そうだ。村を開拓しよう 2
ようやく俺達は長い道のりを経て、自分が頼んだ家に着いた。
「うわ・・・すげぇ・・・」
「自分で頼んでいて何ですかその反応」
いや、ここまで大きくなるのは俺知らなかったよ。もっと小さい一軒家が立っているイメージだよ。しかも馬小屋まであるし、ここは王女様の善意ということで受け取っておこう。大きくて損をすることはない。
「とりあえず疲れましたからここらへんで解散ということでどうですか?」
「それに賛成。仕事は明日にしよう」
そういう事に決まり、家の中に入ったがあまりの豪華さに俺が気絶しかけたが何とか保ち、部屋割りを決めて決めた自室に入った。
俺は服を脱いで部屋のベッドに転がった。窓を見てみると意外にも時間が過ぎていたのかあたりは暗くなり始めている。外は止めてあるパジェロとトラックしか見えない。
(パジェロにトラックか・・・・)
このところ忙しかったために考えていなかったが今の状況は俺にとっては悪くなるばかりだ。一年前は情報収集と仕事を掛け持ちしながら何とか生活を繋げていたがこっちの世界から元の世界に帰る方法は一向に分からないままだ。それは今でも続いている。
それに俺は自衛官でありながら独断で武装勢力との小規模な武力衝突を行ってしまった。(生き残るために仕方がないとはいえ)更に条件が悪くなってしまったのは言うまでもない。
「俺、帰れるのかな・・・・?」
言いようのない不安が俺の中にはあった。俺は気持ちを切り替えると不安を掻き消すかのように布団の中に潜り込んだ。
翌朝、朝の光に手助けされながら起きた。
「う~ん。さぁ、今日も頑張っていくか!」
午前は仕事はせずに荷物を整える。幸いかどうかはわからないがそれほど多くは持っていないのですぐに終わった。午後は仕事を集めた。役場などで輸送関系や土木などの仕事を探すとまるで埃のように大量に出てきた。明日はこれを消化する予定だ。
更に翌日
「すまんねぇ、若い人に任せて・・・」
「いえ、大丈夫ですよ」
俺達は若い老人が頼んできた巨木の伐採に来ていた。間近で見るとかなり大きい。これを老人一人が斧を持ってやったとしても巨木が倒れる前に老人が倒れる。
「どうしますか?」
「そうだね。時間も押しているから斧でやっている時間はない。だからこそアレを使うか!」
「アレ?」
俺はミルシアに笑顔で「まぁ、見てて」といい、トラックに走って荷台からあれを持ってきた。俺が持ってきたのは別に自衛隊の装備では無い。むしろ世界中のみんなが使っていて林業にも大きく貢献しているものだ。
「何ですか?そのギザギザの刃がついた箱は?」
「ふふん。これね”チェーンソー”っていう道具なんだよ。まぁ、見たら分かると思うから見てて」
チェーンソーの紐を引いてエンジンを起動させる。数回でエンジンがかかった。正常に回るかを少し刃を回転させて確かめる。よし、問題はなさそうだ。
「少し下がってて危ないから」
二人が下がったのを確認すると木の幹にチェーンソーの刃を当ててしっかりと体を固定する。そのまま刃を回転するとすんなり巨木を切り裂き、それを角度を何回変えていると巨木はその巨体を地に休めた。
「ふぅ、こんなの久し振りだよ。さぁ、終わったから次行こう・・・・・え?」
振り抜いてみると老人が倒れており、ミルシアが看護している。俺は頭を掻きながら呟く。
「マジか・・・・」
おそらくあまりに現実離れしたことだからショックで倒れてしまったのだろう。何かうわ言で「嘘じゃ・・・」とか「今までの苦労は・・・・」と呟いているのを考えてみると今まで老人が何週間もかかって切っていたモノを数分で切ってしまったからだろう。何か説明すればよかったな。後で謝っておこう。
次は輸送関係だ。この依頼主は村の村長でどうやら俺達がここに来る前にとある道の崖が崩落して通行が出来なくなっている為に代わりの道を通らなければいけないために食料や日地用品の輸送が大幅な遅れを見せているとのこと。しかもその道は険しく歩いていったのなら往復で半日はかかってしまうそうだ。だからあの鉄の馬なら行けるかもしれないから言って来てくれとトラックをチラ見しながら依頼してきた。
その為にトラック二台で品物を届けている。
ガタン
『痛い!』
無線機からミルシアの痛がる声が聞こえてきている。どうやらさっきの段差でどこか打ったらしい。
「大丈夫か?」
『いえ、心配なさらないでください。それよりも早く・・・』
ガタン
『痛ぁぁい!?』
全然説得力がない言葉である。いくらトラックでもここまでの段差になるとさすがに衝撃を吸収できない。道路の状態は発展途上国よりもひどいものと言ったら分かるだろうか。しかもここだけに限った話ではなく村全体がこんな感じだ。前は半分冗談で言ったつもりだったがこの先の苦労を考えたら本格的に計画したほうがいいのかもしれない。
(ミルシアに警備を任せて、自分はLCACへと行くか)
あそこは崖だし、第一LCACはこの世界の人間は動かせないだろうから放置しても大丈夫だが様子見もかねて一度「くにさき」に戻ろうと俺は計画していた。取ってきたいものもあるし。
しばらく走行していると目的の村が見えてきた。俺は荷物を降ろし依頼の報酬をもらうとそそくさと帰る支度をする。
(前と同じパターンだな)
数十分後
同じパターンだと思っていた時期が俺にもありました。実は俺達少しばかり面倒くさい事態に直面している。その原因はトラック前にいる。
「お嬢さん達、どこに行くんだね?」
気持ち悪い笑みを浮かべながら近寄ってくる。この男の服装からして・・・商人だろう。しかもかなりやばい系の奴だ。俺はなるべく嫌悪感が顔に出ないようにしながらトラックから出て応対をした。
「仕事を終えたのでこれから村に帰るところなんです。あなたはどちらから?」
「ほぉ、後ろの魔獣は噂の・・・・するとあなたの名前はクニサキ様ですか?」
「ええ、そうですね」
すると目を輝かせながら手を握ってきた。
「おお、王国で有名になっているクニサキ様にお会いできるとは光栄です!」
「ど、どうも・・・・」
あまりの喜び様に俺もミルシアも引きまくっている。
「それでどうでしょうか!!ぜひ、我が商会にあなたを招きたいのです!そちらのお方もいっしょに!」
ああ、大体この人の腹積もりが分かったぞ。確かに俺は王国にいろいろなこと込みで噂になってしまっていた。貰った仕事は通常の人では出来ない人も難なくこなしていたし、異世界の人から見たら島に見えてしまうような船を自由自在に操れている俺に目を付けたんだろう。自分達の仕事をやってもらうために。
「残念ですがお断りしまう」
「な、なぜですか!?」
俺の返答に商人は慌てる。悪くない条件を与えた為に首を縦に振ってもらえると思っていたのだろう。どこだったかは分からないがとある人はこう言っていたから君に送ろう。
”常に最悪を想定しろ”だ。
何それからしばらく説明に時間がかかったがどうにか納得してもらって帰ってもらった。町の手前に来ると無線を開いた。
「すまない。ミルシア先に家に帰っていてくれないか?」
『いいですけどクニサキさんはどうするんですか?』
「俺はちょっと取ってきたいものが出来たから「くにさき」まで帰ってくる。それまで警備を頼むよ」
『そういうことでしたか。分かりましたお任せください』
そうして俺達は二手に分かれた。しかしどうしても気になることがある。あの商人どうしても簡単に引き下がってくれる気がしない様な気がする。
「少し警戒したほうがいいかもな」
不安を残したまま、俺は砂浜に停めてあるLCACに急いだ。
道から外れた森の中でさっき商人が魔導石を使って誰かと話していた。
「私だ。ああ、勧誘は失敗した。予定通りに頼む」
それだけ言うと魔導石の通信を切った。彼の口には笑みが浮かび上がっていた。
「無理やりでも連れて行くぞ。クニサキよ」
彼は深い笑みを浮かべながら暗い森に入っていった。その奥から何かの雄たけびがあがった。
次回がなぜか戦闘臭がしていますがとりあえずタイトル回収してからです。
そして次回はようやく登場します。今までお待たせして申し訳ありませんでした。今回も代わりで施設科?の装備が登場していますが本格的に出てくるのでお待ちください。