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「いやだぁぁー! お母さまものすごく張り切っているのよ……。お兄さまに矛先が向いてよかったーと思ってたのに! 結婚したくないいー!」


 部屋に戻ったジャスミンは、キャロルに事の顛末を話した。ベッドに突っ伏して、ジタバタ手足を振り回す。

 そんなジャスミンをキャロルはあきれ顔で見つめ、


「私しかみていないとはいえ、はしたないですよ。ジャスミンさま。それに舞踏会に来た相手と、即結婚しなければいけないわけではないですよ。気軽に楽しめばいいじゃないですか。綺麗なドレスを着て、美味しいものを食べて、普段なかなかお会いできない方と、楽しくダンスするだけですよ」

「別にダンスは得意じゃないものー!」


 ジャスミンはひとまず起き上がるとベッドに座って、唇をとがらせる。


「国内の有力貴族や他国の王族の方と交流を深めるのは大切ですわ。ジャスミンさま」

「正論は聞きたくないのよー」


 こんこんと諭されて、ジャスミンは耳を押さえて首を振った。

 その時、扉が軽くノックされる。


「どうぞ。開いているわ」


 扉から顔をのぞかせたのは、リュディアスだった。


「リュディアスさま!」


 しぃ、とリュディアスが軽く人差し指を唇にあてる。


「エリクを巻いてきた。竜の島を案内しよう。空からしか見たことがなかっただろう?」

「今からですか? ええと、何か用事があったような……」


 もちろん用事などない。ジャスミンは基本的に公務以外の予定はないため、部屋に引きこもっていることが多い。ちらっとキャロルに目配せしたが、通じなかったようだ。


「ジャスミンさまのご予定はございません。どうぞいってらっしゃいませ。お茶の時間までなら大丈夫ですから」

「キャロル!」

「そうか。ならば心置きなく連れて行こう。お茶には間に合わせる」

 側仕えのメイドの許可が出て、リュディアスは嬉しそうだ。ジャスミンはジト目でキャロルに訴える。


(恨むわよ、キャロルー! 二人で出掛けるなんて、こんな気を持たせるようなことしてー。わたしには結婚する気なんてないのに)


 だが、キャロルは恐らく通じていてあえてにっこりと笑った。リュディアスの肩を持っている節がある。


「普段引きこもりがちですから、お誘いいただいてよかったですわね。いってらっしゃいませ。ジャスミンさま」


 リュディアスはバルコニーに出て、部屋側を向いてテラスの上に立った。手を伸ばす。


「おいで。ジャスミン」

(断れる状況じゃないわね。仕方ない……)


 ジャスミンは意を決して、リュディアスの手を取った。リュディアスはその手をぐっと引き上げて、お姫様抱っこをする。


「じゃあ楽しんでくるわ。あとはよろしく。キャロル」


 厭味ったらしくにっこりと微笑んで手を振るが、長年側仕えを務めているキャロルはまったく動じていない。


「いってらっしゃいませ」

 

 にっこりと手を振り返してくる。リュディアスは大きく羽を広げると、空に羽ばたいた。


 


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