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二度目の異世界渡り  作者: 723
帰還編
7/15

終焉の街、その名はスナーバ

 ほぉ、アラブ系だぁ。

 町の門に到着した私は、有無を言わさず傍に手を入れられてひょいっと下ろされた。

 むむ、馬ぐらい自分で降りられるのに。


 「アザラン!こりゃ大量だな!」

 「あぁ、サーソリーだ。薬師を手配してくれ。あとで毒も取りに行く」

 「わかった」


 駆け寄ってきた門番の男は、部下に手で指示した。獲物を見た時から、そうなることを予測していたのだろう。


 「それで、そいつらは?」

 「ソーサラーに襲われてたから、ついでに助けた」

 「ほう、それは災難だったな。ようこそ、終焉の町スナーバへ。南から来たのかい?いや、それにしては」


 軽装だと思ったのか、日焼けのしてない肌を不思議に思ったのか、人の良さそうな顔をしていた門番は、眉を顰めて湊たち一人一人を見渡した。


 「ほら、お前ら門番に札見せな」


 札?あぁ、ライフカードか。

 この世界は、生まれてすぐ神殿でライフカードを渡される。日本でいう戸籍のようなもので、見た目はドッグタグを細くしたような札だ。色は、最初はみんな同じ色だけど職業などで変わってくるって聞いた気がする。


 「私、ギルドカードど融合してるんだけど大丈夫ですか?」

 「もちろん。冒険者だったか」


 門番さんが、少しホッとした顔をした。

 ギルドカードに、そわっとした北里先輩。東雲も興味深々である。


 「本業はそっちじゃないんだけど、あると便利だからって」


 胸元から出そうとして、あ、外してたんだっけ。スカートのポッケを漁る。あれ?

 ギルドカードを現代女子高生が制服のポッケにいれるはずがない。

 待て待て待て。置いてきた?いや、いつ戻ってもいいように持ち歩いてたはず!

 がざごそ身の回りを漁る、私に「ほら」とお嬢がバッグを差し出した。


 「あ、私の鞄」

 「さっき落としてたわよ」

 「お嬢が神だった」


 ぺしっと肩を叩かれた。照れるなって。


 「ちょっと待って下さいねぇ」

 

 バックの中を漁り、ポーチを出す。そうそう、この中にほらぁ!あった!


 「はい!ギルドカード!」

 「こ、これは」


 門番が、動揺して後ずさった。


 「へ?」

 「プラチナカード。お前、何もんだ」


 アザランさんに疑わしげに見られた。 

 いや、プラチナってことは怪しいもんじゃないでしょーよ。


 湊が見せたのは、プラチナのカード。あと、星形のチャーム、月型のチャーム、あと雷型のチャーム、金色に輝く棒状のチャームが、じゃらじゃら付いたネックレスだ。


 「ず、随分たくさんのチャーム付きだな」

 「うん、みんながこれもこれもって。ジャラジャラして邪魔だからいらないって言ったんだけど」


 そうそう、他にもいろいろ貰いそうになったんだけど断って逃げたんだ。


 「ね、念のため水晶板で本物か鑑定させて頂いて、よ、よろしいでしょうか」

 「え、はい、いいですよ」


 ギルドカードを門番さんの手に、ぽいっと放る。門番さんは、手の上で跳ねたギルドカードを慌てて掴む。へへっ、驚いてやんの。


 「それで、そちらの方たちは」

 「あ、みんなは持ってないよ」

 「持ってない?」

 「うん、札なしだから教会で申請してから、冒険者ギルドでギルドカード作ろうと思ってて」

 「ちょっ、ちょっ、待って下さい。その年齢で札なしですか?」

 「え、教会で貰えない?」

 「いえ、申請すれば誰にでも貰えますが」


 視線を泳がせた門番が、救いを求めてアザランを見る。アザランを見上げれば赤胴色の短い頭を振ってやれやれと肩をすくめた。


 「すまねぇな。だが、怪しいもんじゃねぇだろう。見ろ、こいつらの外套を」

 「外套?ただの砂よけ」


 門番は、ハッとしたように目を見開いた。


 「糸族の外套か!」

 「その通り。こいつらが極悪人で誰かから奪ったんじゃなければ、立派な保証人だ。まぁ、プラチナ持ちがいる時点で悪人じゃねぇだろうな。というか、この平和ボケしたようなぽややーんとした奴らが極悪人だったら、世も末だ。俺は冒険者を引退すんぜ」


 へっ、と笑ったアザランに門番は苦笑した。


 「そうか。とりあえずこれだけ鑑定させてもらうよ」

 「うん」


 門番が、小さな詰所へと引っ込んだ。


 「アザラン!」

 「イヨ、お前が手配されたのか」

 「うん!サーソリーだって!?すごいね!たくさんお薬とってこなきゃ!」

 「あぁ、そうだな。もうちょい待ってろ、今一緒に行ってやるから」


 大きな門の片隅にある小さな扉から出てきたのは、草色のローブを纏った男の子だ。体に見合わない大きな肩掛けバックの紐をぎゅっと握って、自分の倍以上に背の高いアザランを頬を紅潮させながら見上げている。


 「アザラン、いいよ。俺たちがイヨ連れてくから。アザランはそいつらに着いてってやれよ」

 

 男子二人と三人乗りしてた小柄な冒険者が、イヨと呼ばれた薬師に肩を組みながら提案した。小柄だと思っていたが、イヨと並ぶと厚みのあるガッチリとした体格なのが良くわかる。

 

 「いや、でもな」

 「兄さんと一緒なら平気だよ!」

 「へへっ、だよなぁ」

 「チッ、わかったよ。お前ら、イヨのこと頼むぜ」


 片手を振って返事した冒険者たちは、それぞれの馬に跨った。イヨは、兄と呼んだ小柄な冒険者に引き上げられている。馬たちはいななきを上げた。小さくなっていく仲間の姿をアザランはジッと見つめていた。


 「ありがとうござます」

 「かまわねぇよ。それより、お前何もんだ」

 「へへっ、今にわかるでしょーよ」


 片眉を上げたアザランに、にやりと笑った。

 小走りで詰所から戻ってきた門番が、最敬礼した姿にアザランはぎょっとしたのだった。

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