メイドは買い物に行く
俺が瓦礫の山の雪崩に巻き込まれてから一週間がたった。あれから少しだけ仕事に慣れてきた。
お嬢様やメイド長さんに周りのメイドさんからも使えるヤツと思われ始めていた。しかしその分、荷物の崩落事故に巻き込まれるメイドの第一位も獲得している。
(自分で言って何だけどかなり不名誉な称号だな。これ)
自分にしても嫌な称号だがそれに見合うくらい雪崩を喰らっているのだ。アリシアさんにも苦笑されてしまった。どうすんだよ、これ。他の人たちにも危ないから掃除の時には滅多に近寄ってもらえないんだぞ!
「クニサキさんっ!こっちを手伝ってください!」
「今すぐに向かいます!」
例えどんな怪我を負おうとも何としてもお嬢様には聞かないといけない。それがあの図面だ。
あれがどんなものなのかは大体見当がつく。アレだ。この世界には存在しないもののはずだった。もしかしたら今の現状を一瞬で覆してしまうようなそんな代物だ。
だからこそこの図面の入手ロートを何としても聞かなくてはならないのだ。
「そこのものを持ってもらえますか?」
「はい」
高く積み上げられた洗濯物を落とさないようにゆっくりと持ち上げる。だが中身が男の俺にはかなりきついものだ。全てが女物だからだ。お嬢様の旦那様がはやく帰ってきてくれるように祈っておこう。
おっと、鼻から赤い液体が垂れてきそうだ。危ない、危ない。
「大丈夫ですか?」
「いえ、心配しないでください。」
「そうですか」
鼻血が出かかったことを何とか誤魔化して屋敷の洗濯室に向かおうとした時に俺はふとお嬢様の部屋を見た。いつも部屋のカーテンはしまっているがあの部屋で一体何をしているのか、図面関係なしにやっぱり気になる。特に私生活とか。ガチの引きこもりみたいな生活はさすがに・・・・・・・・してそうだ。
一方、その頃 メリアの部屋にて
「くそぉーーー!素材が足りない!」
絶賛、愚痴を吐いております。動きやすい服装に着替え、貴族の娘だとは思えないような服装で工作をしていた。しかしとあるものを作っている最中に肝心の素材が無くなってしまったのだった。
「困ったなぁ、あともう少しで完成するのに・・・・」
世の中、時に残酷だ。誰しも経験はあるだろう。作りかけのものであと少しと言う場面で重要なパーツが無くなって探したけど見つからなくて諦めてしまった経験が。彼女は今、まさにその状況だ。
「無いかな~~」
机の下を探す。無い。
「出て来て~~」
ベッドの下を探す。無い。
「お願~~~い」
彼女の必死の思いを込めて至る所を探した。やはり無い。
「ですよね~~」
そういうとガクッと肩を落とす。そして意を決してドアを開けた。
「ねぇ~~ちょっといいかしら?」
「はい、何でしょうか?」
外で待機していたメイド長。彼女はいつもメリアの身の回りの物を調達する係についている。たいていのものなら準備してくれる。
「外で買って来てほしいものが・・・・」
「外!?なりませんお嬢様!」
この反応の通りメイド長はメリアが外に出るのを反対している。実は過去に一度大変な事があったからなのだがそれは正直あまり触れたくないのでやめにする。
「そこを何とか・・・・」
「いくらお嬢様の頼みごとでも旦那様と奥様に外に出すなと言いつけられていますので外に出すわけにはいかないのです」
メイド長としては外から来た国東もぎりぎりのラインだったのだ。だが彼女は中々に優秀で盗みもしないので彼女は大丈夫だと胸をなで下ろしていたのだ。それなのに今度は外に出すとは完全に約束を破っている。
だからこそ出せないのだ。
「もうケチ!」
「いくらでもおっしゃてください」
メリアは舌を出した後に強く扉を閉めた。勢いでやってしまったがこれからどうしようと思う。
別に完成を急かされている訳では無い。だが彼女にはどうしてもやらないといけない計画があるのだ。まもなく一時帰宅をしてくる親が帰ってきたと同時にその計画を実行に移さないといけない。
今、しているものをした後に練習も入れればあまり時間が無い。だからこそここでの時間消費は大きなタイムロスだ。
「こうなったら」
時間が無い彼女は強硬策をすることにした。
「ありがとうございます。助かりました」
「いえいえ、お安い御用ですよ。それでは」
洗濯物を何とか洗濯室に運び終えて、メイドさんと別れた後に俺は次の頼まれた仕事をするために買い物に行こうとした時に突然、体を掴まれた。
「ちょっと来て!!」
「えっ、ちょっと!」
誰かと思うとお嬢様だった。
「お嬢様、何をして・・・」
「黙って!」
口を塞がれた。言葉を最後まで言わせてください。あと苦しい。
彼女の視線はおしゃべりをしながら歩いてくるメイドさん達に注がれていた。メイドさん達はこちらを見つけることなく去っていった。それに安堵したメリアはゆっくりと国東の口から手を放した。
「ごめんなさいね。急に」
「い、いえ」
驚きはしたが大したことではなかったので大丈夫だった。それよりもなぜこんな所にお嬢様がいるのと隠れているのかそしてなぜ自分を連れ込んだかが気になって仕方が無かった。
「話があるの・・・・実は町まで連れてってもらいたいのよ」
「えっ!」
俺は驚いた。正確に言えばなぜそんな事を言うのかをあまり理解したくなかった。メイド長から絶対街へ出すなと事前に言われていたが俺自身はそんな事は絶対にないと高を括って聞き流していたがまさかこんなことになるとは思わなかった。そんなときの俺を殴りたい。
「でも・・・・」
「渋るわね。う~ん、そうだ!もし街で買い物に付き合ってくれたら私の部屋を見せてあげる!」
「へ、部屋ですか!?」
それは自分にとってもリスクに見合う価値がる。
「そうよ。特別だからね」
それなら行くしかない。見つかったらどんな事をメイド長に言われるか、考えるだけでも恐ろしいがそれだけの価値があの部屋にはあると信じたい。
「分かりました。いいでしょう。丁度、行くところでしたしね」
「ほんと!?ありがとう!」
抱き着かれた。年頃の娘に抱き着いてくることはあまりなかったので顔が真っ赤になる女に弱い国東であった。
ということで絶賛、女の子と買い物中の国東である。何とか屋敷を抜け出した俺は第一段階は何とかなったと安堵の息を内心吐いていた。
そんな事を毛ほども感じていない当の本人は隣で「この町も見ないうちに変わったわねぇ~~」などと呟いている。何でそんなに能天気で入られるんですか?
「こっちの買い物は終わりましたがお嬢様はどこに行きたいんですか?」
「もっと自然でいいわよ。メリアって呼んでもいいから」
他人から見れば家族か何かと思うがこっちは雇い主とメイドだ。主従関係ははっきりしとくべくだ。
「そんなわけにはいきませんので」
「固いわねぇ。あなたは外国人なんだからそんなことは気にしないでいいわよ」
軽いなぁ、ある意味尊敬します。
「それで何を買いたいんですか?」
女の子だから服関係かと思ったが違った。俺は少し舐めていた。技術者という人種を。
「実は作りたいものがあってそれの素材が実はついさっき切れちゃってね。頼もうかと思ったんだけど彼女
ママとパパの言いつけを守っていてね、だから買ってくれないし買わせてもくれないの」
それが苦労しただろうがそれを得る為にこうまでして脱走してくるとは。すみませんお嬢様。少し技術者舐めていました。
「それでね。ちょっと素材が特殊だから場所も特殊なのよね」
そうして立ち止った建物に俺はうわぁと言ってしまった。絶対、女性二人が行く場所ではないと思う。
そこに堂々と向かう彼女に底知れず尊敬した俺であった。
皆さん、お元気ですか。実は今日、インフルエンザの予防注射をしてきました。
皆さんもインフルエンザに気を付けてお元気にお過ごしください。