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31/40

31 勝敗因子




 レーダー目視。

 味方の生き残りは他に2人。一体は【縦笛二刀流】カチコミ太郎ーー征旅の鎧・魔術カスタム仕様を装備している。

 この状況でもまだ生き延びていて、先ほど敵勇者にパリィを取っていたようだが、そのモーション中に背後に回った呪鎧・弐式が今その命を刈り取った。


 いつの間にかフレイムさんも死んでいる。生きているのはヘイズさんだけだが、すでに二体に囲まれていて殴られている最中だった。生きているがしんでいる


 レーダーだけを見て即座に敵一人に狙いを定め、私はブースターを起動する。同時に簡易型マナシューターのチャージを開始する。


 直線的な移動で最短距離を突き進む。転倒しているヘイズさんを囲む敵二体ーー勇者と呪鎧・参式ーーはFFを避ける位置で同時に中格闘を降った。ヘイズさんの体力が0になる。


 私は敵だらけの戦場で1人になった。残り時間13秒。


 ……敵を撃破した直後や、格闘を振り終わった直後はアバターの挙動と意識に大きな隙が生まれる。

 その瞬間に合わせ、勇者の背中に向かって簡易型マナシューターのチャージショットを放った。しかし着弾と同時に敵勇者は緊急回避を発動し、回避した。またかよ。私は別段大きく驚きはしなかった。廃人の背中には目がついていることが多い。

 このゲームにプレイヤーの背後を見る機能はついていないが、レーダーと敵の向いている方向と攻撃が飛んで来てもおかしくないタイミングの観測で視野外からの攻撃を避けることは意外と難しくはない。

 だが緊急回避を吐いたということは、もう格闘に対する対処はできないと言うことだ。残り時間10秒。


 剣を二刀引き抜いて私は敵勇者の懐に飛び込む。格闘のリーチに敵を収めた瞬間、最速で剣を振るった。すぐさま敵呪鎧・参式の体術が私の胸を打つが、パリィには発展しない。中格闘のみで終わらせて、モーションが大きいためパリィを取られやすい強格闘を振らなかったからだ。

 敵呪鎧・参式が聖剣を装備していることを確認して、私は次の行動を機械的に算出した。

 よろけモーションの終わりをブーストでキャンセルし最速で体術を振るった。同時に振るわれた敵呪鎧・参式の格闘が私の素手とかち合う。パリィ成功。腕を払われ無防備になって敵胴体に剣閃の連打が叩き込まれる。

 呪鎧・弐式のぶっ壊れポイントの一つ、強カウンターだ。


 カウンター無敵時間のうちにレーダー確認しておく。

 いつの間にか私の周囲には残存している敵5人が集結してきっていた。残り時間3秒。

 まだ戦える。


 カウンターのモーションが終わると同時に、私は緊急回避を発動する。方向はレーダー頼りに、真後ろ。集まっていた敵一体の背後に回り込み、強格闘を振るった。その最後の悪あがきは私に警戒を全く向けていなかった敵呪鎧・弐式に命中した。


 残り時間0秒。

 時間切れだ。

 HPに固定ダメージが入り、そのモーションで動きが止まった。

 敵陣の中央で行動不能に陥ってしまえば、もう助かる命はない。


 体力は未だ五割以上。受けた攻撃は体術二回だけだった。

 体力的にはそこそこ危険域だが、最前線に居座れるくらいの余裕はある。

 全員からの敵意を全身で受け止めながら簡易ブラストシューターで真正面の敵を撃ちつつ、私は振り下ろされる刃を無抵抗で喰らった。



       ○



「カース発動中にノーダメージなんてよくあること」


 那由他の言葉は紛れもない真実だった。

 呪鎧・弐式単騎での場荒し性能が敵全体の対応能力を軽々しく凌駕できる状況で、タイミングよく突撃ができれば最大限の効率で敵を殺せる、ということだろう。


 リスポーン画面でマップ全体を俯瞰しながら考える。

 全味方が死んでから私だけ1人で戦っていた時間が長かったので、リスポーン時間が私だけ一足遅れていて、皆は先に戦場に戻っていった。


 それにしても、味方がかなり強い。

 敵も相応に強いが、呪鎧・参式を操る【イグナイター】の2人が四分の一頭ほど飛び抜けて強い。

 そしてマツリカもよく戦えている。チーム瓦解のきっかけとなる急所になるかと思われたが、思いのほか戦力として稼働している。

 一芸特化タイプのゲーマーというのは珍しくない。

 AタイプでCレートの実力などクソみたいなものだが、ある一点に限っては初心者か上級者とも渡り合えてしまうケースは珍しくない。いまがその時なのだろう。


 考えつつ、1人で寂しくリスポーンする。

 敵の戦力はすでに二枚落ちだ。天国からヘビー・ファル拠点防衛型が孤立しているのが見えたので、私は戦場に舞い降りた直後に最速で狩った。

 呪鎧・弐式のぶっ壊れポイントの一つ、別にカースを発動しなくても強い、だ。


 そのあと適当に残存兵力を潰して、中央にある敵リスポーン地点を制圧する。

 スコア差は自軍リードだった。大体240点差、こちらが3体殺されたら追いつかれるだろうが、そうは問屋が卸さない。


 試合の残り時間は3分30秒。

 拠点制圧状況的にはかなり有利。スコアはもう少し勝っているかと思ったが、味方の1人がCURSE発動のタイミングの調節のために何度か無駄死にしているせいで意外と点差は開いていない。

 だがおかげで次の第4ウェーブには余力たっぷりで望める。


 敵陣地でヘビー・ファル拠点防衛型がリスポーンするのが見えた。

 勝ちを揺るぎないものにしよう。私はCURSEを発動し、敵の魔術師のリスキルを決意した。



       ○

       ○




 試合終了一秒前、敵の目と鼻の先でマツリカはへにゃへにゃと脱力して崩れた。


「嘘、勝てた……」


 アナウンス。


〈試合終了です!〉


 視界に爛々と輝くWINの3文字。

 勝ち取った勝利に、ラジオチャットが飛び交う。

【お疲れ様でした】

【お疲れ様でした】

【gj】

【gg】


「なんとか私も戦えましたぁ……」


 疲労からか、ダラッとした笑みを浮かべるマツリカである。

 私はリザルトを確認しながら、遠くにいる彼女に向かってサムズアップを届けた。



       ○






 リザルト

 撃破トップ   【大赤字】プロト

 ダメージトップ 【大赤字】プロト

 施設トップ   【イグナイター】フレイム

 協力トップ   【大赤字】プロト

 陽動トップ   【イグナイター】ヘイズ

 総スコアトップ 【大赤字】プロト



 同時にリザルト画面で確認できる敵の編成を見て彼らの意図を私は考察する。



【FoW】彼氏面

 呪鎧・参式 レベル1

【FoW】です代

 呪鎧・参式 レベル1

【6人の旅人】ピンフ主義

 勇者の聖鎧 レベル1

【大赤字】ユウスケ

 呪鎧・弐式 レベル1

【剣に願いを】肘シールド

 勇者の聖鎧 レベル1

【コンバット】顔面アウト

 ヘビー・ファル拠点防衛型 レベル1




 敵の敗因を考えれば、勇者の聖鎧を出してきた2人の存在が大きいが、これは恐らく意図的なものだ。簡単に言えば、私のチームにマツリカという初心者がいることを考慮して、呪鎧・参式からほんの一回り劣る性能の勇者の聖鎧を使ったのだろう。要するに相手は自ら好んでハンデを()って()けたのだ。手加減しようという発想に至るあの二人は強者として名を覚えておく必要があるかもしれない。


 そしてこちら側のことを考えてみれば、今回、直接的な勝因となった人物はいない。

 誰もが全力を発揮してつかみ取った勝利だ。

 強いて言うなら【イグナイター】の2人が操る呪鎧・参式レベル1。あの2人が戦場を引っかき回し続けたおかげで相手は常に後手に回ることになり、私も魔術師狩りに集中することができたといえる。

 そのなかでマツリカも頑張っていたと思う。足を引っ張るどころか、積極的に前線に飛び込んでなおかつそこそこの時間生き延びることができたらしい。


 全員がブリーフィングルームに戻される。


 マツリカは呼吸を荒くしていた。8分という時間のほとんどを極限に近い集中状態で過ごし、CURSEでいっぱいいっぱいの中状況判断を連続で迫られたのだろう。実際の筋肉は酷使しないが脳への負担はそこそこ多い。興奮すれば無意識に体もこわばるし、酸素も足りなくなる。

 だがそれに慣れれば例えようのない快感となるのだ。


 誰もルームから抜ける気配はない。


「じゃあもう一戦行こうか」

「ええっ!?」


 マツリカから小さい悲鳴が上がった。

 連戦は基本。



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