表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

15/22

14

 二人を見送ったキャロルは、


「さて」


 と部屋を見渡した。


「ジャスミンさまのお世話がないとなると暇ね」


 とりあえずジャスミンの部屋の掃除を始めることにする。

 ほうきを手に取ったところで、部屋の扉がノックされた。しばらくして開いた扉から顔をのぞかせたのは、ウォーレスだった。


「ジャスミン! 私と一緒に城下町にーーって、キャロルだけか? ジャスミンはどこだ?」


 恐らく王妃のところから逃げてきたのだろう。キャロルは苦笑いしながら、


「リュディアスさまとお出かけに行かれましたわ」


 いずれバレることだろうから、正直に言うと、ウォーレスはまなじりを吊り上げた。


「なんだと!? 婚約者でもないのに、二人きりで外出など! 行先は? 城下町か? 竜の島か!?」

「恐れながらウォーレスさま? いずれジャスミンさまは結婚されますよ。むしろされないと困ります。庶民と違って王女ですから」


 幼い頃からよく知っているキャロルは、ウォーレスにも遠慮がない。キャロルの正論に、ウォーレスはうろたえる。


「そ……それは分かっているが……。だが、まだジャスミンは結婚できる年齢ではないし」

「もうすぐできますよ。第一婚約者でなくても、二人で出掛けるなんて普通です。フ・ツ・ウ! そろそろ妹離れしないと嫌われますよ?」

「嫌われ……うっ……! 急に急ぎの仕事を思い出した。ではな、キャロル」


 急にウォーレスは苦痛そうに顔をゆがめて頭を押さえると、ふらふらと部屋を出て行った。思い当たることがあったらしい。


「はーい。頑張ってくださいね、ウォーレスさま」


 にこやかにキャロルはウォーレスを送り出す。ウォーレスの姿が見えなくなると、


「兄妹仲がいいのは結構だけれど、あれではウォーレスさまが結婚できたとしても、お相手の方が苦労するわねぇ」


 と独りごちた。


「ともかくリュディアスさまが、上手くやってくださればいいのだけれど。ジャスミンさまと絶対お似合いだもの!」


 ジャスミンに対して溺愛しすぎているところもあるが、それを除けばリュディアスは結婚相手として申し分ない、とキャロルは思っている。

主人であるジャスミンの、幸せな結婚を何より願っているので、できれば政略結婚などではなく、彼女を心から大切に思ってくれている相手と結婚してほしいのだ。だからおせっかいなのは承知のだが、少々強引にジャスミンを送り出すことにした。

 国王と王妃もリュディアスを悪くは思っていないし、ジャスミンさえその気になればすぐにでも縁談がまとまるだろう。

 早くも二人の子どもはどちらに似ているだろう、と想像を膨らませながら、キャロルはほうきで床を掃き始めた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ