キリンの雑学
「てなわけで合コンは失敗みたいな感じに終わったわ。まぁ哲司が合コン中に下手なことしないか不安だったけど、無事に終わったって感じか。結果的に久賀は天草に少し近づけたみたいだし」
津樂は部室に手合コンどうだった?と一ノ瀬に聞かれたので簡単に話していた。
津樂の話を一通り聞くと「大変だったね」と同乗の視線を送りお菓子の袋を開ける一ノ瀬。
「それに結局あなたの無駄知識を披露する場面はなかったわけね。結果だけ見ればあなたのしたことは紅井って子に鼻の下伸ばしていただけだもの」
「伸ばしてねぇよ。それに結果だけ見るな。人に気使うとか普段してなさ過ぎてめっちゃ疲れたんだからな。おかげでまだ眠い」
「達也君は普段から眠たそうにしてるけど……」
一ノ瀬が欠伸をして半開きの眼で本を見つめる津樂に苦笑いでそう言うと、隣にいた霧崎が、
「一ノ瀬さん察してあげなさい。彼はあまりよく眠れる環境ではないの。いつ襲われても不思議ではないから、いつでも逃げれるようにスタンディングスタートの体勢で三十分くらいしか寝れないのよ」
「俺は一体誰に狙われてんだよ。生憎だが俺はそんなキリンみたいな生き方はしてない」
「キリンってスタンディングスタートで寝るの?」
「スタンディングスタートっていうか、普通に立って寝るぞ。いつ襲われるかわからないから二十分くらいしか寝ないらしい。だから動物園じゃ身体を限界まで丸めて寝てるしな。まぁ食事に時間がかかるってのもあるけどな」
「食事に時間がかかるの?」
その質問に答えたのは津樂ではなく霧崎。
「キリンは草食動物。あの巨体を草だけでカロリーを摂取しないといけないから時間がかかるのよ。人間ならサラダだけで暮らすようなものよ」
「ヘルシーだねぇ」
「といっても一日六十キロくらいの餌を食べるらしいけどな」
「私もサラダダイエットとかしようかなぁ~」
と言いつつ一ノ瀬は新しいお菓子を手に取り口に運ぶ。
((絶対に続かないわね……)だろうな……)
津樂と霧崎が珍しく思考が一致したが、それを知るものはいなかった。




