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魔法災害隊  作者: 横浜あおば
米軍編

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第58話 絶体絶命

 東京、麻布。

 普段なら夜になると賑わいをみせる歓楽街だが、今は明かりも消え人通りは全くない。

「次の爆撃はここだと思う」

 遥が立ち止まって言う。

「それにしても、転移魔法をここまで続けて発動させるのは大変ね……。遥は物質変換までやってるけど、疲れてないの?」

 芽生が問いかけると、遥は得意げに答える。

「私、体力には自信があるからね」

「もう。私は体力なくてヘトヘトなんですから、そんなに早く行かないでください」

 碧に連れられて、後ろからやって来た雪乃が息を切らしながら呟く。

「おっと、ごめんよ」

 適当に謝る遥に、碧が呆れた表情を浮かべる。

「全く、まだ全然爆撃機の姿が見えないじゃないか。それなら北見を置いていくことはないだろう?」

「確かに……。ユッキー、次からは気をつけるから。ね?」

 遥が雪乃に微笑みかける。雪乃はため息をついて頷いた。

「分かりました。もし次置き去りにしたらペナルティですからね?」

「オッケー。ユッキーのためなら何でもするよ!」

 笑顔で言う遥に、芽生は。

「何であなたはペナルティ受ける気満々なのよ……」

 と頭を抱えた。

 そんなやり取りをしていると、道路上に眩い光が現れた。

「転移魔法か?」

 碧がその光を眺めながら呟く。

 その光が消えると、そこには響華がいた。

「藤島!? お前退院したのか?」

 驚いて問いかける碧に、響華はぶんぶんと首を横に振った。

「いや、退院はしてないよ」

「じゃあ許可をもらえたのか?」

「ううん、もらってない」

 平然と答える響華に、碧は理解できないといった様子で聞く。

「じゃあ、お前はなぜここにいる……?」

「病院、抜け出して来ちゃったんだ!」

 無邪気にとんでもないことを口にした響華に、四人が「いやいや」とツッコミを入れる。

「抜け出したってお前」

「あなた何考えてるのよ」

「響華っち、それはまずくない?」

「藤島さんは早く病院に戻ってください!」

 しかし響華は首を横に振って言う。

「色んな人に迷惑をかけてるのは分かってる。でも、東京が大変なことになってるのに、たくさんの人が困ってるのに、それを放っておくなんて、私には出来ないんだよ。だから、だから私は、みんなと一緒に東京を、たくさんの人を守りたいんだよ!」

 響華の強い想いを聞いた四人は。

「お前らしいな」

「ええ。それでこそ響華って感じね」

「響華っち、守りたいとか言うのはずるいよ〜」

「藤島さん、こうなったら頑固ですもんね」

 と、仕方なさそうに受け入れてくれた。

「みんな、ありがとう……!」

 響華は四人の元に駆け寄る。

 五人が横一列に並んで空を見上げると、爆撃機であろう影が二つ近づいてくるのが見えた。響華は気を引き締めるように、こう呟いた。

「絶対に守ろう、この街を……」




 米軍機二機が上空を通り過ぎると同時に爆弾を投下してきた。それを見た響華と遥が魔法を唱える。

「魔法目録八条二項、物質変換、酸素!」

「魔法目録八条二項、物質変換、水素!」

 二人がそれぞれ右手を爆弾に向かって突き上げる。すると、こちらに向かって落下していた爆弾は消えて無くなった。

「よし、次はどこだ?」

 碧が問いかける。

「ちょっと待って」

 遥は目を閉じ、予測魔法で爆撃地点を予測し始めた。しばらくして、遥が目を開く。

「どう? 予測出来たの?」

 芽生が聞くと、遥はゆっくりと口を開いた。

「……分かった。けど、これは……」

「何か問題があるんですか?」

 首を傾げる雪乃。遥は深刻な表情を浮かべて言う。

「丸の内に、五十機以上飛んでくる。私たちじゃ、全部を処理するのは無理だよ……」

「えっ、そんなに……!」

 響華はあまりのショックに言葉を失う。

「避難は済んでるんだよな? それなら諦めるべきなんじゃないか?」

 碧が言うと、芽生も首を縦に振る。

「そうね。あくまで安全が最優先。ここで私たちがやられてしまっては元も子もないわ」

 しかし、雪乃はどこかぱっとしない顔をしている。

「どうした、北見?」

 碧が顔を覗き込むと、雪乃は碧を真っ直ぐ見つめて口を開いた。

「丸の内、守りたいです。私に出来ることは少ないかもしれません。だけど、このまま見捨てたくないんです!」

 珍しく熱くなる雪乃に、遥は。

「ユッキーがそこまで言うなら、やるだけやってみるか!」

 と気合いを入れ直すように声を上げた。

「遥、あなた正気?」

 芽生が冗談でしょうと言った様子で問いかけるが、遥は「もちろん!」と当然のように答える。

「で、響華っちはどうするの? 無理はしちゃダメだけど」

 遥が響華の方を見る。響華は昨日の出来事が頭を過ぎり少し不安になったが、拳を握りしめ前を向いた。

「……私も、丸の内に行く。色んな人の、色んな想いが詰まった街を、私は守りたい!」

「五分の三か。なら、仕方がないな……」

 碧がため息をついて呟く。

 五人は手を繋ぎ、一斉に魔法を唱えた。

「魔法目録十五条、転移。場所、丸の内!」




 東京、丸の内。時刻はすでに夜十時を迎えていた。

「遥、かなり連戦だけど本当に平気なの? あなたまで魔力暴走されちゃ対応出来ないわよ?」

 心配そうに聞く芽生に、遥は右手でピースして答える。

「大丈夫。自己管理はちゃんとしてるって」

「そんな風に言われても、説得力無いわよ」

 呆れた表情を浮かべる芽生に、遥は「ひどいな〜」と頬を膨らませた。

「見てください! あれ……!」

 雪乃が東の空を指差す。響華たちがその方へ視線を移すと、そこには数え切れないほどの機影が確認できた。

「あれが一斉に爆弾を落としてくるの……?」

 響華が夜空を見上げたまま呟く。

「ああ。だが、藤島は守りたいんだろう? この街を」

「うん。絶対に火の海になんかさせない」

 響華は力強く頷いて、魔法を唱えた。

「魔法目録二十三条、電子操作!」

 響華が近づいてくる米軍機に向かって魔法を発動させる。

「なるほど。まずは電子操作魔法で爆弾を投下出来なくさせるってことね」

 隣にいた芽生が納得したように言う。事前に一定数の機体を故障させれば、爆弾が投下される数が減るのでその分の負担を軽くできる。

 それから間もなく、米軍機が上空に差し掛かった。

「響華っち、来るよ」

 遥の言葉に、響華が首を縦に振る。

 それと同時に、バラバラと爆弾が投下された。

「魔法目録八条二項、物質変換、酸素!」

「魔法目録八条二項、物質変換、水素!」

 二人は同時に魔法を唱え、それぞれ右手を突き出した。

 爆弾はどんどんと酸素、水素に変換され形が無くなっていく。

「藤島、滝川、その調子だ」

 碧の応援に、響華と遥はさらに力を強める。

「行け〜!」

「そりゃ〜!」

 二人の魔法は勢いを増し、まだ投下される前の機体に取り付けられた爆弾をも変換していく。

「藤島さんと滝川さん、すごいですね……」

 雪乃が感心したように呟くと、芽生が頷いて微笑みかける。

「これなら、本当に被害ゼロで済むかもしれないわね」

 ひっきりなしに上空を飛んでいた米軍機がぱったりと途絶える。

「終わった、のかな?」

 響華が空を見上げたまま言う。

「だといいけど……」

 遥は目を閉じて予測魔法を発動させる。

「魔法目録二十条、予測」

 しばらくして、遥が目を開く。

「どうだった?」

 響華の問いかけに、遥は首を横に振って答える。

「まだ終わりじゃない。今くらいの数がもう一度来る」

「そんな……!」

 響華が驚いた表情を浮かべる。

「どうするの?」

「やはり難しいんじゃないのか?」

 芽生と碧は諦めた方がいいといった様子で言うが、雪乃は「でも……」とどこか諦めきれない様子だ。

 そうこうしているうちに、再び米軍機の大群が上空に現れた。

「魔法目録八条二項、物質変換、酸素!」

 爆弾が投下されると同時に、響華が魔法を放つ。

「魔法目録八条二項、物質変換、水素!」

 遥も続けて魔法を発動した。

 しばらくは余裕を持って対処出来ていたが、時間が経つにつれて爆弾が酸素や水素に変換される場所は地上に近づいてきていた。

「このままだといつ爆弾が落ちてもおかしくありません!」

 焦りを感じている雪乃に、響華は顔を歪めながら言う。

「分かってる、だけど……!」

 まだ万全な状態ではない響華は、すでに限界が近づいていた。それに気付いた遥はちらりと響華の方を見て話しかける。

「だから無理しちゃダメだって言ったのに。って響華っち! 上!」

 遥が突如大声を上げる。響華が何事かと上を見ると、爆弾がこちらに向かって落ちてきていた。その爆弾はみるみると目の前まで迫り、響華は避けることも魔法を放つことも出来なかった。

「藤島!」

「響華!」

「藤島さん!」

 碧、芽生、雪乃が響華に向かって叫ぶ。

「魔法目録三条、魔法防壁!」

 遥は慌てて響華の頭上に防壁を展開しようとしたが、間に合うかどうか微妙なタイミングだ。

「……みんな、ごめんね」

 響華は自分の死を覚悟したのか、四人に優しく微笑んだ。

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