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俺の冒険  作者: 黄昏人
第5章 俺のために地球世界と異世界は混乱する
51/85

C国解体

読んで頂いてありがとうございます。

誤字訂正ありがとうございます。大変助かっています。

 C国は5つの国に分裂した。東から東北中華国、中央東中華国、中央西中華国、南西中華国、中央平原国であり、それぞれの首都は小連、北京都、下海、香川港、ウルムイである。

 これは、どちらかと言えば一つの国にはしないという強い国際社会の意思によるものであり、日本としても強く望んで動いての結果でもあった。


 人口は最大の中央東が4.5億、次に中央西が4.2億、さらに南西が3.2億、東北が2.4億、最後の最も広大な中央平原国が3千5百万で圧倒的に少ない。だから、中央平原を除けば十分に巨大な人口大国である。


 ちなみに、ともに海岸線を含む東北、中央東、中央西、南西の4国は、経済規模と産業のバランスを考えてのものであった。一方で、中央平原国は人口規模もそうであるが、経済的には圧倒的に脆弱である。しかし、この地区はウイグル族、チベット族と圧政の元に置かれたことから、共産C国への反感が強いこともあって、C国本体との独立には住民の強い意志があった。


 また、日本政府が握っていた資源の情報と、重力エンジンの普及で、必ずしも内陸国が不利ではないことの判断もあって、日本政府も独立の方向で強力に動いたのだ。資源については、日本は資源探査衛星によって全世界の資源を探っており、その精度は非常に高いものであった。

 その探査によって、この中央平原国に当たるエリアに多くの有望な資源を発見している。しかし、利害が様々にぶつかる共産C国に知らせる利点がないので沈黙を保っていた。


 また巨大な都市国家とでもいえる香川港は、結局1国2制度がなし崩しにされ、民主政治が全く機能しなくなって、C国化が進んでいたが、それは市民の大きな反発の下でのことであった。その反発をうまく利用し、かつその経済力を活用してC国南西地区を、香川港を首都とする民主国家としてまとめたのだ。


 中央平原国を除く新たに形成された4つの国は、共産主義の色を強く残したものになっている。上位下達の共産主義は一旦染まると脱却することは容易ではない。それは、上司がすべての権限を握り、下には発言の場さえ与えられないという、嘗てソ連だった国々に未だに強い傾向は今後も長く残るであろう。


 そして、その権力を利用しての腐敗は今後も長く尾を引くことは間違いないであろう。『絶対権力は絶対に腐敗する』という言葉は人間の本質をついており真実である。その傾向は、解放と民主化が比較的進みつつあると言われるベトナムでも色濃くみられることで、人はそれを『共産主義のくびき』と呼んでいる。


 俺は、ガルムという町に来ている。東京から4500㎞の旅であるが、俺専用の飛翔機ハヤブサ03号に乗って、高度300㎞の成層圏まで上がって、平均速度5㎞/秒でやってきたのでわずか30分強の旅である。ドライバーは、ハウリンガ通商の社員の水木というおとなしい若い社員だ。


 ここは、田舎のわびしい街だが、資源探査衛星“資源2号2”の探査結果から、中央平原国中央部のこの町の周辺がリン酸塩の大規模な鉱床であることが想定された。そして、地上での調査もその結果を裏付けている。ほかにもこの新しい国には、同じ資源探査でカリウム、銅、タングステン、ニッケル、クロムなどが見つかっている。


 なにしろ、面積が360万㎢で、日本の10倍に近い広大な国土の多くがむき出しの半砂漠・土漠なので、上空からの資源探査にとっては理想的な地域であり、日本から比較的に近いこの地域は詳しく調べられたのだ。むろんそのほかに、大規模な石油や天然ガスがあるが、すでにこれは発見されて採掘されている。


 ただ、消費地が遠く海から遠いこの地方は、消費地への運搬のための設備投資が大きく開発の規模は小さかった。だから、この資源は現在においてはそれほど重要視されなかったとは言え、将来の有望な資源としては注目されていたので、C国の目はこれらの資源に集中して日本の資源探査衛星が見出した資源が見逃されていた。


 また、重力エンジン駆動の宇宙船はすでに開発されているが、同様に地球上を運行する輸送船が現在続々と建造されている。実のところ重力エンジン駆動の船というか超大型航空機は、海を航行する船舶と建造コストは大差ない。それでいて、速度は時速300㎞ほどになるので、船舶とは比べものにならない。


 速度が単純に10倍とすれば、荷役を考えても同じ船で運べる量が5倍程度にはなるのだ。また距離当たりのエネルギー消費は流石に重力エンジン機のそれは船舶の倍程度である。しかし、5倍の早さがあれば十分に利点が勝るし、まして動力費はコストが大幅に下がったAC電池の電力によるのだ。


 そして、必要な操作員の数には差はないので、必要人員は単純に1/5になる。とはいえ、仕事のテンポが速いので必要な人員の質はより高いものが求められるだろう。さらに、航空機の一種であるために、ルートを自由に選べることで短縮できる。だから、コストの面では明らかに重力エンジン船は海を進む船舶に勝る。


 加えてある意味で何よりもメリットは、寄港地を選ばないということだ。圧倒的に大量に荷物の輸送が可能で、かつ省エネ的な船舶は海でしか航行できず海沿いの運用に限られている。だから、内陸の資源または製品は、海沿いのそれらにコストで劣るのだ。これが、重力エンジン機では変わってしまった。

 だから、まさに内陸であったために、その面での不利益を被っていた中央平原国は、その鉱物資源の豊かさによって俄かに注目を集める地域になるわけだ。


 それで、俺が来た目的だけど、実は知り合いのウイグル族の反C国戦線の幹部が会いたい旨のメールがあったのだ。彼は中央平原国政府の幹部になっていて、頼みたいことがあるということだが、俺のRGエンジニアリングなどの繋がりを知っていてのことだろう。


 ジラフム・カチンと言うそいつは、ウイグルの名門の出らしく、イギリスに留学経験もある顔が広く頭のいい奴だ。また調子がよくてずうずうしい奴でもあったがね。会うのは、ハヤブサ機で俺が下りた中央平原のど真ん中のこのガルム街であり、ここは近い将来大規模の開発されるリン鉱山の中心都市になる予定になっている。


「おお、ミシマ!久しぶりだな。元気そうだ」

 姿を60歳代後半にしている俺を見て、カチンが大声で言う。イスラムらしく髭面の、たくましい大男である彼は、ジーンズにTシャツの全く飾らない姿であり、5年ほど前に付き合っていた頃とあまり変わっていない。


「おお、カチン。久しぶりだ。なんかお前、国の要職に就いたというが、全然そうは見えないな」

 俺は、手を広げて俺を抱こうとする手を捕まえて握手にする。俺には汗臭い男と抱き合う趣味はないのだ。


「あ、ああ。なんかお前感じが変わったな。大体お前この手はなんだ」

 流石に70歳に近い者の手と20歳代では手触りは大違いだろうな。俺は幻視を解いて言った。

「ハハハ、俺は若返ったのさ。ほれ!」


 流石の気楽なカチンも目を見開いて呆然としていたが、俺が近づいて彼の手をとって頬に触れさえて言う。

「ほれほれ、確かに若いだろう?だけど俺はミシマ・ケンジに間違いないぞ」

 俺がそう言うとようやく気を取り直して、俺の顔を正面からまじまじと見て言う。

「うむ、確かにこの顔はミシマだ。この目は間違いない。なんと、本当に若がえったのか!」


 そして、俺から少し離れて話を続ける。カチンの仲間が男女合わせて4人いるが、彼らは話の筋が解らず要領を得ない顔をしている。それはそうだな。若返ることなどありえないし、それをその程度で済ますカチンが理解できないだろう。


「まあ、お前が確かに俺の知っているミシマならそれでいい。おい、ミシマ、金を貸せ」

 適 当なカチンらしい言い草だが、俺は面白くなって言い返した。

「何でよ、何で俺がお前に金を貸す必要がある。それに、そういうからには半端な金ではないだろう?」


「お前は大金持ちになったらしいじゃないか。お前は俺の親友だし、俺はお前に何度も奢ってやったぞ」

「ハハハ、親友か。まあ話を聞かせろ。この町で会うというのはリン鉱山絡みの話だろう?」

 覚えていたいつもの調子に呆れたが、一つの国に貸を作って自由が利かせることができるのは悪くない。


「ああ、知っての通り、この周辺にリン酸鉱石が莫大にあるのは確かだ。もともとは日本が見つけて教えてくれたのだがな。全体としての量ははっきり判らんがある程度目途が付いているだけでも莫大だ。リンは知っての通り、現在最も枯渇が心配されている資源だ。それで……」

「うん、そのあたりは判っている。そのリンの資源はあるのは確かだから、いくらでも金は引っ張れるだろう。何で俺からだよ?」


「時間がかかるんだ。俺というよりこの国はすぐ金が要るんだ。確かに、石油はあるし、天然ガスもあるし、カリウム、銅、タングステン、ニッケル、クロム全部あるはずだ。日本からデータをもらったからな。金は引っ張れるさ、2年3年後にはな。しかし、それじゃあ、遅いんだ。すぐに1億ドル、何とかならんか?」


「1億ドルじゃあ、なんともならんだろう?」

「ああ、……、正直に言うと全然足りん。とりあえず食い物が無いと10万人が飢える。採掘と鉱山の規模がはっきりして、動き出せば金は引っ張れるが、そこまで何とかしたい」


「ふん、分ったよ。10億ドル出そう。その代わりに、お前がマネジメントをするのはだめだ。それと、土地を貸せよ。少し演習でドンパチやるが、絶対に国を乗っ取たりはしないから安心しろ」

「10億!本当か?いいぞ、土地はいくらでもある。売るに売れないとこばかりだけどな。て、まて。何だ、ドンパチって?」


「ああ、ちょっとな、すこし銃や砲を使ってもいい演習場が欲しいんだ。たぶん、自衛隊も欲しがると思うぞ。なにせ、アメリカと怪しくなっているからな、奴らの演習場が使えんようになる。日本の最友好国として軍事的にも組もうぜ」


「馬鹿言え。俺らの軍なんて言っても精々3万人だ。小銃にバズーガに機関銃と大きなものがC国軍の置いて行った時代遅れの装甲車と戦車くらいで、飛ぶ飛行機は5機だけだ。日本軍と組めるかよ。相手が嫌がるぜ。いや待て、俺の国の資源が日本に必須のものになれば、安全保障もありだな。

 それに、重力エンジン機は安いし、メンテナンスも楽だし、飛行場を作るのもうんと楽だ。なにも戦闘機でなくても、お前の乗ってきたそれで、十分国境警備はできる。

 おい、ミシマよ。日本政府に繋いでくれよ。この中央平原国の豊かな資源の最優先の権利をやるから、開発してついでに安全保障してくれってな。軍事演習もやり放題だ!」


「ふーん。そんな話をお前は国の中で通せるのか?もしそれができたら、日本も乗ってくる可能性がある。なにせ、俺は日本から30分で来ているからな。日本からの距離と海から遠いのは問題にならんだろう」


 実のところ、俺は来る前に田川経産大臣と話をしてきた。彼の話では、日本も中央平原国の資源に大いに興味を持っており、さらに経済と軍の脆弱さから、その独立の行方には懸念を持っている。今のところ、石油と天然ガスの資源はすでに世界に知られているが、日本の資源探査の結果はまだ知られていない。知られると危ないとみているのだ。


 むろん、中央平原国には大体のことは伝えており、日本との交流をさらに進めるようにと促してはいるが、相手側に警戒感が強く、話は余り進んでいない。そして、俺がカチンの話をすると大臣は大いに驚いていた。こいつは思ったより大物らしく、大統領の有力候補だったらしいが、就任を自ら断ったらしい。


「わかった、日本の大臣に知り合いがいるから話しておくよ。ただ国が動き始めるのには時間がかかる。だから、10億出してやるが、それは全体としての枠だ。必要な都度振り込んでやるよ。しかし、資源が担保だぞ。いいのか?」


「ああ、いいけど、その資源の価格は正当な価格でないと困る」

「俺は担保と言うだけで、資源を売って金が入ってくれば返せばいい。無理なことは言わないよ」

「しかし、なんでミシマはそんな金を持っているんだ?」


「ああ、俺個人が持っているわけじゃないが、大きな権利を持っているからな、少し手持ちは足りんが貸し手はいくらもいる。その利子は払えよ。まあ、年2%以下だ」

「ああ。勿論だ、10億ドルは助かる。そうだ、お前飛翔艇で来ているから、今のところ分かっているリン鉱山の範囲を飛ぼうぜ。俺も地図と地上だけで全体としては見ていない」


「ああ、そうだな。まあ、乗れ。俺も見てみたい。何人行くか?」

「俺を入れて、5人皆乗せたいがいいか?」

「ああ、少し狭いが、中央に3人、後ろに2人乗ればいい」

 カチンとその仲間は、うれしそうに飛翔艇に乗り込むが、カチンは厚かましく俺に言う。


「おい、ミシマ。前に乗せてくれよ。見晴らしがいい。お前は乗り飽きるくらい乗っているだろう?」

「ええ!厚かましい奴だな。うーん、まあいいや。ちゃんと説明しろよ」

 俺はしぶしぶ中央席に座ると、隣は細めの女性だから狭くはない。


「美人のシャーナの隣だから良かったじゃないか」

 彼がそう言うと、20歳代半ばの女性はにっこり笑って「よろしくね」と言ってウインクする。

 確かにグラマーな女性ではある。俺も一応挨拶はする。

「ああよろしくな」


「案内はばっちりしてやるよ。まずこの地図にある範囲くらいが見える高度に上がってくれ」

 彼は持っていた地図を広げてドライバーに見せる。

「うん、1万mくらいの高度ですね。今日は幸い晴天ですから、よく見えるでしょう」

 ドライバーの水木がその地図を見て言い、さらに「では発進します」と告げて垂直上昇にかかる。むろん、この会話を含めて今までは全部英語の会話だよ。


 ハヤブサ03は、モーターの回転音のようなかすかな音を立てていたが、その音が高まって、一瞬重力変化を感じるが、その後は平常なままで周りの景色がすーと下に動き始める。この動き出しの重力変化が極めて少ないのが重力エンジン機の特徴だ。


「ああ!」「うう!」「うわー」

 乗っていた連中は、様々に声を立てるが、大部分重力エンジン機は初めてなのだろう。2Gでの上昇なので、1秒間に9.8mの加速だから5秒で秒速約50mかつ高度125mになる。それから等速で上昇する。時速150㎞だから風切り音が大きい。1万mの上昇には所要時間は約5分である。皆夢中で外を眺めている。


「カチン、重力エンジン機は初めてか?」

 俺の質問に、夢中で外を眺めていたカチンは我に返り応じる。

「あ、いや。初めてではないが、移動に使っただけでこんな風に垂直上昇はしていない。これは便利だな。俺に、というか国に何機か調達してくれよ」


「ああ、そうだな。お前の国こそ要るな。10人日本によこせ。ドライバーに育てて持って帰らせてやるよ。ところで、鉱山はどの範囲だ?」

「あ、ああ、ええーと、こっちが北だからあそこに穴があるだろう?それと西のあのピークな。東はあの道路だ。南はあの黒っぽいところで、概ね15㎞四方の範囲だ。全面的に鉱山と言うわけではないが、資源量は10億トンは固いとみている」


「なるほど、それは大いに有望だな。ところでここに鉱山町を作るとなると、水はあるのか?」

「いや。近くにはない。あそこに湖があるので引いてくればいい。距離は15㎞程度だから知れているが、これもまた金がかかる」


 この地点は湖が数多くある高原地方に近い。だから、水路を巡らせば農業も十分可能だけど、中央アジアのアラル湖の二の舞は避けなきゃならん。

 利害は一致して、中央平原国と日本はどんどん経済的結びつきを強めていって、自衛隊も演習地をここに作ることになった。瓢箪から駒が出たというところだな。


よろしかったら、連載を始めた私の作品の原点の「Revolution」を読んでみてください。

前に書いたものですが、出始めの5話くらいは前と同じですが全体としては大幅にストーリーを変えるつもりです。

https://kakuyomu.jp/my/works/16816452219050653749

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2025年、12/17文章修正。

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