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間章 クルス王国の戦い

今回はシリアス多めです。

「右の槍隊、かかれぇ!」


大柄の体をし派手な鎧を身にまとった男が指示を飛ばす。兵たちはそれに不満を漏らすことなく敵に突っ込んで行く。

一番槍を受け持った兵士達は最高の栄誉と共に槍に貫かれて死んでいく。その屍を乗り越えて他の兵たちが我先にと敵陣へ食い込んで行く。


「うおぉぉ!!」


剣で敵の兵士を切った兵士はまた違う兵士に喉を切られて絶命する。そんな乱戦の中で小さな爆発が起きる。


「魔術師だ!皆、注意しろ!」


その言葉とは裏腹に敵味方関係無しに爆発へと飲まれていく。おそらく誰一人としてそれを咎める人はいない。当然のことなのだ。兵士は消耗品というのはこの世界の戦争の常識であるからだ。

だからこそそれを咎めない。それは”栄誉”として片付けられる。


「弓隊、撃てぇ!」


兵士達の背後から弓兵が姿を現す。一斉に弓をひき、それに向けて矢を放った。敵の兵士が仕留め切れたが魔術師は風の魔法で弓を防いでいたので当たらなかった。


「しぶとい!」


男が叫ぶ。しかし戦局に効果はあったようで敵は退却した。


「やりましたね。ボルギ将軍」


部下がボルギと呼ばれた大柄の男に声をかける。


「そうだな。我がクルスの祖国を土足で踏込み、あまつさえ汚すとは・・・・帝国の奴らには相応の償いをしてもらわなくてはならないな。全軍に命令を下せ、今夜で夜襲をかけて丘を奪還する」


ボルギはクルス王国でも五本の指に入る名将であった。それを裏付ける様に彼が実際に指揮した部隊の先生は着実に帝国をクルスの大地から追い出し始めていた。


「了解しました」


部下が去っていった後に小さく笑みを浮かべる。


「確かに最初は奇襲で損害を被ったがもうそうはさせん。所詮帝国の連中は奇襲でしかこちらに被害を与えれていない。そんな奴らに我が王国が倒せるとは思わんな」


ボルギはそう判断した。帝国兵は数こそ王国の兵士達に勝っているが質に関しては断然こちらの方が上だ。

数で負けるなら質で勝負する。それが戦争を勝って生き残るための手段だ。


「将軍、準備が整いいました。突撃用の騎兵、歩兵共に士気も十分です」


「そうか。ここの兵士はいい人材ばかりだ」


「お褒めに預かり光栄です」


ボルギの言葉に男___この部隊を指揮する司令官は微笑んだ。おそらく心の中でいい部下を持ったとでも思っているのだろう。だからこそ最小限の犠牲で済まさなければならない。


「では行くぞ、気を抜くな」


「はい」


こうしてクルス王国軍は進撃した。






一方、戦場となっている場所の西側に位置する山で何かが光った。


「ああ、取り乱しちゃってまぁ」


木の中で双眼鏡で戦況を見守っていた人物は小さく失望の声を上げた。


「やっぱり、まだ駄目だったか。帰ったらもう少し鍛えないといけないな」


その言葉に答える声があった。


「まだここに居たんですか?危ないから下がって下さいとお願いしたはずです」


「そんな事、今更じゃない?第一おもしろいじゃん」


「そんな事を言えるのは世界でもあなただけでしょう」


「ひどいなぁ、もっといるでしょう」


とても戦場にいるとはいえない雰囲気が二人の会話の中にはあった。


「そんな事よりもここに来たって事は報告があるんでしょ?」


「はい、クルス王国軍はどうやら夜襲をかける模様です」


すると黒い人物は一層目を輝かせた。


「へぇ、面白いことやるね。それで?帝国軍はどうするって?」


「魔術師部隊は準備完了していますが歩兵部隊はさっきの戦いで消耗、再編中でもうしばらくかかるそうです」


それを聞くと黒い人物は双眼鏡をしまいこんで木から飛び降りた」


「それはまずいなぁ、魔術師部隊だけであの数の軍勢を相手にするのは少しばかり無謀じゃない?」


魔術師は魔法を使って敵に大ダメージを与えることが出来るが魔法の詠唱に時間がかかる為に必ず護衛の歩兵が付かないといけないのだ。だからこそ歩兵がいなければ魔術師は危険なリスク付きの的だった。


「だからこそ”行くよ”」


「分かりました。そういうと思って準備は完了しております」


「話が早いね。じゃ、行くか」


「はい」


二人の影は山の暗闇に溶けて行った。





「そろそろだな」


全員が丘を上がったのを見る。どうやら全員上がったようだ。


「では行くぞ」


もう一度皆を確認する。顔に迷いは無かった。むしろ勝利への熱い闘志が見える。


「全軍、前進!」


高らかに宣言すると同時に騎兵が一斉に山を下った。歩兵は脚が遅いがそれでも必死に騎兵に連いていっている。


「弓兵、撃て!」


指示と共に弓兵が一斉に援護射撃をする。詠唱をしていた魔術師が攻撃魔法の詠唱を止めて、自身を守る為に防御魔法の詠唱に入った。計画通りだ。


「弓兵はそのまま援護射撃を続けろ、騎兵と歩兵はそのまま突撃!」


見たところ、攻撃準備が整っているのは魔術師の部隊だけらしい。魔術師め、逃げ足だけは誰よりも早いのにこういうときは恐ろしく早いのだ。だが弓兵に足止めされている魔術師なんて今はまったくの脅威でもない。


「意外にもあっけなかったな」


このような一方的な戦いを見てしまうとどうしてもそんな事が口に出てしまう。確かに油断は禁物だがこれぐらいは許されてもいい程に拍子抜けなのだ。

このまま余裕で丘を占拠できる。ついでに丘の下もととっておこうと欲が出始めたその時だった。



何かが空で光った。



「何だ?あれは・・・?」


空が光ってる。魔法なら分かるがあんなに長く続く光魔法など見たことが無い。どこだ、どこにいる。


「魔術師がいるぞ!探せ!」


弓兵が率先して探すがいない。一体どこにいるんだ。そしてまた更に不可解な事が起こった。


「音がするぞ。何の音だ」


皆が見渡す。正体不明の光魔法は未だに続いている。そして原因不明の音に誰かが気付いた。


「お・・・おい・・・あれ・・・・」



指さした方向を見る。そこには何かが飛んでいた。ドラゴンでは無い。風圧を辺りに撒き散らしながら進んで切る。あれは虫だろうか?


「何かは知らんが・・・・撃ち落とせ!」


あれが生き物だろうが何だろうが関係ない。撃ち落とせればそれでいい。何の障害にもなりはしないのだから。


「分かりました。撃・・「ドォン!」・・!?」


指示を飛ばそうとした時に弓兵の集団が突如爆発した。これは魔術師では無い、あの怪物がやったわけでは無い。そうならばとっきに自分達が気付くはずだ。


「一体どこからだ!」


そんな事は誰にもわからなかった。分かるはずが無い。更に爆発は起き、弓兵部隊や騎兵、歩兵部隊に被害が及んでいく。部隊は混乱状態で既に止める術はない。


「ひぃぃぃぃ!!」


「貴様、逃げずに戦え!」


「無理だよ、あんな奴!」


ボルギに対しての敬語も忘れているほどに彼は慌てていた。腕を無理やり振りほどくと逃げて行った。


「腰抜けが!」


未だ戦っている味方を置いて逃げるヤツだ。ああいうやつは長くは生きられない。どこかで野たれ死ぬだろう。そんな事よりも正体不明の攻撃に対して考えなければならない。だからこそ彼は判断を誤った。

目の前の”敵”から意識が逸れてしまったのだ。彼らが注意を爆発に注意している間にゆっくりと旋回する。


「・・・?何だ、頭を向けて」


彼らは攻撃をした来ないことからドラゴンではなく、虫だと勘違いしたことで大きな音を出す無害な虫だと勝手に思ってしまい、注意から逸らしたのだ。それが彼らの命取りとなった。


ウィィィィ


ゆっくりと”ソレ”が回り出す。彼らはまた注意を引くだけかと思ったが次の音と共にそれが彼らが聞く最後の音となった。


「・・・・・・・」


それはしゃべらない。だが体は灰色の”ソレ”には名前があった。


AH-1F「コブラ」


それが”ソレ”の名前だった。

少しだけ回収しました。彼らもまた物語に大きく絡んでくるのでそれまで待っといてください。

次回はまたの日常編です。シリアスじゃないよ。

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