花火の雑学
パ~ンドンドンッ!
「きれいだね~」
「そうね、少しうるさい気もするけど」
「お前ホント雰囲気台無しにするよな。俺も思ったけど」
「思ったんだ……」
花火――音や火花でいろいろな演出をするもの。祭りに来ていた雑学部も当然見ている。
「人が多くてできないけど、一回思いっきり『たまや~』って叫んでみたいよね」
「やればいいじゃん」
「できないよ~恥ずかしいし」
「一ノ瀬さんにも恥ずかしいという概念はあったのね」
「霧崎さんの中の私ってそんなイメージなの!?」
「そもそも、一ノ瀬はその掛け声の元知ってんの?」
「元? え~と、『なにアレ?た、玉や!』みたいな?」
「なんで関西のおっちゃんみたいな言い方なの? じゃあ、かぎやは?」
「花火の明るさで失くした鍵でも見つけたんじゃないかな?」
「そんな理由で『かぎや~』って叫んでたら滑稽だな。江戸時代の花火師の屋号だよ、玉屋と鍵屋っていう」
「鍵屋さんが花火作ってたの?」
「いや、だから花火師だって、鍵作ってるわけじゃないの」
「ていうか江戸時代からあったんだね。花火」
「ま、当時の家は木や紙だから花火禁止令ってのも出たらしいけどな。実際玉屋は大火事して、廃業してるし」
「そうなの!? え、でもたまや~って言う人の方が多くない?」
「いろいろ説はあるよ。当時は玉屋の方が技術があったとか、母音があの多い玉屋は言いやすいとか」
「へ~江戸時代って言うことは徳川家康の時代だよね? やっぱり最初に見たのかな」
「別に二百年以上続いた江戸時代が徳川家康の時代っていうのもどうかと思うけど。確かに、今までは徳川家康が最初って言われてたんだけど、今では伊達政宗の可能性が出てるんだ。米沢城で楽しんだっていう記述が出てな」
「あなたたち、そんなことより花火もそろそろ終わりよ。見なくていいの?」
そのあと、三人は徐々に派手さを増す花火を堪能した。
「花火が終わった後ってちょっとしんみりするよね」
「賑やかなところから静かになったからそう感じるだけだろ?」
「もう、ホント達也くんってムードっていうのを考えないよね」
「雰囲気を台無しにする人はモテないわよ」
「おい、この話の冒頭で似たやり取りをしたお前が言うの?」
「あら、何のことかしら?」
こうして、三人で行く初祭りは終わりを迎えた。夏休み前の一ノ瀬の反応から祭りに連れていかれることを予想して、面倒くさいと思っていた津楽も思いのほか楽しむことができた。ちなみに、その光景を目撃していた妹・佐奈が家族と共に『お兄ちゃんが女の子連れてた~』と騒いでいたという。




