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魔法災害隊  作者: 横浜あおば
神界決戦編

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第82話 決着

 アドミニストレータの足元で悶える遥。それを見た碧は助けに行こうとしたが、響華が腕を引っ張って止めた。

「遥ちゃんに触っちゃダメ!」

「どうしてだ、藤島?」

 首を傾げる碧に、響華が答える。

「触った人にも、あの症状がうつるから」

「うつるって、あれは魔法じゃないのか?」

 碧が遥の方を見遣ってから聞く。

「アドミニストレータが遥ちゃんにかけたのは、アンマネージドマジック。つまり、未承認魔法だよ」

「未承認魔法? それは一体?」

「あまりに危険だから、魔法目録に登録されなかった魔法。そして、魔法目録の魔法では解くことができない」

 響華の言葉に、碧がショックを受けた様子で言う。

「そんな……。それでは、滝川はどうなるんだ……?」

 響華は遥の方を見て一言。

「それは私が何とかする。だから、まずはアドミニストレータを遠ざけないと」

 その時、アドミニストレータがこちらに話しかけた。

「遠ざけるまでもない。こいつを助けたいなら、お前らにくれてやる」

 アドミニストレータは遥の襟を掴み、右手でつまみあげる。

「ぐっ、あっ……!」

 遥は苦しそうな顔をして、体をジタバタとさせている。

「滝川! しっかりしろ!」

 碧が呼びかける。

「ちゃんと受け取るんだぞ?」

 直後、アドミニストレータが遥を碧へ向けて投げた。

「碧ちゃん、ダメ!」

 響華が叫び声を上げる。しかし、碧は遥を受け止めてしまった。

「滝川、今助けて……」

 碧が優しく微笑み、遥に言葉をかけようとしたその瞬間。

「ぐあっ、あ〜っ!」

 全身に激痛が走った。地面に倒れこみ、身悶える碧。

「さて、仲間は全滅だぞ? どうする、エミュレータ?」

 にやりと笑うアドミニストレータ。

(このままじゃ、私までやられちゃう……!)

 絶体絶命の状況に、響華は悔しそうに唇を噛んだ。




 アドミニストレータが魔法を唱える。

「アンマネージドマジックコード3445、アンチテレフォニカ。これでお前も終わりだ、エミュレータ!」

「ここで、死ぬわけにはいかない……! 私、諦めないよ!」

 響華の体の青い輝きが増し、全身から魔力が溢れ出る。

「アンマネージドコード5580、ファイアウォール!」

 響華が魔法を唱えると、魔法防壁が展開された。だがそれは、普通の防壁よりも強固なもので、アドミニストレータの魔法を簡単に跳ね返した。

「ほう、やるではないか」

 呟くアドミニストレータ。響華は自信に満ちた表情で言う。

「私には、たくさんの仲間がいるからね」

「仲間? 全員そこに転がっているではないか。他の仲間などどこにも見当たらないぞ」

 周りを見回すアドミニストレータ。するとその時、少女の声が聞こえてきた。

「全く、そなたは危なっかしすぎて見てられん」

「この声は……!」

 アドミニストレータがハッとした表情を浮かべる。

 響華は後ろを振り返り、大きく手を振った。

「コンパイルちゃん! 助けに来てくれたんだね!」

 そこには、四角い帽子に長いガウンを羽織った十歳ほどの少女が立っていた。

「エミュレータ、記憶を取り戻したんじゃな?」

 コンパイルの問いかけに、響華がこくりと頷く。

「うん。まさかここまで大変なことになるなんて、思いもしなかったけど……」

「最後に釘を刺したのに、聞かなかったそなたが悪いのじゃ」

 ため息をついて言うコンパイルに、響華はぽりぽりと頭を掻いた。

「それで、どうやってアドミニストレータを倒すの?」

 首を傾げる響華。

「私がそなたの仲間を助ける。じゃからそなたはアドミニストレータを引きつけておいてくれ」

 コンパイルが答えると、響華は「分かった」と首を縦に振った。

「アドミニストレータ、あなたの相手は私だよ!」

 響華がアドミニストレータの前に立ちはだかる。

「最初からそのつもりだ。エミュレータ」

 アドミニストレータはほとんど疲れていないようで、不敵な笑みを浮かべている。

 響華とアドミニストレータが対峙している間に、コンパイルは地面に倒れている芽生、雪乃、結城隊員、川辺隊員に魔法をかける。

「魔法目録四条二項、範囲回復」

 四人の体が緑色の光に包まれ、一斉に起き上がった。

「ありがとう、コンパイル」

 芽生が微笑みかけると、コンパイルは優しく微笑み返し、すぐに次の魔法を唱えた。

「アンマネージドマジックコード404、全魔法解除」

 続けて、アドミニストレータの未承認魔法に苦しんでいる遥と碧に魔法をかける。

「ん、んぁ……」

「くっ……」

 二人はゆっくりと体を起こし、周囲をキョロキョロと見回す。

「調子はどうじゃ? 滝川遥、新海碧?」

 コンパイルが話しかけると、突然遥が指をさして大声を上げた。

「あっ! もしかして、メイメイが言ってたコンパイルってあなたでしょ!」

「えっ? 確かにコンパイルは私じゃが……」

 戸惑うコンパイルに、遥はぐいぐいと迫る。

「本当に子供みたい! でも、格好とか性格は大人っぽい? なんか不思議だね〜」

「こら、滝川。助けてもらって早々に魔法神を困らせてどうする」

 碧が注意すると、遥は「は〜い」と適当な返事をして立ち上がった。

「すまん、助かった。そなた、立てるか?」

 コンパイルが碧に右手を差し伸べる。

「ああ、すまないな」

 碧はコンパイルの手を掴んで立ち上がる。

「これで全員じゃな」

 コンパイルが六人の顔を見て言う。

 響華は後ろの様子を確認して、アドミニストレータの顔を真っ直ぐ見つめた。

「これで八人対一人だよ。どうする、アドミニストレータ? 降参した方がいいんじゃない?」

 響華が問いかける。しかし、アドミニストレータは楽しそうににやりと笑った。

「……面白い。ここまで心が躍る戦いは初めてだ」




 響華の後ろには、左から芽生、結城隊員、川辺隊員、雪乃、遥、コンパイル、碧の順に並んで立っている。

「魔法目録二条、魔法光線……」

 響華が目を閉じ、神経を集中させる。

「全員の魔力をエミュレータに渡すのじゃ」

 コンパイルの言葉に、全員が首を縦に振った。

「私は響華と出会って、少し変わったところがあるわ。とことん合理的に生きてきた私にとって、あなたの助けたいという強い気持ちから取る行動は、最初は正直理解できなかった。だけど、ずっと一緒に過ごすうちに、なんとなくだけどその気持ちが分かった気がするの。あなたにとって人助けは、何よりも重要な最優先事項だった。だからあなたは、自分の危険をも顧みず、誰かを助けようとする。そんな響華に影響されて、私もなるべく犠牲の出ない手段を考えるようになった。ありがとう、響華」

 芽生が手を前に伸ばし、響華に魔力を送る。続けて、雪乃が手を前に伸ばす。

「私は藤島さんがいなかったら、ここまで頑張れてなかったと思います。藤島さんには沢山優しくしてもらって、沢山助けてもらいました。だから、今度は私が藤島さんを助ける番です……!」

「私にとって、響華っちは一番近くて遠い存在だった。キャリアクラスの実技試験は、いつも響華っちが一番で私は二番。私は響華っちには絶対に敵わないんだって思ったりもした。けどさ、響華っちはいつも一生懸命で、自分の信念って言うのかな? それを曲げなかった。響華っちのそういう姿を見て、私は私なりの形を見つければいいんだって気付けたんだ。ありがと、響華っち」

 遥も手を伸ばし、魔力を送る。

「私は五人の中で魔法能力が一番低い。でも、お前は私をチームリーダーにしてくれたな。最初はお前の優しさかと思っていたが、私の適性を見極めて推薦したんだろう? 普段は恥ずかしくて言えないが、今回ばかりは素直に礼を言う。ありがとう、藤島」

 碧も魔力を送るべく、手を前に伸ばす。

「あの事件で、私は一度人生を諦めました。でも、それを藤島隊員が助けてくれました。大した魔法能力も無くて、社会のお荷物だと蔑まれていた私のことを、ちゃんと見ていてくれました。それが本当に嬉しかったんです。だから藤島隊員は、私の女神様なんです」

 結城隊員が手を前に伸ばすと、川辺隊員も続けて手を伸ばした。

「あのっ、私はあんまり、藤島先輩と関わりは無いですけど、でもっ、藤島先輩のこと、本当に尊敬してますっ……。私の魔力も、使ってくださいっ」

「エミュレータ、そなたに全ては託された。さあ、アドミニストレータを倒すのじゃ」

 コンパイルもそう言って、魔力を響華に送った。

 響華の体に、八人の魔力が集まる。

「ありがとう、みんな……」

 魔法光線を放とうと、響華が両手を後ろに引く。その時、後ろから声が聞こえてきた。

「響華さん、私の魔力も使って!」

「私の魔力もお使いください」

 声の主は、長官と木下副長官だ。ただ、そこにいたのはそれだけではなかった。

「響華おねーさん、私の魔力もあげるね!」

「私のも、良かったらどうぞ」

「響華さん、私も力になるよ!」

「響華サン、私のも使ってくれ」

 その声に、響華は嬉しそうに呟いた。

「ひかりちゃんに陽菜ひなさん、凪沙なぎさ艦長にシュウ副長も……」

 響華の後ろには、今まで出会ってきた魔法能力者が勢揃いしていた。

「それじゃあ、行くよ!」

 響華が目を開き、思い切り両手を前に突き出す。

「これが私たちみんなの想い。受け取って、アドミニストレータ!」

 響華から勢いよく青白い光線が放たれる。そしてそれは、アドミニストレータの体を見事に貫いた。

「ぐ、ぐわぁぁぁっ!」

 アドミニストレータは断末魔の叫びをあげ、光の粒子となって消滅した。

「これで、全部終わった、んだよね……?」

 響華は力尽きた様子で、その場に膝をつく。

「響華!」

「藤島さん!」

「響華っち!」

「藤島!」

 芽生、雪乃、遥、碧は一斉に名前を呼び、響華の元へと駆け寄った。

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