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竜の女王  作者: M.D
2170年夏
101/688

08

【特訓1日目】


 昼食として買ってきたお弁当を食べて、いよいよ特訓の開始となった。


(さて、美姫と樹の特訓をはじめるとするかのう。美姫はワレがみるとして、樹はグレンに頼もうかのう。)

(承知しました。樹君は身体強化を身に着けるところからですな。)

(そうじゃ。身体強化とやらを美姫はもうできるようになったようじゃし、後は慣れるだけじゃからのう。)

(それについて気になっていたことがあるんです。)

(なんじゃ?)

(エレナ様が美姫さんの体を借りていた時に身体強化を使っていたんですよね?)

(そうみたいじゃのう。)

(『身体強化には体の成長を止めてしまうという副作用がある』と純一先生が言っていたんですが、美姫さんの体は大丈夫なんでしょうか?)

(そう言われれば、私は普通に成長できているし、不思議ね。)

(そうじゃのう。なんと説明すればよいかのう、、、)

(それについてはワシの考えを説明してもよいでしょうかな?)

(よいじゃろう。)


(エレナ様は恐らく魔力圧縮を使用して身体強化を行っておられたのではないかと思いますな。)

(魔力圧縮、ですか?)

(そうですな。魔力循環と魔力制御を応用することで魔力圧縮が可能となるのですな。魔力循環で互いに逆方向に流れる魔力を衝突させ、魔力制御で魔力が外に出て行かないように押さえつけることで、魔力を圧縮することができます。そして、圧縮した魔力を開放した時に一瞬だけ大きな魔力を使うことができるのですな。それを利用して、身体強化を行っておられたのではないかと愚考した次第ですな。)

(確かに、美姫の精神エネルギーを無駄に使うわけにもいかんから、動き始めの一瞬だけしか使っておらんかったのう。)

(やはりそうですか。ほんの短い時間しか身体強化が行われていなかったために、美姫さんには身体強化による副作用がほとんどでなかったのでしょうな。)

(そういう事だったのですか。)


(でも、魔力圧縮を使用して大きな魔力を使うと、体に大きな負荷がかかって悪影響がでないんでしょうか?)

(いい質問ですな。神経系に流すことのできる魔力には限界があるのですが、一瞬だけであれば許容限界を超えて魔力を流すことができるのですな。)

(常に魔力を流していなければ、ある程度は問題ないのですね。)

(そのとおりですな。)


(許容限界を超えて魔力を流し続けると、どうなるんでしょうか?)

(神経系の細胞が死んで、体が腐ってしまいますな。しかし、筋肉と同じで、流す魔力量を適切に調整すると神経系の破壊と修復が効率よくでき、許容限界を増やすことができることは分かっているのですが、失敗すると取り返しのつかないことになるので禁止されているのですな。)

(それって、エレナ様が僕にやっていることと同じような、、、)

(ワレだからこそできておるのじゃ。)

(そうとおり。エレナ様であるからこそ、精神エネルギーの微妙な調整ができるのだ。さすが俺たちのエレナ様。先の第9次聖魔大戦においても――――)


 突然ザグレドが出てきてエレナ様の素晴らしさを語りだしたのだが、もはや誰も聞いていない。


(そうであるなら、折角じゃから樹が身体強化をできるようになるまで、美姫には魔力圧縮とやらを覚えてもらう事にしようかのう。)

(そのほうがよろしいかと。美姫さん、魔力を暴発させると怪我をするどころではありませんので 、魔力圧縮は慎重に行って下さい。エレナ様がおられるから大丈夫だとは思いますが、魔力圧縮に慣れた魔法使いでも、気を緩めると魔力を暴発させてしまうこともありますので。)

(はい、分かりました。気を付けます。)

(では、基礎訓練として樹は身体強化、美姫は魔力圧縮をできるようになってもらおうかのう。)

((はい。))

(グレン、樹は頼んだのじゃ。)

(承知しました。)



 基礎訓練は2手に分かれて行う事となった。


(樹君、始めましょうかな。)

(はい。お願いします。)

(まずは、学校で身体強化を行う方法についてどう教えられたのか、教えててくれませんかな?)

(末端神経まで魔力を流して体の隅々まで魔力を充満させることをイメージする、と教えられたような気がします。)

(やはり、昔と変わっていませんな。ワシも後進の指導をした経験があるのですが、魔力を使って他の人の身体を強化することはできないため、どうしてもうまく教えられんかったのですな。それが歯がゆくてもどかしかったのですが、悪魔と融合したことで思いついた方法があって、ずっと試してみたかったのですな。)


(それってもしかして、、、)

(そうです。ワシが樹君に憑依して、樹君の体に身体強化を行うのですな。美姫さんもエレナ様が身体強化を行った時の感覚を思い出すことで身体強化ができるようになったと聞きました。樹君も感覚が分かればすぐにできるようになるはずですな。)

(嫌な予感しかしないんですが。)

(大丈夫ですな。優しくしてあげますから。これでもワシは教えるのが得意なのですな。)

(最初はゆっくりでお願いします。)

(分かりました。では、行きますよ。)

(う、うゎーー!)


 自分の体が勝手に動き、崖を縦横無尽に走り回る。


(どうです?この感覚を覚えておいて下さい。)

(・・・。)

(少し張り切りすぎましたかな。一旦止まりましょう。)


 ようやく体の感覚が戻ってきてほっとした。


(『最初はゆっくりでお願いします』って言ったら、『分かりました』って答えてくれたじゃないですか。)

(すみません。自分が考えた方法が実現できたことが嬉しくて。で、どうでしかたかな?何か感じましたかな?)

(えーっと、こう体がふっと浮いた感じがしたり、横Gを感じたり、ジェットコースターに乗った時のようでした。)

(樹君、体で感じたことではなく、魔力の流れを感じ取らないといけませんな。)

(そう言われても、、、)

(体感の方は何度も経験すればそのうち慣れますので、まずは魔力の使い方を感じることに集中してみましょう。)

(何回もやるんですか?)

(樹君が身体強化できるまで何度でも。では、2回目行きますよ。)

(う、うゎーー!)


 ・・・・


(どうでしかたかな?魔力の流れは感じ取れましたかな?)

(あまりに流れが小さすぎて、魔力を感じるのが難しいです。)

(そうですか。やはり手加減したのが良くなかったのかもしれませんな。次は樹君が耐えられると思われる最大の魔力を使いましょう。)

(徐々に増やしていきませんか?)

(そんなぬるいことを言っていたら、いつになっても身体強化ができるようになりませんな。では、3回目行きますよ。)

(ちょっと待ってくだ、、、う、うゎーー!)


 ・・・・


 グレンさんの指導の上手だったのか、その日の夕暮れまでに体の一部だけではあるが身体強化ができるようになっていた。

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