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魔法災害隊  作者: 横浜あおば
神界決戦編
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第77話 無数の魔獣

 神界との境界がどんどんと降りてきて、ついに地上に到達した。この世界は、いよいよ神界と融合したのだ。

 響華たちがエントランスから外を眺めていると、「グギャァ!」という咆哮が轟いた。どうやらすぐそばに魔獣が出現したらしい。

「みんな、行くよ!」

 響華の掛け声で、全員が外へ向かって駆け出す。自動ドアを抜け、霧がかかったような真っ白な空間を突き進む。するとそこには。

「何、この大きさ……」

 二階建ての民家ほどはあろうかという巨大な魔獣の姿があった。




「こんな魔獣、どうやって倒せばいいんだ……」

 碧が呟く。

「私たちも大型の魔獣と戦ったことは何度もあるけど、このサイズは初めてだわ」

 芽生の言葉に、雪乃が頷く。

「はい。でも、ここで私たちが倒さないと、本庁舎が危ないです……」

「そうだねユッキー。弱音を吐いててもしょうがないし、ちゃちゃっと片付けるよ!」

 遥がそう言って、魔法を唱える。

「魔法目録一条、魔法弾!」

 続けて、響華も魔法を発動させる。

「魔法目録二条、魔法光線!」

 二人から同時に攻撃が放たれる。それは見事に巨体に直撃し、魔獣は『グギィィィ!』と悲鳴に似た声を上げた。

「これが、日本の英雄の力……!」

「すっ、すごい……」

 結城隊員と川辺隊員は響華と遥の圧倒的な強さに、目を輝かせている。その時、芽生がこちらに向かって叫んだ。

「あなた達、後ろ!」

 結城隊員と川辺隊員が後ろを振り返ると、同じ大きさの魔獣がもう一体真後ろにいたのだ。

「こんなの、私には倒せません!」

「わっ、私も、無理ですっ……!」

 所轄の隊員は大規模な魔法災害の時は本庁の隊員に鎮圧を任せるので、ここまで大きな魔獣と相対することは基本的に無い。響華たちも初めて見る大きさの魔獣ともなれば、足が竦むのも無理はないだろう。

「魔法目録八条二項、物質変換、狙撃銃」

 その様子を見ていた雪乃が魔法を唱え、すかさずそれを構えた。

「結城さんと川辺さんは動かないで下さい」

 雪乃は立ち竦む二人に告げてから、引き金に指をかけた。照準を合わせ、引き金を引く。

『バン!』

 銃声が響き、弾丸が魔獣の躯体を貫く。

とどめは私が刺す。魔法目録八条二項、物質変換、弓矢」

 直後、碧が魔獣の脳天めがけて矢を放った。

「グ、グワァァァ……」

 魔獣は力無くその場に倒れ込み、消滅した。しかし。

「グワァー!」

 また別の巨大魔獣が出現した。

「グオーッ!」

「グギャァ……!」

 それどころか、小さい魔獣が無数に発生し、響華たちは完全に包囲されていた。

「これちょっとやばくない?」

 遥が言う。

「でも、やるしかないよ」

 響華は額から流れる汗を拭い、再び魔法を唱える。

「魔法目録二条、魔法光線!」

 光線が巨大魔獣に直撃する。

「藤島、援護する」

 碧は弓を構え直し、すぐに矢を放った。

 だが、巨大魔獣は先ほどの二体よりも手強く、なかなか倒すことができない。

「魔法目録八条二項、物質変換、打刀」

 芽生が魔法を唱えると、目の前に刀が形成された。それを手に取った芽生は、勢いよく魔獣へ向かって駆け出した。

「私が魔獣に傷を入れるわ。あなた達はそこに攻撃して」

 芽生が思い切り跳び上がり、魔獣の巨体に斬りかかる。刀は一直線に硬い表面を切り裂いた。

「それじゃあ、一気に終わらせるよ」

 響華の言葉に、遥と雪乃が頷く。

「魔法目録二条、魔法光線!」

「魔法目録一条、魔法弾!」

『バン!』

 響華と遥の魔法と雪乃の銃弾が同時に放たれる。

「お願い、決まって」

 芽生が地面を蹴り、魔獣との距離を取りながら呟く。

『ドカーン!』

 一斉攻撃は見事に傷口に命中し、魔獣は苦しそうに倒れ込んだ。

「よっしゃあ、カンペキだね」

 遥が雪乃に右手の平を見せる。

「滝川さんも、ナイスプレーです」

 雪乃も右手の平を見せ、微笑んでハイタッチを交わした。




 三体目の巨大魔獣を倒した響華たちだったが、まだ周りを小さい魔獣に囲まれてしまっている。

「あとは大量の小さい魔獣をどう処理するかだな……」

 碧が困った表情を浮かべ言う。

「みんなで協力して倒していくしかないんじゃない?」

 響華の言葉に、芽生が頷く。

「ええ、地道に一体ずつやるしかないでしょうね」

「でも、またあの巨大な魔獣が現れたら、さすがに厳しいです……」

 すでに疲れが溜まっている様子の雪乃。するとその時、結城隊員と川辺隊員が声を上げた。

「小さいのは私に任せて下さい!」

「私も、露払いくらいは、出来ますっ……!」

 遥は二人の顔を見て、それが本気だと確認する。

「じゃあ頼んだよ、お二人さん?」

 遥が言うと、結城隊員と川辺隊員は「はい!」「はいっ!」と首を縦に振った。

「魔法目録五条、電磁誘導!」

 結城隊員が魔法を唱えると、体にビリビリと電気が帯びる。

「私は社会のお荷物じゃない。藤島隊員の目に狂いはないと、証明してみせます!」

 左手を突き出した瞬間、十万ボルトの電気が放出され、小さい魔獣が麻痺状態に陥った。

 続けて川辺隊員が魔法を唱える。

「魔法目録二十七条、火炎放射っ……」

 両手を後ろに引くと、炎がメラメラと燃え始めた。

「人見知りなんだから、せめて役には立たないとっ……」

 一気に両手を前に突き出し、魔法を放つ。炎はゴォっと音を立てながら、一直線に魔獣へと向かっていく。

「グオォォォ……!」

 炎は麻痺状態の魔獣に着火し、体が激しく燃え盛る。

 それから間もなく、魔獣が消滅する。響華は目を輝かせて二人の元へ駆け寄り、こう声をかけた。

「すごいよ結城さん、川辺さん! まさかあんな魔法が使えるなんて!」

「藤島隊員にお褒めの言葉を頂けるなんて……! 私の人生にもう悔いはありません!」

「いえ、そんな大した魔法ではないっ、です……」

 各々の反応を見せる結城隊員と川辺隊員に、響華は優しく微笑みかけた。

「まだ体力に余裕あるし、私も加わるわ」

「私も。お二人さんに任せっきりってのは、ちょっと暇だからね〜」

 芽生と遥が結城隊員と川辺隊員の隣に立つ。

「それじゃあ私も戦うよ!」

 響華も戦闘の意思を見せるが、碧がそれを止める。

「藤島、お前は万が一に備えて休んでおけ。いつまたあの巨大魔獣が出るかも分からないし、それにアマテラス討伐のために力を温存しておけと言われているだろう?」

「ごめんね、結城さん、川辺さん」

 響華は申し訳なさそうに二人に言って、後ろに下がった。


 芽生は結城隊員と、遥は川辺隊員とペアを組み、小さい魔獣の殲滅を試みる。

「魔法目録五条、電磁誘導!」

 結城隊員の電撃で麻痺状態に陥った魔獣を、芽生が刀で斬り伏せる。芽生と結城隊員のペアは連携して魔獣を倒すようだ。

「魔法目録一条、魔法弾!」

「魔法目録二十七条、火炎放射っ……」

 一方で遥と川辺隊員は、背中合わせに立ってそれぞれが遠距離から魔法を撃ち込む戦法らしい。

「桜木も滝川も、相手の特徴を活かして上手く立ち回っているな」

 四人が戦っている様子を眺めながら、碧が呟いた。

「芽生ちゃんはその方が合理的だと思ったんだろうけど、遥ちゃんはそれしか戦いようが無いからじゃない?」

 響華が返すと、雪乃が「それは違うと思います」と少し怒った表情をして口を開いた。

「滝川さんは魔法弾以外の攻撃魔法も使えます。だから、藤島さんの考えは間違っています!」

「え、えっと、雪乃ちゃん?」

 雪乃の圧に戸惑う響華。

「滝川さんは私の気持ちを考えて、私が喜ぶことをしてくれるんです。きっと滝川さんは、川辺隊員の気持ちを考えてあの戦い方を選択したんです」

 きっぱりと言い切る雪乃。

「うん、分かった分かった……」

 響華は雪乃の前で遥をディスるのは二度とやめようと心の中で呟いた。

 そんな話をしている内に、小さい魔獣は全て消滅していた。戦いを終えた四人がこちらに歩いてくる。

「数こそ多かったけれど、強くなかったから助かったわ」

「あんなの余裕のよっちゃんだよ」

「藤島隊員は、私が守り抜いてみせますから!」

「私だって、まだ戦えますっ……」

 戻ってきた結城隊員と川辺隊員に、碧が声をかける。

「お疲れ様。任せてしまってすまなかったな」

「いえ、全然大丈夫です!」

「私も、平気ですっ……」

 かぶりを振る二人に、響華が言う。

「とは言っても、あれだけ連続で魔法を使って疲れたでしょ? 私たちも一旦休憩したいし、エントランスに戻ってちょっと休もう」

 響華たちは霧がかかったように真っ白に視界がぼやけた道を引き返し、本庁舎へと入った。

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