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竜の女王  作者: M.D
2170年夏
102/688

09

【特訓4日目】


(樹君、全身の身体強化は成功ですな。おめでとうございます。)

(ありがとうございます。グレンさんの指導のお陰です。)


 3日目までどうしてもできなかった全身の身体強化が、4日目の朝にはあっさりとできるようになった。


(感覚がつかめると、こんなにも簡単にできるようになるものなんですね。)

(そうなのですな。感覚をつかむまでが難しいのですが、樹君がこんなに短期間で身体強化できるようになるとは、やはりこの指導方法は上手くいくようですな。他の者に伝えても実践できないことが残念ですが。)

(悪魔と融合しないとできないんですから、仕方ないんじゃないですか。)

(そうですな。エレナ様と美姫さんにも報告しましょう。)


 報告を受けて、すぐに別の場所で鍛錬をしていた美姫さんが駆け寄ってくる。


「樹君、全身の身体強化ができるようになったんだって。おめでとう。」

「ありがとう。美姫さんは魔力圧縮をすぐにできるようになったみたいだけど、その後はどう?」

「うーん。集中すれば一応はできるんだけど、咄嗟にはできないから、まだまだかな。」

「美姫さんでも難しいのか。次は、僕も魔力圧縮に取り組んでみようかな。」


(いや、樹も全身の身体強化ができるようになったようじゃし、魔法の訓練に移った方がよいじゃろう。)

(でも、魔法の腕輪を持っていないんですけど、どうやって魔法の訓練をするんですか?)

(父が予備として部屋に置いてあった魔法の腕輪があるから、交互に使いますか?)

(特定の魔法具を除いて魔法の腕輪って個人所有禁止じゃなかったっけ?)

(第2次悪魔大戦で使った魔法の腕輪をずっと持ってたんだって。父も聖人君子ってわけじゃないから。)

(大戦中は混乱しておりましたからな。ワシもヒューストンから東京に持ってきた思い入れのあるものでしたから、第1次悪魔大戦で使った魔法の腕輪を持っておりましたし。)


(美姫がありかを知っている魔法の腕輪は、美姫たちの言うところの”銃剣系”の魔法の腕輪であろう。グレンと相談したときに、樹には”楯系”の魔法を重点的に鍛えよう、ということになったのじゃ。)

(魔法闘技会に出るのでしたら、どちらかは”楯系”の魔法を使えたほうがよいでしょうからな。)

(そうは言っても、魔法の腕輪なしにどうやって樹を鍛えるつもりじゃ、グレン?)

(ワシらが追われていた時に偶然見つけた、第2次悪魔大戦で使われたと思われる魔法の腕輪を使えばよいと思っておりますな。)

(ほう。して、それはどこにあるのじゃ?)

(ワシと出会った場所ですな。)


(あのホテルの廃墟ですか?でも日光だと、往復で1日かかりますよ。取りに行こうにもここからだとちょっと遠いですね。)

(そこで、エレナ様にご尽力頂きたいのですな。ザグレドから聞いたのですが、エレナ様は地球上でも瞬間移動を使えるとか。)

(本来なら任意の場所に移動できるのじゃが、今は美姫の魂と結合しておる状態じゃから、行ったことのある特定の場所だけじゃ。)

(では、日光はどうなのでしょうか?)

(可能じゃ。)


(エレナ様が瞬間移動ができる、って美姫さん知ってた?)

(ううん。知らなかった。)

(エレナ様が瞬間移動できるのは当たり前ではないか。地球上であっても瞬間移動できるとは流石は俺たちのエレナ様。俺のような下位の者はこの宇宙に来るときに次元の認識力を制限されてしまうが、エレナ様はそうではないのだよ。それにエレナ様は――――)


 最近ザグレドはエレナ様を褒め称える言葉を言うときにしかでてこないな。今も滔々とエレナ様のすばらしさを語っている。


(ザグレドさんの言っていることはどういうことなのですか?)

(ワレらが住んでおる天界は9次元の世界で、地球を含む宇宙は5次元の世界なのじゃ。天界からこの宇宙に来る際には次元が落ちるために、次元の認識力も制限されるようになっておるのじゃが、管理者権限を持っておると次元の認識力の制限を緩めることができるのじゃ。)

(疑問に思うことはいろいろありますが、とにかくエレナ様はその管理者権限を持っていると。)

(そのとおりじゃ。元々この宇宙はワレらが住む天界を作るための練習用に作られた世界で、簡単のため5次元の世界なのじゃ。)

(この宇宙が天界を作るための練習用に作られた世界、ですか?)

(お主らも最初は簡単なものを作って練習するじゃろう?それと同じじゃ。この世界の成り立ちについては、また後で話すことにしようかのう。)

(了解。)


 とにかく、エレナ様は瞬間移動が出来るらしい。


(さて、早速じゃが、グレンが見つけたという魔法の腕輪を取りに行くとしようかのう。)

(はい。)

(ワレらはグレンがどこに魔法の腕輪をしまっておったか知らんから、グレンにはついてきてもらわねばならぬのう。ということは、今グレンが依り代にしておる樹も一緒に行く必要があるから、ほれ、樹は美姫と手をつなぐのじゃ。)

(美姫さんと手をつなぐんですか?)

(美姫とはキスをした間柄なんじゃから、今更手をつなぐだけで恥ずかしがることはなかろう。)

(エ、エレナ様、何を言っているんですか。)

(なんじゃ、恥ずかしがっているのは樹だけではないようじゃのう。)

(若い、っていいですな。)

(早う、手をつなぐのじゃ。)

(分かりました。)


 美姫さんと手をつなぐ。


(では、いくのじゃ。)


 一瞬ふわっと浮遊感を感じたと思ったら、次の瞬間には別の場所に移動していた。


(着いたのじゃ。)

(ここって、修学旅行で泊まったホテルの露天風呂じゃないですか。)

(そうじゃ。あそこからだと、ここが一番来やすい場所なのじゃ。)

(では、誰にも見つからないよう2人とも身体強化をして、ホテルの廃墟まで全力で駆け抜けるとしましょう。)


 無事に”楯系”の魔法の腕輪を手に入れ、エレナ様の瞬間移動で戻った後、僕の魔法の特訓が始まった。

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