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竜の女王  作者: M.D
2170年夏
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【特訓10日目】


 パリンッ!パリンッ!パリンッ!パリンッ!


(樹君、魔力圧縮を使った魔導弾は、受け止めるのではなく受け流さねば、魔導楯を砕かれるばかりですぞ。)

(しかし、命令の入力が追い付かないです。。。)

(”大砲系”の魔法である魔導砲を防ぐには、樹君の魔力量では魔導楯で受け流す必要があります。そのために、同じくらい強力な魔力圧縮を使った魔導弾を受ける訓練ですな。更に、相手は命令の入力を待ってなどくれませんぞ。)

(了解。)


 パリンッ!パシッ!


(よしっ!)


 バコッ!


「ごふっ!」


 美姫さんの魔導弾の威力を魔導楯で防ぎきれず、もろにくらう。


「樹君、大丈夫?」

「何度もくらっているから、もう慣れたし、大丈夫。」


(魔法を受け流すことができたからといって、気を抜いてはいけませんな。)

(すみません。)


(ようやく樹も10回に1回くらいは美姫の魔導弾を受け流すことができるようになってきたようじゃのう。じゃが、これでは実戦では使えんのじゃ。)

(魔導弾を受け流すためには、魔導楯の強度、形状、位置、角度を適切に設定する必要がありますから、できるようになるには時間がかかりますな。)

(今日が最終日じゃというのに、2回に1回くらいは受け流すことができるようになって欲しかったのじゃがのう。)

(樹君はまだ魔法を習い始めて間がありませんから、この短時間でここまでできるようになっただけでも上出来でしょうな。)

(まぁ、そうじゃのう。これもグレンの指導の賜物じゃ。)

(樹君の頑張りによるところも大きいと思いますな。何度もくじけそうになっていましたから。)

(くじけそうになる若者を踏みとどまらせるのも指導者の役割じゃ。その点でもグレンは優れておる、という事じゃ。)

(ありがたきお言葉。)


(それに、来年の魔闘会で勝ち残ればよいので、今年は私たちが現状でどこまでいけるのか確かめるのが目的でもありますから。)

(美姫がそう言うのであれば、来年はもっと厳しく樹を鍛えて、是非とも勝ち残ってもらわんといかんのう。)

(今でも十分辛いんですけど、、、)

(何を言っておるのじゃ。美姫に手加減をされておるようではまだまだじゃ。)

(美姫さん、エレナ様の言っていることって本当?)

(うん。全力じゃないかな。)

(少しは美姫さんに近づけたかと思ったのに、まだまだ遠い。)

(当り前じゃ。100年たっても樹が美姫に追いつくことなんてないじゃろう。)

(そんなことはないですよ。樹君も頑張ってますし。)

(美姫は樹に甘いのう。)


(では、美姫と樹の特訓はここまでとしようかのう。)

(やっと終わった。。。)

(何を呆けておるのじゃ。)

(樹君にとっては厳しい訓練でしたから、終わってほっとしているのでしょうな。)

(樹君、お礼を言って終わりにしよう。)

(了解。)

((10日間ありがとうございました!))

(うむ。)

(お疲れさまでしたな。)



 寮に戻るために荷物をまとめる際にグレンさんの魔法の腕輪をどうするのか、という話になり、その時に疑問に思ったことを聞いてみた。


(特訓ではグレンさんの魔法の腕輪を使っていましたが、魔闘会で使う訓練用の魔法の腕輪でも同じ命令で魔法が発動するんでしょうか?訓練した命令で魔法が発動できないと意味ないですから。)

(魔法の腕輪に組み込まれている半導体には不揮発性メモリが搭載されていますから、入力する命令と発動される魔法については書き換えが可能なので、大丈夫でしょうな。)

(命令と魔法って書き換え可能だったんですね。今までの授業では装置に魔法の腕輪を入れた後、使いたい魔法を選んでいたので、命令と魔法の組み合わせは決まっているんだと思っていました。)

(おそらく、今の時代の高校では生徒に命令規則の基礎を覚えこませるために、組み合わせを固定しているのでしょうな。ワシが高校生の頃は素早く正確に呪文を詠唱するための練習に明け暮れておりましたから、隔世の感を禁じ得ないですな。)

(呪文の詠唱の練習ですか?想像しただけで面倒臭そうですね。それに、呪文を詠唱していたら今ほど高速に魔法が発動できなかったんじゃないですか?)

(そのとおりですな。半導体産業の発展によって呪文の詠唱が必要なくなっていなければ、第1次悪魔大戦を乗り切ることができなかったかもしれませんな。)

(同感。)


(命令と魔法って書き換え可能であることを知らなかったということは、魔法の腕輪の仕組みについてまだ授業で習っていないのですかな?)

(はい。純一先生の補講で魔法の腕輪に何とかという技術をつかった半導体を組み込むことで、呪文を唱える必要無くなった、ということは教えてもらいましたが。)

(MEMS技術ですな。)

(グレンさんは魔法の腕輪の仕組みについて詳しいんですか?)

(ワシも魔法の腕輪研究者の端くれでしたので、こんな姿になっても最新の技術動向についての調査や習得は趣味みたいなもので欠かしませんでしたから、人並み以上には詳しいと自負しておりますな。)


(それでグレンさんは魔法の腕輪に命令を送るのが滑らかだったんですね。)

(美姫さん、どういうこと?)

(だって、グレンさんが生きていた時にはまだ魔法の腕輪にボタンが付いていて、そのボタンを押す組み合わせによって発動する魔法が変わるようになっていたはずよ。それなのに、魔導力の変化を利用して命令を送る方法を使いこなせているのは不思議だな、って思っていたの。)

(成程。)


 その後、電車に乗って寮に戻り、10日間の特訓が終わって日常が戻ってきたことを実感したのだった。

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