到着そしてダンジョンへ 後篇
ミリシア視点
彼女には助けてもらってから驚かされぱなしだ。見たこともないような船、鉄の馬車、そして見えない魔法を撃つ杖。どれもが彼女の興味を刺激した。だからこそ彼女に着いてきた。あれが一体何なのか、それを自在に操る彼女は何者なのかを。
武器に関してはまだ何ともいえないが彼女、クニサキについては分かってきた。一言でいえば「口調は変だが美人で頼りになる女性だ」口調が変だと言うのはいつも男みたいな口調をしている。私にとっては美人なのに口調のせいで台無しという感じだ。
タタタタタタタタ
「はぁ、はぁ」
背後からは見えない魔法を撃つ杖の音が聞こえてくる。クニサキが戦っているのだろう。ソードマンの悲鳴が音とともに聞こえてくる。
「キューン、キューン」
ダイアウルフの子供が音を聞きつけたのだろう。心配そうな声を上げながらこちらを見てくる。それに微笑みながら彼女は言う。
「大丈夫。クニサキさんと私が必ず守るから」
その声が届いたからかは分からないが子供は鳴きやむと再び、体を丸めた。それに安心していると横の通路からソードマンが現れた。ソードマンは中型ダンジョンによくいるモンスターで気性が荒く他のモンスターも容赦なく襲う。冒険者も成り上がりの者が小型ダンジョンから中型ダンジョンへ移る際によく苦しめられている。
「邪魔よ!」
さっきの約束を破らないためにも飛びかかってくるソードマンを剣で瞬殺して先に進む。あまり奥に行かなかったせいかすぐに入り口が見えた。
「良かった・・・」
内心、安堵しつつももう一人の人物が心配になってしまった。彼女は必死に彼女の身の安全を祈った。
「はぁ、はぁ、エアコン完備の輸送艦勤務にはつらいね」
愚痴を溢す。肉体は転生前から比べて強靭になったものの。やっぱり精神的にはつらいものが多々ある。それに後ろからは化け物の大群が来ているので休んでもいられない。
「もうっ!連いてくるな!」
後ろを振り返りながら弾を撃ち尽くすまで撃つ。銃身が跳ね上がったところで弾が切れた。ソードマン達は前方の味方が一瞬でやられたことで動揺し、警戒しているが俺は既にそこにはいない。リロードをすばやく終わらせてすぐに逃走に移る。
「入り口はもうすぐなはずだけど・・・」
既にかなり走った。もう入口が見えてもいいはずだと思ったら声が響いてきた。
「クニサキさーん、ここですよー!」
あの声はミルシアだ。どうやら入口までもうすぐなようだ。
「よかった」
と安堵したのもつかの間に横から何かが飛び込んできた。一匹のソードマンだ。俺は避けることは出来ずに見事にぶつかった。その時に小銃を取り落してしまった。
「ぐわぁ!」
壁にぶつかって動きを何とか止められたがまだソードマンがいる。ソードマンも足と手を器用に使って起き上がろうとしていた。
「どうしてこう邪魔をしてくるんだ」
そう言いながらホルスターから9mm拳銃を抜き、撃つ。5発撃ったところでようやく倒れた。全身が激突した衝撃で傷むが気力でそれを凌ぎ、小銃を拾う。
「あ、お前たちにお土産ね」
ベルトから手りゅう弾と閃光手りゅう弾を一つずつ引き抜き、ピンを抜く。曲がり角を曲がったところでそれを投げた入り口まで全力ダッシュした。俺がダンジョンから出たところで閃光と爆発音が同時にした。ついでにいうと何か気色悪い音もしたが気にしないようにしよう。
「ご無事ですか?」
ミルシアが心配して駆け寄ってくる。俺は喋る気力がないので右手を上げて答える。
「そうですか。無事でよかったです。しかしソードマンが出るとは・・・」
「そのソードマンってやつは滅多にでないの?」
「はい、中型にはよく出ますがこうした小型ダンジョンで出るのは異常ですね」
「まぁ、その点に関しても王女様に帰って聞いてみよう」
「そうですね・・・あっ、それと」
この後、銃や手りゅう弾に関してめちゃくちゃ聞かれ、誤魔化すのに苦労したのはまた別のお話。
「ふむ、ご苦労であった。しかしまさかソードマンが出るとは。お主も大変だったじゃろう?」
「いえ、大丈夫であります。お気になさらず」
「そうか。それで褒美の話なのじゃが。さすがに今回はお主に苦労を掛け過ぎたみたいじゃから今回は特別にお前の好きな物をやろう」」
「えっ、好きな物!?」
これには俺も驚いた。まさか一国の王女様が言っては悪いが不法入国寸前の不審者にこんな待遇をするとは思ってもいなかった。怪しい、怪しすぎる。絶対何か裏があるはずだ。俺もそこに気付かないほどに鈍くはない。
「そうですね」
とりあえず誘いに乗る事にした。裏があると分かってもやはり何かを貰えるなら今後の生活の基盤としてもらっておこう。
「そうですね・・・・ではこれをお願いします」
俺は結構無茶振りを言ったと思うが王女様は二つ返事で承諾してくれた。
王城を出たあとにこれから何をしようか迷っている。王女様に頼んだものは全て用意できるのはどれだけ急いでも一週間後らしいのでこれからどうするのか迷っているのだ。その時に再び、ミリシアに出会った。
「ミリシア、どうしてここに?」
「実はお願いがありまして・・・」
「お願い?」
実にむずむずした感じで落ち着きがない。どうしたんだろうと思いながら数分間待っているとついに何を決心したのか大声で顔を真っ赤にしながら頼みごとを言った。
「あなたの元で働きたいんです!!」
「はぁ!?」
その言葉に今度は俺が慌てる番だった。
とりあえず入れさせることにした。これは100%善意でやっているわけではない。むしろ80%は自分の目的のためだったのだ。理由は二つ。一つはこちらは人数が一人で今までの仕事も複数の仕事があったときにどうしても時間が被ってしまい目的の時間に届けることが出来ないという問題があった。しかし彼女がいればもしかしたらそれを解消できるかもしれない。二つ 前回の襲撃で身に染みて分かったことだが俺だけでは全てを守ることは難しくなってしまう。そこで彼女に武器を渡してそれを解消するという魂胆だ。
「さて、ここが俺の家であり仕事場である「くにさき」だ」
「「クニサキ」。クニサキさんと同じ名前ですね!」
だろう。何の運命かは知らないが俺が配属された艦はこの船「くにさき」だったのだ。でもあの時はまさかこんな事態になるとは思っていなかった。
「そうだよ。でも君がこの仕事場に就くためには二つの試験に合格してもらわないといけない。覚悟は出来ているか?」
「出来ています!!」
即答だった。ただ乗りできるとは本人も思っていなかったらしい。その覚悟があれば行けるだろう。
「分かった。じゃあちょっと準備をしてくるから待っててくれ」
「分かりました」
それから一周間はすぐに過ぎた。最初はミルシアも試験(試験と言うのは車両の運転や銃器の扱いなどを受けさせる事)に苦戦こそしていたが僅か一週間でそれを身に着けた。そして今日、異世界で初めて異世界人の自衛官が生まれた。(正式では無いが)
「良く頑張ったな」
「いえ、それにしてもこの一週間脅かされっぱなしだった」
「そうだろう。そんな新人のミルシアに仕事だ」
「えっ、もうですか?」
さすがになってから一日で仕事を任されるとは思っていなかったのだろう。どこか不安の様子だ。そんなあの序に俺は笑いながら肩を叩いた。
「安心しろって王女様との長期契約だよ。少しとある村を見て来いっていうな」
「視察ですか?」
「そうだ。だから行こうぜ」
俺は「くにさき」を起動させる。新しい仲間を迎えて俺はこの国に来て二つ目の仕事をしようとしていた。
今回は新しい仲間が加わりました。これからもよろしくお願いします。
次回は後方で活躍する重機達が異世界で活躍します。