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到着そしてダンジョンへ 前篇

今回は話が長くなりそうなので前篇と後編に分けました。それでも良い方はどうぞ。

現在の状況は最悪の一言といってよい。共和国に着いた瞬間に拘束されてしまい、彼女達とも離されてしまった。そして今は何かとても凄そうな扉の前に立たされている。


「俺、大丈夫かな・・・・」


緊張を和らげるために独り言を言ってみるがやっぱり緊張が解れることはなかった。すると隣の兵士が自分の手錠を引っ張って


「行かないか」


「はいはい・・・」


扉をくぐるとそこは・・・・何か偉い人がたくさん座っていて、中央には王女らしい人物が座っている。


「良くぞ、来られたぞ」


「お初にお目にかかります。王女様?」


最後は疑問文になってしまったが誰も反応しなかったのでセーフだろう。


「そんなに固くならなくいいぞ。それに私の名前はハミエールだ。この国の王女だ」


「私は輸送艦「くにさき」の艦長をしている国東 信吾です」


すると少しざわめきが生じる。自分の事について話しているようだ。ハミエールはそれに構わず話を続ける。


「ほぉ、あれはクニサキと言うのか。何と、何と。」


扇子を広げて笑うハミエール。俺的にはかなり冷や汗が出ている。


「本題に移ろうぞ。お主は王国から来たが何が目的だ」


やはり来たかと内心では思っていた。やはり国籍不明の巨大船がいきなり戦争中の王国から来たらそれは警戒される。共和国に限らず世界中の国がそうするだろう。しかしいきなり共和国の王女に謁見できるとは思っていなかった。


「私と彼女達は戦火を逃れて共和国に亡命してきました。我々は王国とも帝国とも関係ありません」


冷や汗だらだらで答えるとハミエールは隣の老人としゃべり、何かを決めているだろう。しばらくするとその話も終わり、俺に向き合った。


「お主の言い分はよく分かった。今回の件については不問にしよう。同行者の安全も保障しよう」


その言葉に安堵する俺。しかし王女は俺にとっては後々面倒な事を言った。


「お主についてはそうじゃな・・・・とりあえずダンジョンの探索に行ってもらおうかの」


「え?」


この時ばかりは聞き返すことを許されてもいいだろう。






ということで俺はダンジョンへの道を馬車を使って行っている。馬車と言っているが引いているのは馬ではなく、パラススと言う名の動物で外見的にはパラサウロロフスに近い感じだ。


「あんたは冒険者さんかいな?」


空を眺めていた俺だがその言葉で視線を下に向けた。気に良さそうなおじさんがこちらに顔を向けていた。


「そうじゃないですけど少し訳ありで・・・」


「そうですか。じゃないとこんな所に美人さんが来るわけないか。今夜いっしょにどうです?ハハハハハ」


「はぁ・・・?」


どうやらナンパされたらしい。とりあえず笑って誤魔化しておく。笑って誤魔化すのは日本人の性らしい。

そして再び、今回「くにさき」から持ってきた装備品を確認する。

陸自が標準装備している89式小銃とサブウェポンに9mm拳銃、更にM26破砕手りゅう弾、閃光手りゅう弾を装備している。平時のの陸自隊員ですらしない武装だがあいにく俺は海自だ。射撃精度は陸自の物と比べて劣っている。そのための重装備であった。


「ええっと、依頼の内容は・・・」


王女様から直々に渡された羊紙に書かれた内容を見る。内容はダンジョンに生息しているダイアウルフの衣を20個とって来いとのことだった。まぁ、普通の納品依頼だ。しかし今回は同行者がいる。


「あの・・・・」


同行者が声をかけてくる。俺は視線を上げるとあの時救った少女がいた。


「何だい、ミルシアちゃん?」


彼女の名はここに来るまでにようやく聞くことが出来た。彼女はミルシアという名だった。そして今回のダンジョン攻略に参加することになったのは本人の強い希望があったからだったみたいだ。


「さっきから気になってたんですけど武器とかはいらないんですか?」


あ、いけない忘れていた。つい、元の世界の感覚に戻ってしまっていた。だけど今は教えないことにした。(ミルシアではなく、あくまでおじさんに聞かれたくない為)あまり元の世界の道具、特に武器に関しては教えるとそれを狙う者がいたりして危険だと思ったからだ。


「大丈夫だよ。ちゃんと武器についてはダンジョンで教えるからそれまで待ってね」


「はい、分かりました」


本当かなというような目つきで見られているけど気にしないことにした。既に俺は許容量はとうに超えている。それから二人で雑談をしていると馬車が止まりおじさんが声をかけてきた。


「お二人さん、ここがダンジョンの入り口だ。気をつけてな」


「ありがとうございました」


おじさんは例を受け取ると笑顔で手振りながら来た道を帰っていった。


「さて・・・」


俺は銃を一層強く握りしめて、その入り口を見つめる。


「行きましょう。クニサキさん」


「そうだね」


二人はダンジョンの入り口の奥へと入っていった。しかし中は思ったよりも暗くてすぐに外の光が届かなくなってしまった。仕方なくライトを点ける。


「えっ!?」


「どうしたんだい!?」


ミリシアがいきなり驚いた声を出すので俺もびっくりしながら振り向いた。


「いえ・・・クニサキさんが光魔法が使えるなんて思わなかったですから・・」


「光魔法?あ、ええっと、まぁ使えるよ」


やはり只者ではないなという目を向けられつつ、俺はダンジョンの奥へと更に入った。


「何もいないな・・・」


元の世界ではそろそろモンスターが出てもいい感じなんだけど一向に出てくる気配が無い。どうしたのもかと思ったが次の角を曲がるとそれが分かった。


「これは!?」


「ひどいな・・・」


曲がり角を曲がるとそこには多数のダイアウルフの死体があった。死体は見るも無残に切り裂かれている。数はざっと二十を超える。どうやらお目当ての素材もあるようだ。漁夫の利で悪いがいただいていく。


「しかし一体誰がこんなことを・・・」


「ここに来た冒険者の可能性は無いのか?」


ここがダンジョンならその可能性は大いにあると思ったが彼女は首を横に振った。


「いえ、例え冒険者だったとしても一日に狩れる量をとうに超えています。並外れた冒険者でなければ出来ないでしょう」


マジか。ていうかあの王女様はそんなことを承知で頼んだのか!?危ない、ものすごく危ない仕事をするところだった。誰かは知らないがありがたく依頼を達成させてもらおう。


「キュ~ン」


鳴き声がして俺達は銃と剣をその音の方に向ける。音の発生源はどうやらあのダイヤウルフの死体から聞こえていているらしい。俺とミルシアは目配せをして慎重に死体の方に行き俺が銃の先端で軽く小突いたが何の反応が無い。おかしいと思いながら死体を退かしてみるとようやく分かった。


「ダイヤウルフの子供か」


そこには動かなくなった親のダイヤウルフを起こそうとするダイヤウルフの子供がいた。しかし子供も無傷とはいかずに左目と右足を怪我している。


「どうする?」


この子は親を失ったようだ。後のためにも殺しておくか?いや、生粋の日本人にそういうのは厳しすぎる。

考えていると今度も声がした。


「グォォォォォーーーー!!!」


「待ってくれ、今、考え中?」


「クニサキさん!前から聞こえます」


さっきの声はどう見てもミルシア、ダイヤウルフの子供そして俺の声ではない。もっと大きいもっとデカイやつらだ。そして足音が聞こえる。どこか湿ったような音がする。声がして20秒も経たないうちに暗闇から出てきた。4本の手がついており、黒い表面はどこか湿っていて顔はグロテスクだ。好みじゃないな。


「クニサキさん、そいつはソードマンです。気を付けてください!」


ありがとう。その言葉だけで十分だ。俺は人を撃つよりかは楽な思いでそいつを「レ」で撃った。たちまちソードマンの体は蜂の巣になりその場に倒れた。


「クニサキさん、その魔法は・・・・」


「説明は後だ。素材は集めた。ズラかるぞ!その子供を連れて行け!」


「えっ、いいんですか?」


「置いて行ったら可哀想だからな。ちゃんと世話は見ろよ?」


会話の後に更に声が聞こえてきた。この分だと囲まれている。


「ミルシア、先に行け!ここは俺が食いとめる!」


「クニサキさんはどうするんですか!?」


「後で必ず追い付く!だから行け!」


最後の一言で決意を固めたようだ。この子にはいつもダメ押しで一言言わないといけない。そこが彼女の強みなのかもしれないが。


「ご無事で!?」


ダイヤウルフの子供を連れて、走っていく。俺はもう振り返ってはおらずまっすぐに銃口を声のする方向に向けている。


「あの王女様も面倒なことを押し付けてくれたな・・・」


こんなことなら多少面倒でも王国の港に行けばよかったかもしれない。だがそれは後の祭りだ。


「来いよ。クソ野郎」


俺の目的はただ一つ。ソードマンのぶっ倒し時間を稼ぎ、ダンジョンを出る。それが今の俺の目標だ。

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