メイドの仕事は大変です
遅れてすいません。
「ああ、そういう事だ。だから遅くなる。そっちは任せたぞ」
『はい。お任せください、それにしてもクニサキさんがメイド・・・・』
それ以降は声が小さくなったが明らかに笑っている事が分かる。聞こえていますよ、ミルシアちゃん。
無線を切って息を吐いた。明日からまた忙しくなる。港の方には今日中に行って話を通してきたから「くにさき」が怪しい物体だとは一応思われなくなっていた。(市民なんて知らん)
心配事は一応なくなったので安心して仕事をすることが出来る。
「取りあえず寝よう」
難しい事は明日考えればいい、難しい事は後回しにする国東であった。
「国東さんは私の後に連いてきてください。大丈夫ですよ」
メイド長さんは今は自分の部下であるのにまるで客のように扱ってくる。やっぱり無理やり連れてきたことを後悔しているのだろうか。
「気にしないですから。それに自分はあなたの部下です。好きなように言ってください」
勇気を出して行った。たいていはこんなことを言うと鬼なような事を言ってくる人がいるとどこかで聞いた事である。メイド長さんもそんな事かと思って身構えていたら、にっこりと彼女は苦笑しながら否定した。
「私にも少し後ろめたさがあります。自分を罰するためにもこれは譲れません」
それを言われるともう何も言い返せれなかった。彼女自身も負い目を感じているのだろう。
「ではここからは私の指示に従ってくださいね」
扉の前でそう言われて緊張する。おそらくお嬢様がいるからだろう。余計に力が入ってしまった。
そういえば説明し忘れていたが俺が”お嬢様”と呼んでいる人物の本名はメリア・スカーレットと言う。
本人の性格は非常に明るくて、使用人たちも身分関係なしに話している。年頃もあってか元気だ。これからお世話をする身としてはありがたいことだ。
(しかしこの服はどうにかできなかったのか・・・・・)
内心、残念がる。出来る限り男物に近いものにしてほしいと頼んだが完全なるメイド服だ。
俺にこれを着ろということか。世の中は残酷だ。
「失礼します」
「し、失礼します」
そんな事を思っていたらいきなリ行くので慌てながら連いていく。
「大丈夫わよ、そちらの方は昨日の新人さんね。名前は?」
「はい、国東 信吾といいます」
自分で言っといて何だがつい男の名前を言ってしまった。これを機に偽名を考えた方がいいかもしれない。
内心、怪しまれるかと思ったが満面の笑顔で
「クニサキ シンゴね。いい名前だわ。よろしくね」
「はいっ!」
なぜかは知らないが言いようのない緊張がある。似たような感じが前にもあったな。なんだっけ
そうだ、自衛隊の訓練学校でいつも教官や先輩の目があり、ソワソワする感じと凄い似ている。何でだろうか?
ていうか、ばれないのか。肝を冷やしたぞ。
「さっそくだけどお願いしますわ」
「はい、クニサキさんはこちらをお願いします」
「はいっ」
最初の仕事はお嬢様の部屋の掃除からだった。何だ、今回は楽できそうだな。輸送関係の仕事も理由があるからしなくていいから結構いい物件・・・・
数分後
コロッ
「危なーい!!」
俺はヘッドスライディングで両手で落ちてきたすごく高そうな壺をキャッチした。
「あ、危ない・・・・」
このところ、そこらかしこから物が落ちてきている。トロフィーやら壺やら工具やら・・・・うん、工具?
「気にしないようにしよう」
とりあえずかなり散らかっている。これはもしかするとお嬢様は元の世界で最近、増えていたとある人物達の仲間入りが出来るかもしれない。だがそんな事には俺がさせない。
しかしどうしてまたこんなに。まさか一日でなったんじゃないだろうな。全身汗だくの俺にこっそりとメイド長さんが教えてくれた。
「実はお嬢様はかなりの籠り症でして・・・・・なかなか外に出ないんですよ。だからこうして期間を開けて来ているんですがかなり荒れていて困ったものです」
やはりそうだったか。相当やばいレベルだよこれは。でもやっぱり誰も言えないんだよなぁ。
身分って怖い。自衛隊でもそうだったが目上の人には頭が上がらないのがこの世の中である。元の世界の現代世界ではほとんど無くなった貴族という階級がこの世界にはあるのだ。特にそういう事にはこの世界の方が敏感なんだろう。
「まぁ、それでもやるしか無いですから頑張って・・・・うぉ!?」
床に散らばっている本を引き抜いて本棚に戻そうとすると引き抜いたところを基点にして物の雪崩が起こった。一番近くにいた俺は躱すどころか雪崩を見ることも出来ずに雪崩に呑みこまれた。
「嘘ォォ!?」
そんな言葉を言いながら呑み込まれていった国東の姿は一瞬で見えなくなった。埃が舞い、周りの者がせき込む。
「クニサキさん!?」
埃が晴れても姿が見えない国東に何かがあったかもしれないとメイド長は心配になったが直後に瓦礫の山からもぞもぞと何かが出てきたので安心する。
しかし巻き込まれた当の本人はまったくの無事ではなかった。
「痛い!?」
「我慢してください。すぐに終わりますから」
俺は瓦礫の雪崩に巻き込まれた後に大事を取って屋敷の治療室に来ていた。俺は嫌がったのだがメイド長とお嬢様に心配されてしかたなく行くことにした。
ちなみに今、治療してくれているのはここのメイドであり、医者でもある彼女はここの治療室でいつも怪我をしているメイドさんを治療しているようだ。本来なら彼女もここの夫婦二人といっしょに行くことになっていたが娘の何があるかもしれないからここに残されてというのだ。
さすが分かっていらっしゃる。でも正確に言えば怪我をしたのは娘じゃなくて、娘の部屋の片づけをするメイドだったけどな。
「しかしあんなになるまで籠って何をしているんだろう?」
素朴な疑問だった。それに対してアリシアはくすりと笑いながら教えてくれた。
「あなたは外国から来たって言いましたよね。なら知らないのも無理ないですがこの家は有名な技術者の家系みたいでお嬢様もその血を受け継いでいるみたいでして部屋の中で何やら作っているみたいですよ」
へぇ、技術者の家系か。どんなものを作っているんだろう?ちょっと気になるな。でもさすがに見せてはくれないだろう。一日しか来ていないメイドにいきなりそんな所まで見せてくれるわけがない。
「はい、終わりましたよ」
アリシアは道具を片付けながらそう言った。俺は頬をさすりながら傷口を見た。どうやら大丈夫の様だ。
「まずは一から始めていこうかな」
俺的にもメリアお嬢様がどんなものを作っているかは気になる。もしかしたらロックドラゴンなどの生き物を倒せる改良を施せるヒントがあるのかもしれない。
簡単に言えば興味があるだ。俺がメイドでこの屋敷で働いている内に少しづつでもいいからお嬢様に興味を持たせられるようなことを積み重ねていればいつかは見せてもらえるはずだ。
「そのためにも頑張るか・・・・うん?」
背筋を伸ばした時にメイド服に挟まっていた髪がパサッと落ちてきた。何かなと拾ってみた。
「・・・・・これは・・・・」
それを凝視した。なぜこれがあると国東は思う。
前言撤回だ。お嬢様にはどうしても聞かなくてはならなかった。これをどこで手に入れたのかと。
「そのためにもさっき決意したよりも頑張らないとな!」
もう一度気合をを入れ直して再び、業務に戻ろうと廊下を歩いて行った。なぜかは知らないが人は何か見つけると怪我の痛みが抜けるらしい。俺がそれに気付いたのは業務に戻ってすぐの時だった。
テストが一週間あって中々時間が取れませんでしたがこれから遅れを取り戻していきたいと思います。