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18児童連続不審死

「続いては、児童連続不審死事件についてです」


「ああ、この事件は悲惨ですね。未成年に時間売買をさせてはいけないということをまざまざと示している。ああ、愛理さんのことを働かせている私たちに、この事件のことをとやかく言うことはできませんが」


愛理たちが乗っている車には、ラジオが流れていた。手持無沙汰でなんとなく聞いていた愛理だったが、百乃木は事件のことを知っているようだった。



「おととい夜十時ごろ、塾から帰ってこないと心配した母親の通報により、警察に捜索願が出されていた、田中翔太たなかしょうた君、十歳の遺体が、今朝早く、近くの川岸で見つかりました。遺体はかなりの損傷をしていましたが、遺体の所持品から彼のものと判明しました。DNA鑑定も行っていますが、彼のもので間違いないようです」


「隣の小学校の子だ。私の塾に通っていたはずなのに、どうして」


 愛理は、知り合いの名前がラジオから聞こえてくることに驚きと悲しみを覚えた。まさか、自分の知り合いがマスコミで報道されていると、誰が想像するだろうか。しかも、それが亡くなったという訃報ならなおさらだ。



 ラジオが伝えている悲惨な事件はこれだけにとどまらなかった。同じように塾や塾以外の習い事から帰ってこない児童が、昨日までの一週間に三人いたことが報道されていた。いずれも、遺体が見つかり、殺人事件として警察が犯人の行方を追っているらしい。


「彼らの遺体には共通点がありました。彼らは皆一様に、本人とはわからないような、まるで急に年を取ったかのような格好で見つかりました。遺体はいずれも、所持品がなければ、小学生とは思えない、六十代以上の老人だと思われる姿で発見されています」


『これだけ派手にやらかしたら、すぐにでも犯人は捕まりそうだけどね』


「まだ犯人は捕まっていないみたいですね」


「未成年の時間売買に味を占めたやつの仕業で間違いはないだろうから、すぐには捕まらないだろう」


 百乃木と運転手、白亜は誰が犯人か目星がついているようだった。愛理は自分と同じくらいの子供たちの不審な死にただ震えるしかなかった。


『ああ、でも愛理は大丈夫だ。何せ』


「愛理さんをこのような目には合わせませんよ」


 ラジオは事件の説明が終わると、次のニュースを伝え始める。


「続いては、気象情報です。台風が近づいているようですが、本州には影響はなく、間もなく南の海上で温帯低気圧に変わるようです」




「白亜、白亜はラジオで言っていた子供たちの連続不審死の犯人に心当たりがあるの?」


『ううん、まあ、あると言えばあるけど、愛理がかかわらない方がいい相手だね』


 愛理は、先ほどの事件のニュースの犯人について、白亜に問いかける。それに対して、白亜はいつもの通りに軽い調子で答える。


「同感です。簡単に説明しますと、犯人は私たちの同業者ですよ。最近、時間売買を始めた新規企業で、我々の業界で勢いのある企業でもあります。当然、この業界で必要なのは、需要と供給。時間を売りたい人と、買いたい人をマッチングさせることが我々の仕事です。ですが、彼らはその前提を無視した企業体系を確立した」


「犯人は、百乃木さんたちと同じ、時間売買の人なんですか?でも、どうしてそんなことがわかるんでしょう。だって、犯人の痕跡らしきものは、何も見つかっていな」




「目的地に到着しましたよ。大夢様」


「ありがとう。話はここまでだ。まずは、今日の仕事を終わらせてしまおう」


 愛理の質問は、運転手の言葉によって遮られてしまった。児童連続不審死についての話は、百乃木が指定した目的地に着いたため、そこで終わりとなった。続きが気になったが、仕事で来ているので、役目はしっかり果たさなければならない。気になる話だったが、続きを聞くのを我慢して、愛理は車を降りた。百乃木と白亜も車から降りたが、運転手が下りることはなかった。


「彼は基本、私の足代わりに車を出すのが仕事です。ここからは、私たちだけで行きますよ。そこの白いのは、遠慮してくれると助かります」


『わかっている。愛理が危険に晒されることがあれば問題だが、それはないだろう。それに、我の正体をわざわざ他人にさらすこともない。ではな、愛理。何かあったら僕の名前を呼ぶんだ。手元に塩はあるだろう?』


「ある。鞄にいつも入れてあるから」


『よろしい。では、二回目の時間売買も検討を祈るよ』


 白髪紅眼の少年はそう言って、煙に包まれていく。煙が晴れると、そこには、キラキラとした塩の結晶が舞っているだけだった。




「では、行きましょう。今日は高齢の男性ではなく、高齢の女性です」


「わかりました」


 百乃木は、勝手知ったる顔で、カフェの中に入っていく。愛理も深呼吸して気を落ち着かせ、百乃木の後に続いた。


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