じゃないですか?)

(樹君、私は無理だとは思わないよ。父は大学で精神エネルギーの研究をしていて、 思考によって発生する精神エネルギーが魔力でないか、というところまでたどり着いたんだから、いつの時点でその考えにたどり着いたのか分からないけれど、その先も研究しているはず。その研究成果を引き継げば不可能ではないと思うの。)


(美姫さんって前向きだね。)

(樹君となら何とかやれそうな気がするの!)

(僕も一緒に?)

(樹君はエレナ様と魂の絆を結んでいるんだから当然じゃない。もちろん協力してくれるよね?)

(うーん、、、美姫さんがそう言うなら魔法使いになったからといって特にやりたいこともないし、手伝うよ。)

(ありがとう!)


 後に待ち受ける困難のことなど知らず、安請け合いをしてしまった。後悔はしていないけど。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ