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ギルド職員ユンカーの平凡な毎日  作者: アルデンテ
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空路エイドルへ(その1)

 2組の人たちは家族のようだった。

 しかも、若い女性が3人と子供が3人。

 若い女性は皆、髪を短く切り男性用の帽子をかぶって、男装をしている。


 同じくラフな商人風の服装だが子供は少年が2人と少女が1人。

 

 「皆を代表してお礼を申し上げます。

 わたくしはマチルダ・スカーレット。

 本来なら名乗ることは禁じられておりますがお願いの節もあり名乗らせていただきます。」


 「わが主はヴィルヘルム・ワーナー伯爵。

 わが任は冒険者たちと共に主のお世継ぎ、ピジョン様と妹君のマロン様。

  ワーナー伯爵の親戚でありメリア男爵のお世継ぎ、ヒルド様を王都にある王立学園にお送りする途中です。」


 「私たち3人の女は王都のお屋敷でのお子様方の従者、メイドでございます。」


 「わが主、ワーナー伯爵の御領は王都よりほぼ大陸の真反対。

 はるか2000キロの道中を最初は護衛団、馬車5両と冒険者30人を擁してのキャラバンでしたが、街道筋の峠で3度の襲撃に会い、護衛の数は半数。

 しかし、道のりはいまだ半分。

 情報が漏洩しているらしく、山賊どもがこのエリアで網を張っているらしいのです。」


 「次の町エイドルに着けば新たな冒険者が合流することになっておりますが、エイドルまでは200キロ超、なお4日ほどの夜営が必要。」


 「もし、可能であればお子様3人だけでもその”空飛ぶ馬車”、でエイドルまでお送り願いたい。

 そして、エイドル伯爵様にお子様方をお届け願えれば、と初見にも関わらず大変なお願いをする次第です。」


 「そちらのお2人はシスター様のご様子。

 神の御心にてお子様方だけでもエイドル伯爵にお預け願いたい。」


 横ではイリヤが傷ついた冒険者たちに向かって膝ま付き、祈りをささげて彼らの傷を癒している。


 マチルダの話を立ったまま、静かに聞くユンカーとロゼッタ。


 「私は構わないよ、というか神の御心にすがられれば助けたい気持ちさ。

 でも、この魔道具のことをあたしは良く知らない。

 すべてユンカーが決めることさ。」


 ロゼッタが静かに言う。


 数分、目を閉じて考えるユンカー。


 「この馬車には食事は十分にあります。

 ただ、スペース的にも重量的にも冒険者さんたちは乗せられないです。

 メイドさん3人とお子様方3人でしたら、風呂桶とベッドを捨てればこの馬車をボクは持ち上げられます。

 姉さんとロゼッタさんは2人で交代で200キロ、飛んでくれますね。」


 ユンカーがロゼッタとイリヤに問う。


 当然とばかりに静かにうなずくシスターズ。


 「では僕は馬車のスペースを開けるのに、馬車の内部の解体に入ります。

 マチルダさんたちは冒険者さんたちと馬車の移送の相談、そして最低必要品を選んで荷造りしてください。

 飲み物、食べ物は馬車の備品で十分です。

  雑魚寝になりますが寝具と衣類を2日分用意してください。」


 そう言うユンカーにマチルダは驚いて尋ねる。

 「わずか2日分で良いのですか?」


 「空に浮いてしまえばあとはシスターさんたちの魔法の出番。

 今までのペースなら1日ちょっとあれば着くでしょう。

 まー、シスターたちの能力は先ほどの戦闘でご覧になった通りです。」

 ユンカーの説明に頷くマチルダ。


 「ではこの危険地帯に長居は危険です。

 ボクは作業に入りますので、皆さんも打ち合わせなり荷造りなりを迅速にお願いします。」


 そういって馬車の中に入るユンカー。

 たちまちのうちに工事現場となる馬車の中。


 メイドと子供たちは自分たちの馬車に荷造りに。

 マチルダは冒険者たちと今後の予定を話に行く。


 作業をするユンカーの手伝いをしながらロゼッタは

 「ユンカー、伯爵様からお預かりしている馬車を勝手に解体していいのかい?

 あたしはホリデー伯爵のことをよく知らないけど。」


 心配そうに言えば

 「伯爵様は心あたたかな方です。

 人身より物を大事にした、なんて言ったらボクが怒られてしまいます。」

 ユンカーが当然のように言い、イリヤも小さくうなずく。


 1時間ほどかけて、ユンカーたち3人は後部座席よりベッドと風呂桶を取り外し、表の大きな樹の下にシートをかけてそれを置く。

 

 シート越しにベッドと風呂桶を触って

 「少し待っててね。

 できるだけ早く、帰り道には乗せて帰るからね。」

 ものにまで優しく話しかけるユンカー。


 広くなった後部座席の掃除をしフラットな床の上に毛布やら寝具を引いて2メートル×3メートルの小さなスペース。


 「姉さんとロゼッタさんとボクは前の運転席シートで交代仮眠ですね。

 お2人ともありがとうございます。」


 礼を言うユンカーに

 「あんたは礼を言われる立場だよ。

 あんまり、へりくだり過ぎるのもダメなことさ。」

 ロゼッタが軽く注意する。


 やがて、準備を終えた3組のメイドと子供が馬車に乗ってくる。

 メイドは各々、大きな荷物を持っている。


 開けた引き戸から皆、靴を脱いで、傍らに置き床に敷かれた毛布の上に座って膝を伸ばす。


 「マチルダさん、扉を閉めてカンヌキを閉めてください。

 二重になっているので、危険防止のために両方ともお願いします。」


 ユンカーの指示通り、手早く2重ロックを占めるマチルダ。


 「では、皆さん。安全のために座ってください。

 狭いですが安全のため我慢してくださいね。

 では空へと浮上を開始します。」


 小さな床の反動と共に、全員が浮かび上がり不思議な浮遊感を感じる。





 


 



 

   

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