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33 地雷装備


【インターセプター・カスタム】

 兵科は戦士、コストは70、レア度は2。

 いわゆる地雷装備である。


 ガチャに追加された直後ではまだ使い道があったが、それでも同時に追加された騎士の【急造型聖鎧・特別仕様】の性能に歯が立たずゴミと言われ、翌週に同じコスト70で呪い装備の【(じゅ)(がい)・壱式】【ジーンメイル改】が登場したことで日の目を見ることが一切なかった装備である。

 だからと言ってかわいそうとか、不遇だといった感情をプレイヤーが抱くことはない。純粋にこの装備は弱いのだ。


【インターセプター・カスタム】は現状唯一無二の性能を誇る装備だ。格闘が主体の戦士カテゴリの中でそこそこの性能の射撃装備を持つ『射撃型戦士』である。大型連装式ブラストシューターで弾幕を張って遠距離からゴリゴリと魔術師を削ることができる装備はこいつしか存在しない。

 使いこなせば弱くはない。尋常じゃなく弱かった時代もあったが、4度の上方修正を受け現在では実用レベル一歩手前までの強さを持った装備だ。戦士装備はゴミみたいな性能のものが多いのでこれでも強さ的には上位に属する。だが騎士には惨殺されるので役には立たない。強いけど弱い

 そんなバランスだ。

 ちなみに4度も上方修正された装備はこれしかないため、運営と寝たとも言われている。

 射撃を主体とした手数の多い武装と過不足のない性能の格闘で戦況を有利に進めることもできるが、これを使いこなせるのならば【零式聖鎧】や【ジーンメイル改】を使えばもっと強いので誰も使わないのである。





 遮蔽物の隙間から左腕だけを出して敵の魔術師に弾幕を浴びせる。

 左腕の装甲に装着された複数の短剣が次々と石弾を生成・発射していく。大型連装式ブラストシューター、これが【インターセプター・カスタム】の主兵装である。

 マシンガン系の武器の中では、DPSや射程はそこそこ上位の兵装だが、戦士は射撃のステータスが全体的に低いため主兵装としては心もとないものがある。

 そして大抵【インターセプター・カスタム】が敵にいると判断した魔術師は遮蔽物で射線を遮ったり、戦士からダメージを受けにくい騎士を盾に使ったり(非情だが戦術としては有効なので大体協力してくれる)と対抗してくるのだが、さすが低レートの試合だ。騎士は誰も魔術師の護衛をしないし、魔術師はなぜか単騎で遮蔽物のない広場にいた。


 撃ち殺してくださいと言ってるようなものであるので、斬り殺してもよかったが私はなんとなく撃ち殺した。

 スコアを獲得する。


 しかし点数的には私側のチームが劣勢だった。


 次々と味方が敵にいる【急造型聖鎧・特別仕様】に斬り殺され、リスポーンしてはまた刈られていく。

 この【急造型聖鎧・特別仕様】を扱うのがポンタラさんだろう。彼はその実力を隠しもせず自由に暴れているようだ。やはりろくでもないゲーマーの鏡である。


 だがワンサイドゲームにはまだ届かない。

 一人で突出して戦っているポンタラさんに動きを合わせられる敵は誰もいなくて、逆にこちらのチームは明らかに動きの違う【急造型聖鎧・特別仕様】に狙いを定めたのか集中的に攻撃を仕掛けようと自然と陣形の構築が始まっていた。

 私はその陣形の弱点となる側面をカバーしつつ、向かってくる複数の初心者を皆殺しにしながら機を伺った。


 永遠からの怒号が飛んでくる。


『テツ!! はやくあの人どうにかして!! 勝てなすぎてイライラする!!』

『落ち着いて永遠ちゃん。そろそろ仕掛け終わるから』

『はやくして!!』

『合図したら一気に攻めようね』


 言いながら私は強格闘で切り伏せた敵の上でわざと当たらない弱格闘を振る。剣がむなしく宙を斬る。そして、転倒モーションから抜け出した敵は短時間の無敵状態を得て起き上がる。

 殺し損ねた私は急いで遮蔽物の影に逃げ、無敵状態の敵に向かって副兵装の一つである【スタンワイヤー】を撃ち込んだ。適当に撃ったので【スタンワイヤー】は地面に命中した。敵も私にかなわないと知ったのか、急いで敵陣の奥深くまで逃げていった。


 ――スタンワイヤー。

【インターセプター・カスタム】が地雷装備となっている原因の一つである。

 弾数は一発しかない単発射撃武装で、命中すれば『大怯み』を発生させることで怯みよりも長時間敵を拘束することができる。

 しかし射程が極点に短く、レティクルの中央に飛んでいかないおかげで仕様を把握していなければ命中することすらできないクソ武器である。

 命中すれば射出されたワイヤーから電流が奔るが、ワイヤーだけあって当たり判定が細く、与えるダメージも少ない上に射出中は足が止まるおかげで隙も多い。

 当たらない【スタンワイヤー】と簡単に対策される【大型連装式ブラストシューター】が地雷たる大きな要因である。

 しかし……。


 格闘コンボに失敗した体を装って、瀕死の敵を私は量産していた。

 暴れすぎれば敵に警戒されるのはポンタラさんを見ていればわかる。私も本気を出しつつあるが、そもそも【インターセプター・カスタム】が対して強くないのとかなり単純なテクニックだけで戦っているのでまだ多くのヘイトは買ってなかった。


 そして、味方の質も異なるようだ。

 たった今私は3体の騎士を瀕死にして敵地に送り返した。初心者は体力が減るとすぐに前線の維持を放棄して敵陣に引っ込む。こうなると一度死ぬか体力を回復させるまで前線に出てこなくなるので、盤面は一時的にこちらが有利になる。


 その点うちのチーム……というか、永遠は違った。彼女はいかに体力が減ろうがその足を後ろに下げようとはしない。むしろ、体力が減るごとに前に前に出ようとしている。典型的な猪ムーヴだ。頭に血が上っているに違いない。

 味方もそんな永遠を援護しようと青い顔をしながら必死に後を追っていた。ポンタラさんとの接触で崩れる柔らかい戦線だが、ポンタラさんも最強ではない。一度足が止まったり、ブースターのマナが切れて機動力が無くなれば、普通に初心者にもリンチされて殺される。


 そして今まさに、永遠が動けなくなったキンタラさんの肩めがけて聖剣を振り下ろした。体力が底をつく。撃破。


 直後、先ほど殺した敵の魔術師がリスポーンする。

 私が何度も何度も殺しているのでもうリスポーン時間がかなり延長してしまっているようだった。

 ポンタラさん討伐で余力を使い果たした味方が下がっていく中、私は単独で敵陣に突っ込んでいった。

 敵魔術師は左手を上げて大型連装式ブラストシューターを構える私を見て、殺されると一目散に逃げていった。私は大型連装式ブラストシューターの弾幕を浴びせながらその後ろ姿を見送った。あいつはいつでも殺せる。


 そして、他の生き残っている敵も磁石が反発するように私の近くから逃げていく。

 膠着状態になった戦場を偽装しようと、私も自陣へと歩きで下がった。

 エリアルブースターのマナの回復を待ちながら体内時計でカウントを続ける。


 3、2、1、0。

 敵陣の西にあるリスポーン拠点から【急造型聖鎧・特別仕様】がポップする。ポンタラさんがリスポーンしたのだ。


『よし永遠ちゃん。あいつ俺が殺すから一気に拠点まで押し込むぞ』

『どうするの』

『俺が後ろから斬り殺すね。永遠ちゃんは適当に前から距離を詰めていってほしい』


 言いながら、私は東方向から敵陣に突入した。

 敵の彼らもポンタラさんが強いことはなんとなくわかっているだろう。ポンタラさんのリスポーンで気力を取り戻したのか、迎撃せんと距離を詰めて来たので私は大型連装式ブラストシューターをなぎ払って、敵の僅かに残っていた体力を0にした。マシンガン系の武器はミリ削りに便利だ。


 敵魔術師が中央を放棄して敵陣地に逃げ込むのを確認した私は、ポンタラさんがいる方向に向かってブースターを全開にした。

 ポンタラさんが逃げる様子はない。レーダーで囲まれているのはすでに承知しているだろうし、味方の体力がほとんど無くて前線が壊滅状況なのは織り込み済みのはずだ。その状況下でわざわざ前線にリスポーンしたあげく永遠のことを狙っていると言うことは、死ぬまでに一人で何体殺せるか、みたいなチャレンジをしていると思われる。私もそうする。


 永遠達がポンタラさんに向かって火球を撃ち込むが、その稚拙な偏差射撃とポンタラさんの不規則な回避運動のおかげで一つたりとも命中しなかった。


 私はその隙を狙って、距離を詰めつつVR機器のOS側のシステムで【キンタラ】のアカウント目掛けてメッセージを送信した。送り主は【プロト】。


【ポンタラ殺す】

 そのメッセージを受信した、キンタラさんの動きが一瞬止まる。

 彼の意識からレーダーが外れた。


「隙だらけ!」


 完全に私のことを認識していないポンタラさんの背後に剣を振り下ろした。


 一手目、逆袈裟に刃を走らせる、中格闘。

 二手目、右薙ぎ一閃、弱格闘。

 三手目、再び中格闘、逆袈裟。


 格闘モーションをバックブーストキャンセル、からの四手目。最速でスタンワイヤーを装備し射出する。格闘のリーチまで距離は詰まっている、しかも相手は動けない。外す道理は無かった。

 ひるみに大怯みが上書きされ、ポンタラさんが膝をつく。


 追撃。

 五手目の逆袈裟、

 六手目の右薙ぎ、

 七手目、唐竹に剣を叩き込む、強格闘だ。怯みの連続で拘束され続けたポンタラさんがダウンし、転倒状態になる。


 ダウン追撃。

 八手目に逆袈裟で足を切り、

 九手目に再び唐竹を振るった。

 それがトドメとなるかと思われたが――


 ――嘘だろまだ死んでない!?


 だがかなりの長時間を有したコンボで、味方が動く時間が与えられた。

 すぐさま駆けつけることができた味方は永遠ともう一人。お互いがある程度の角度をつけて、FFが発生しないギリギリの距離から強格闘を振るった。

 ポンタラさんの体力が尽き、光への分解が始まる。


『永遠ちゃん! あいつ倒したからリスポン染めて一気に突撃しよう!』

『わかったわ! 行ってくる!』


 スコアを確認すれば、大まかに12体ぶんのスコアだけ敵チームが有利だ。

 こちらが無傷で敵を2度全滅させなければ取り返せない非現実的な点差。

 それでいて残り試合時間は2分20秒。

 絶望的な状況だが――


 もはや一人の力だけではどうしようもない戦況。

 だから私は味方の力を頼るのである。

 私はラジオチャットを飛ばした。


【攻めるぞ!】


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