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第一話:尽きる食料

何度確かめても、もうすぐ無くなろうとしているのはわかり切っているのに、確かめずにはいられなかった。

 あと一週間もすれば、残っていた食料は全て食べきってしまうだろう。

 まだ商人からの便りはない。

 今回はかなり遠くに行くと聞いていたから、大量に仕入れたというのにそれでも足りなくなってしまうとは、痛恨の極みだ。

 無駄だとは知りながら、俺は何度も何度も残った食材の量を確かめてはため息ばかりを吐いていた。


 冒険者となって何年が経過しただろうか。

 冒険者の悩みの種の一つが、食べ物だ。

 迷宮探索や依頼の遂行は一日で終わるようなものはほとんど無い。

 必然的に、俺たちは日持ちがする食材を鞄に詰め込んで仕事に臨む事になる。

 西方に行くにつれ、主食は麺麭パンという小麦を粉にして練った食品へと変わっていった。

 主食なので味わいは強くなく、何かを乗せて食べる分にはちょうどいいのだが、困った事があった。

 腹持ちが悪いのだ。

 冒険の最中に腹が鳴ったり、夜中に腹が減って起きだして夜食を食べる羽目になったりと随分と苦労した。

 後で密度の高い、ずっしりとした麺麭もある事を知って、それは解決出来たのだが。


 麺麭と合わせて冒険中によく食べられているのが干し肉だ。

 獣肉はもちろん故郷でも食べられていて馴染みはあったが、こちらで食べられている獣の種類が違うので困惑した。

 故郷、松原では獣と言えば猪やそれを飼いならした豚、あるいは兎や鶏が良く利用されていた。

 こちらでは山羊ヤギや羊、駱駝ラクダと言った獣を食する。

 山羊や羊はまだしも、駱駝は癖が強すぎて俺の口に合わなかった。

 牛も水牛が良く食べられているようだが、これも俺にとっては何だか癖があってあまり好きになれない。

 しかし干し肉と言えば牛肉が良く使われている。

 腹が減っては戦は出来ぬ故、仕方なく口にしているがどうにかならぬものかと常々思っている。


 それとは別に、冒険者と言う連中はとにかく滋養の偏った食べ方をしている。

 脳みそが筋肉で出来ているのかと思うほど肉ばかり食らい、野菜などまるで省みようとしていない。

 俺が作った味噌汁と、菜っ葉の漬物を見た時は馬かと笑われた。

 勿論、峰打ちで成敗してやったがとにかく食事とは偏りなく食べる事が肝要である。

 肉を暴食し、エールを鯨飲する馬鹿どもは冒険で死ぬ前に不健康に陥って死ぬ。

 

 閑話休題。

 とにかく、俺の欲しい食べ物は西方では手に入れづらい。

 だが、蛇の道は蛇。

 どんな所にも商人は居る。

 商人は利益が見込める限り、顧客の要求を叶えてくれる。

 顧客が次も注文を入れてくれるような常連になる見込みがあれば、なおさら商人は力を発揮する。

 

 俺がその商人と出会ったのは、二年くらい前になるだろうか。

 まだ西方にやってきて間もない時期だったように思う。


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