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魔法災害隊  作者: 横浜あおば
信用レート編
37/100

第33話 共工の内通者

 響華たちが本庁舎へ戻ると、リンファが話しかけてきた。

「皆さん、どうかしたんですカ?」

 響華はそれとなくリンファから共工について聞いてみる。

「リンファさん、中国に人型の魔獣っていますか?」

「人型の魔獣? さぁ、分かりませんネ……」

「そうですか……。すみません、変なこと聞いて」

 響華が申し訳なさそうに言うと、リンファは首を横に振った。

「いえいえ、こちらこそ皆さんのお役に立てずすみませんデシタ」

「分析室の仕事、頑張って下さいね!」

 遥が笑顔を見せると、リンファは笑顔で頷いた。


 リンファが立ち去ると、五人は今後の作戦を練り始めた。

「共工の今の居場所ってきっと中国だよね?」

 響華が問いかけると、芽生が答える。

「ええ、そう考えるのが自然ね。だけど、そうとも限らないかもしれないわ」

「どういう事だ?」

 碧が首を傾げる。

「もし日本で何かを企んでいるのなら、国内に潜んでいる可能性もある。あくまで想像に過ぎないけど、そうであれば絶好のチャンスよ」

「確かに、向こうから来てくれるならラッキーだよね」

 遥が言う。

「でも、どちらにしても居場所が分からない限りどうすることも出来ないんじゃ……」

 雪乃が不安げな表情を浮かべる。

 すると、響華は雪乃の肩に手を置き微笑みかけた。

「雪乃ちゃん、それは大丈夫だよ」

「えっ? 何か、手があるんですか……?」

 雪乃が響華の顔を見つめる。

「うん!」

 響華は大きく頷くと、一つ魔法を唱えた。

「魔法目録十七条、索敵。対象、共工」

 その様子を見ていた碧がふと口を開いた。

「でも藤島、索敵魔法は対象をはっきりイメージ出来ないと使えないんじゃないのか?」

 しかし響華はすでに目を閉じて神経を集中させていて、碧の声は届いていないようだった。代わりに遥が答える。

「イメージなら出来るでしょ? 昨日見た防犯カメラの……」

 その言葉に、雪乃がハッとした表情を見せる。

「なるほど……! あの映像から背丈や特徴はなんとなく把握できましたし、藤島さんであればそれだけ情報があれば……」

「そういう事!」

 遥は雪乃にウインクをした。

「そこまで高度な索敵魔法が使えるのは響華だけ。共工を見つけられるかは響華にかかってるって訳ね」

 芽生は響華の方を見やる。

 その時、響華が目を開いた。

「どうだ? 東京近辺にいたか?」

 碧が問いかけると、響華は。

「う〜ん、少なくとも索敵できる範囲内にはいなかったかな……」

 と言って肩を落とした。

「まあ、そう簡単にいく訳も無いかぁ。別のアプローチで攻めよう。ね?」

 遥が響華に笑いかける。

 響華は遥の顔を見るとこくりと頷いた。


「う〜ん、それにしてもなぜ共工様の存在に気づかれたんでショウ?」

 その一部始終を隠れて見ている人間がいた。リンファだ。

 リンファは誰かと電話をしていた。

『それハ分からん。だが、リンファのおかげデ索敵を免れらレタ。感謝スル』

 女性の声のようだが、話し方が少しおかしい。

『それで、そいつらノ名前は何と言ウ?』

「藤島響華、新海碧、滝川遥、北見雪乃、桜木芽生、ですネ」

『桜木、芽生ダト……?』

 電話の相手が動揺を見せる。

「はい。その人が何カ?」

『そいつハ、五年前ニ死んだ。いや、殺したはずダ』

「五年前というと、香港ですカ?」

『ああ、その時ニ確かに殺シタ。それなのに、生きてイル……?』

「こちらも探ってみましょうカ?」

『そうだな、頼ム……』

 電話が切れる。

「桜木芽生。あなたの秘密は、何ですカ?」




 翌日、二〇二〇年四月十日。魔法災害隊東京本庁舎。

 響華たちは防犯カメラ映像や魔法反応などから共工の居場所を探ろうとしたが、上手くいかなかった。

「いや〜、さすがは中国を支配する魔獣。これは難航しそうだね〜」

 遥が背もたれに寄り掛かり、大きく伸びをする。

「でも、あとちょっとで何か掴めそうな気がする。だからみんな、もう少しだけ頑張ろう」

 響華の言葉に、四人は首を縦に振った。

 するとそこへ、国元がやって来た。

「お疲れ様です。皆さんが頑張っていると聞いたので、差し入れを持って来ました」

 国元はそう言って、コンビニのビニール袋を差し出す。

「ありがとうございます!」

 遥がそれを受け取り、中を覗き込む。

「うわぁ〜! お菓子がいっぱいだよ!」

 遥は興奮気味にお菓子を取り出す。

 それを見兼ねた碧は、遥の手からお菓子を取り上げた。

「おい滝川。もう少し頑張るってなったばかりじゃないか。昼休憩まで我慢だ」

「え〜、ケチ〜」

「ケチとかそういう事ではない」

 きっぱりと言う碧に、遥は頬を膨らませて席に戻った。

「なんかタイミング悪かったですかね?」

 国元が気まずそうに問いかける。

「いいえ、完全に遥の問題だから、国元さんに非は無いわ。差し入れ、後で頂くわね」

 芽生が答えると、国元は。

「では、皆さんの邪魔にならないよう、僕はこれで」

 と言い残してその場を後にした。


 その直後、国元のスマホが鳴った。画面を見ると、着信相手は|《魔犯 守屋都刑事》となっている。

 国元はすぐに電話に出る。

「守屋さん、何か分かりましたか?」

『ええ。あのスーパーコンピューター、どうやらとんでもない所にありそうよ』

「一体どこに?」

 国元が聞くと、守屋刑事は本当にとんでもない所を口にした。

『国会議事堂の地下』

「こ、国会って、あの国会ですか?」

 国元はあまりの衝撃で、少し取り乱す。

 守屋刑事は淡々と続ける。

『ここ一ヶ月くらい、永田町周辺の消費電力が異常なほど増えてて。原因を探ってたら、国会議事堂の地下に大量の電気が供給されているのが分かったの。私にはスーパーコンピューター以外に理由が見つからないけど、あなたはどう思う?』

「そうですね……。守屋刑事の言う通り、その可能性が高いでしょうね。三宅坂を最後に輸送トレーラーが捉えられていない点から考えても、国会にあるというのは筋が通りますし」

 国元は守屋刑事の考えに納得した様子だ。

『それじゃあ、私の調査は一旦終わりって事でいい?』

 守屋刑事が言うと。

「はい、後はこちらで調べますので。守屋さんは然るべき時まで休んでいて下さい。お疲れ様でした」

 国元は労いの言葉をかけた。

『了解。じゃあ、ゆっくり休ませてもらうわね。この狭い部屋で』

「狭い事に関してはこちらも申し訳なく思ってるので、あまり言わないで頂けると……」

『分かってるわ。捜査一課にバレたらまずいんでしょう? じゃあ、何かあったらまた電話して』

 国元に喋る時間を与えず、電話が切れてしまった。

「ちょっと都合よく使いすぎましたかね……」

 国元はそう呟いて頭を掻いた。


 またも、それを陰からリンファが聞いていた。

 そして同じように電話をしている。相手も昨日と同じだ。

「信用レートの頭脳の場所、かなり有力な情報を得まシタ」

『ほほう? それはどこダ?』

「国会議事堂の地下デス」

『国会ノ地下か。アマテラスも考えガ浅いナ』

「そうでしょうカ? 警備も厳重ですし、一般の人の立ち入りも制限されていマス。隠し場所としては絶好のポイントでは?」

 リンファが言うと、電話の相手はふっと笑った。

『確かニそうかもしれないが、裏ヲ返せば警備を突破されたら終わりという事ダ。アマテラスのコピー、絶対ニ叩くぞ』

「はい」

 リンファが電話を切る。

「いよいよ作戦の日が近づいて来ましたネ。日本の神は、これで終わりデス」




 その日の午後。

 響華たちの元へ長官がやって来た。

「ちょっといいかな?」

「はい、何でしょうか?」

 長官の呼びかけに碧が応じる。

「さっきリンファさんから伝えてほしいって言われたことがあって」

「それはもしかして、人型の魔獣についてでしょうか?」

 碧が聞くと、長官が頷く。

「そう。昨日の午後に強い魔法反応があったらしくて、それが魔法能力者のものとは違かったらしいの。それで詳しく分析してみたら、魔獣発信のものだったんだって」

「魔法反応があったのは何時頃ですか?」

「え〜と、確か三時頃って言ってたかな?」

「三時頃……」

 碧の頭に昨日の出来事が浮かぶ。

 昨日、響華が索敵魔法を使ったのが三時頃だった。ということは、その直前に共工がそれを察知していた可能性が出てきた。

「すみません、直接リンファさんからお話を伺いたいのですが、呼んできて頂いてもよろしいでしょうか?」

「分かった、すぐ呼んでくるね」

 長官はリンファを呼びに、早足で分析室の方へと向かっていった。

 しばらくすると、リンファが長官に連れられてきた。

「何かありましたでしょうカ?」

「昨日の午後三時頃に確認された魔法反応の話を詳しく聞かせてほしいのですが」

 碧が言うと、リンファは笑顔を見せる。

「はい、もちろん構いませんヨ」

 すると長官のスマホが鳴った。

「ごめんね。私ちょっと仕事あるから、もういいかな?」

「もちろんです。色々とありがとうございました」

 碧が頭を下げると、長官は。

「ううん、気にしないで」

 と言ってスマホを操作しながら去っていった。

「で、魔法反応の件ですよネ」

「はい。どういう反応だったんですか?」

 碧の質問に、リンファは少し考えて答える。

「そうですネ……。何というか、魔法物質を直接操作した、みたいな、そんな感じですかネ?」

「直接操作した……。魔法を唱えずに、ということですか?」

「そう考えるのがいいと思いマス。少なくとも、普通とは違う方法で魔法が発動したのは確かデス」

 リンファもあまり見たことがない魔法反応だったらしく、正確には答えられない様子だった。

「では、その魔法は何条に当たるものでしたか?」

「魔法の種別自体は十五条とみて間違い無いですネ」

「十五条……。転移魔法か……」

 碧がぼそっと呟く。

「それがどうかしましたカ?」

「いや、こっちの話だ。時間を取らせてすみませんでした。ありがとうございます」

 碧がお辞儀をすると、リンファが微笑んで言う。

「いえいえ、私はただ分析室の情報を伝えただけですカラ。では、失礼しマス」

 リンファが分析室へと戻っていく。

 それを見届けた碧は、リンファから聞いたことを響華たちに伝えた。

「私が索敵する直前に転移した?」

 響華が首を傾げる。

「やっぱり、予測魔法で全部読まれてるんじゃ……」

 雪乃の言葉に、遥が首を横に振る。

「それは無いと思う。いくら魔獣でも、索敵魔法まで予測するのは難しいと思う。だから、もっとシンプルな話なんじゃないかな?」

「シンプル? どういう事でしょうか?」

 雪乃が聞き返すと、芽生が閃いたように口を開いた。

「そうよ……。結局は政治なのよね……」

「メイメイも気づいた?」

 遥が問いかける。

「ええ。あなたの言う通り、もっとシンプルに考えるべきだった。魔災隊、あるいは警察の中に内通者がいる、そういう事ね」

 芽生が言うと、遥が大きく頷く。

「それじゃあ、誰が内通者なの?」

 響華が周囲を警戒しながら聞く。

「う〜ん、それは分からないけど」

「そこまで気づいていて、それは分からないのか……」

 碧が残念そうに呟く。

「でも、もし次に似たようなことがあったら、その時近くにいた人が内通者って事になるよね? だから、今後は周りに誰がいるか気にしながら行動するようにしよう」

 響華の言葉に、四人は首を縦に振った。




「リンファがアマテラスのコピーの居場所ヲ突き止メタ」

「あら、それはどこかしら?」

「国会議事堂ノ地下だそうダ」

「随分とすごい所にあったわね〜」

「これデ作戦が実行出来ル」

「気をつけてね、共工さん?」

「そんなことハ分かってイル。バックアップは任セタぞ、楓」

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