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ギルド職員ユンカーの平凡な毎日  作者: アルデンテ
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ユンカーは”勇者の子孫”です。

暇つぶし小説です。暇つぶしに読んでみて(笑)

 それは、とある異世界の片隅のお話。


 「おまえのご先祖様は”大勇者様”なんだってな。」

 「大きくなったらオレもダンジョンにお供に連れてってくれよ。」

 「5年後には魔王を退治して、皇太女様とご婚礼か?」


 子供のころ、よく学校でからかわれていた。

 今でも、たまに夢にみる。


 『ユンカーの祖先は”大勇者様”なんだって!』


 なんと無しに、町に伝わる都市伝説の1つ。

 そう、思っていた、あの日まで。


 その日も何もない普通の夜だったと思う。


 寒かった記憶があるから冬だろう。


 いつも通りの夜、寝ているユンカーは夢の中で先祖の大勇者”オオムラ・サトシ”、と会った。

 短い白髪の彼は鍛え抜かれたからだ、にこやかな若々しい笑顔でユンカーに語った。


 「会いたかったよ、私の子孫よ。

 ユーラ王国より”チキュウ”に帰って50年、片時もユーラ王国のことを忘れたことはない。

 夢の中の偶然とはいえ、やっと積年の夢がかなった。」


 「わたしには分かるよ。

 ユンカーが全く魔力が無いこと。

 スキルも体力も普通の人同様程度の力しかないこと。」


 「それがいいのか悪いのか、私には分からないが、波乱万丈の人生だけが人生ではないと思う。

 優しく、世界の片隅で市井を生きるのも、素晴らしい人生だと思う。」


 「最初の戦闘でドラゴンに左腕を食われた恐怖は今でも夢に見る。

 目の前で仲間が死んでゆく夢を見て泣きながら目が覚める時も何度もあった。」


 「わたしは”大勇者”と呼ばれ、ユーラ王国で戦った人生に悔いは持っていない。

 でも、あの地獄のような日々は多分、誰も正しくは伝えていないのだろうな。」


 「今の私はただの”チキュウ”の人、異世界の人だ。

 でも確信しているよ。

 エイモス神のおかげで、わが子孫ユンカーと交信できるようになったこと。

 私の70年の人生で得たすべての知恵、知識はユンカーの記憶の中にすべてが生き返ったようだ。」


 「ユーラ王国の戦闘の日々、その傍らで愛した女たち、死んでいった戦友たち。

 ”チキュウ”という異世界での私の生活、すべての私の記憶。

 その素晴らしい部分も恥ずかしい部分も、すべての記憶をユンカーに譲るから、キミの人生の足しにしておくれ。」


 翌朝、目が覚めたユンカーは変な夢を見たものだ、と思っていた。

 

 しかし、彼が見た翌朝の世界はすべてが変わっていた。


 最初、ユンカーは自分の頭がおかしくなったか?と疑った。


 例えば、ホリデー川の横を通ると川の中を覗き込む。

 すると、大きな”カレイ”という魚が砂埃を舞い上げて動くのがそこかしこに見える。

 冬になって水温が下がり、大切な魚卵を食い荒らす小魚たちがいなくなる時期を狙って”カレイ”が浅いところに沖合から産卵のためにやってくること。


 塩分濃度の適応力が高く、河口から上流まで遡ることも多く、大河の河口の汽水域が冬の良好なカレイの住処となることなど。

 その魚の生態、採り方(釣り方)、料理方法、食味までが実体験のように分かる。


 道端の草を見ればそれが”食用”,“毒草”、”薬草”などの分類から、毒薬やポーションの作り方。

 その効能までが分かってしまう。


 また、修道院の横でシスターの姿を見た時、女性の体の形、性交する方法、さらにその感触までが生々しく感じられる。

 まったく、”童貞”の少年にはコクな話し、いわゆる、迷惑千万(笑)。


 ここまでやられると、もはやあきらめの境地に。


 「参ったねコリャ、知らないことがなくなっちまったらしい。」

 苦笑いをしながら、昨晩の夢を受け入れざるを得ないことをユンカーは認識した。


 ”大勇者は受容に関する許容力が人並外れて大きく、いかなるピンチにも平然と笑っていた。”

 残されている、吟遊詩人の歌の中に”大勇者”はそのように歌われている。


 「まー、なるようになるさ。」

 独り言をつぶやき、夕日の中、ユンカーは家路を帰る。


 ユンカー16歳の時、初めての先祖”オオムラサトシ”とのスピリチュアル交信の日であった。


 


 


 


ノンビリ、スタート


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