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元自衛官は届け物をする前に拉致されたようです

全身震えながら、俺は艦内に入った。暖房が俺の肌に温かさを取り戻させてくれる。暖房って偉大。


「ふぅ~~」


「もうまもなくですね」


その時に警報が鳴った。俺はお茶を入れてゆっくりとCICに入った。なぜ俺がここまでゆっくりしているかというと警報の理由が分かっているからだ。こういう事は既に二回経験している。


「やっぱりか・・・・」


艦外のカメラから「くにさき」周辺の漁船や交易船が逃げようとしているのが分かる。更には港から何事かと人だかりが出来ていた。


「これは無理そうだな。ミルシア、ちょっと留守を頼む」


「えっ?」


これだけ人だかりが居ると逆に面倒だ。それに下手に港に入港して慌てている漁船や交易船に当たったりしたら目も当てられない。それらを考えると「くにさき」を一旦、港から遠ざけて近くから目立ちにくいボートで行くしかない。


「でも私が残る必要性があるんですか?」


「分かってないな。もしものことがあった時にまずいでしょ。予備としてここに残ってもらってついでに警備もしてもらう。その間に俺はボートで乗り込んでここの責任者と話をつけてくるから」


もう一つ理由があるけれどそれ言ったら絶対連いてきちゃいそうだから言わないでおこう。


「じゃあ、また後で会おう。何かあったら連絡するから」


「分かりました。気を付けてくださいね」


「分かってる。ロックドラゴンの保存場所も見ておいて冷凍石がなくなっていたら足しといて」


それだけ伝えると最低限の装備だけ準備すると「くにさき」の内火艇で出発した。どうやら向こうは「くにさき」の船体の大きさに気を取られていてこちらのちっぽけな内火艇など目に入らぬらしい。


「それにしても寒い。早くコートを買わないと」


ミルシアを連れてこなかった三つ目の理由はミルシアは女性だから仕方ないのかもしれないが服選びがものすごく長い。コートがある服屋でコート選びに一時間もかけるようなら大幅なタイムロスが生じることは間違いない。

時間に厳しい自衛隊の中で過ごしていたせいか余計にそう感じてしまう。


「しかし来ないのならミルシアのコートを借りればよかった」


女性の持ち物からかそういう選択肢は遠ざけていたが今になって後悔する国東であった。




「くにさき」艦内にて


「行きましたね・・・・」


寒そうな格好で内火艇で港へと近づいている国東を見送った後にミルシアは黙って格納庫へと急ぐ。そして彼女が共和国内で使っていた愛用のトラックの元へと急ぐ。

彼女は「くにさき」内にある監視カメラに注意しながらトラックの扉を開けた。


「クゥ~~ン」


「ほら餌ですよ」


中にいたのはダイヤウルフの子供だ。それは以前助けだしたダイヤウルフの子供だった。あの後に貰い手が当然見つかるはずもなく。クニサキに相談したら相談したらでこう言われた。


『何食べるの?俺、世話しないから戻してきなさい』


お母さんみたいなことを言われて世話を拒否された。しかしこのまま見捨ててしまっては怪我をしているこの子はまず生き残れないだろう。誰よりもかわいい動物に甘いミルシアはその判断ができなかった。

何のでここで隠れて餌を食べさせて世話をしている。気になって国東も来たとはあったが


『もしもここに来て何かを見たらどうなっているか分かりますよね?』


『は、はいぃ!』


と半場恐喝に近い形で国東を来させないことには成功した。


「よーしよし」


ダイヤウルフの食べている姿に笑みを隠し切れないミルシアであった。





「ご利用ありがとうございました!」


店員さんの爽やかなお礼を聞きながら俺は服屋を出た。うん、暖かい。やっぱり服は偉大だな。

ちなみに内火艇は上手く隠しておいた。昼に移動すると確実に見つかるので夜になるか「くにさき」が入港した時に回収するとしよう。

そして港の管理区まで歩こうとした時に後ろから手を伸ばされた。


「ちょっといいかしら?」


「えっ?」


危なかった。手がかけられた瞬間に銃を抜きそうになった。危なかった。だが状況はちょいとまずい何の変哲もない自分に声をかけてきたということは自分が内火艇に乗ってきたところを見られたという事か。


「ここじゃ、目立つ。あなたもそれは望まないでしょう?だったら黙って連いてきなさい」


「え、ちょっと」


まずい。引き離そうとしても結構な力だ。元の世界の俺だったら強引にも振りほどけたかもしれないが今の体は違う。能力のお蔭でそれに近い形は保っているが能力を解放していないときは力は元の体に比べればかなり落ちる。


「ここに入って」


強引に連れ込まれたのは馬車の中だった。あれ、俺の頭がおかしくなったのかな。もし違わなかったら


「俺、拉致られた・・・・?」


生まれてこの方、そんな最悪な事に出会っていないがまさか異世界でそんな事になるとは夢にも思っていなかった。


「大変申し訳ありません」


俺を拉致った女性は馬車に乗り込むなり謝ってきた。そして未だに状況がどうなっているか分かっていない____分かりたくない俺はおろおろする。


「ええっと、とりあえず状況説明をお願いできますか?」


「はい、それでは説明します」


ようやく落ち着いてきた俺はどうしてこうなったかの説明を求めた。


「実はですね。私はとある貴族の家でメイド長をやっている者でして・・・」


貴族と来たか・・・・何かやったかな?


「それで私に何が御用がありますか・・・?」


すると実に言いにくそうにしながら私に言った。


「実は今、屋敷の旦那様と奥様が王国と帝国との戦争で兵務に努めておりましてそれに同行したメイドも含めると今はお嬢様と私しかいない状況なのです」


待てよ。何か大体話が読めてきたぞ。


「名も知らないあなたに大変申し訳ないですが屋敷でメイドをしていただくことは・・・・」


「すいません。俺___いや、私が何でそれに選ばれたんですか!?」


どうしてメイドをすることになるんだ!?確かに女だけども。それでも街のそこらじゅうに若い娘がいるだろう。彼女が今している事は異国に来てうろうろしている外国人旅行者に現地人差し置いて高級ホテルの従業員やれっていう話だぞ。


「それはお嬢様がどうせ雇うなら黒髪の美人女性がいいと」


「オーマイガー」


ばっちり条件当てはまっているじゃないか。美人かどうかは知らんけれど少なくとも黒髪の女性という面では当てはまっている。


「それでどれくらいの期間で帰れるんですか?」


「分かりません。お嬢様に気に入ってもらえるかどうかで決まりますから」


出来れば決まらないことを願っています。そう願っていると馬車が止まった。

どうやら運命の時間が来たらしい。ジャッジはノーでお願いします。


「お嬢様は気まぐれなのでどうか粗相のないようにお願いします」


「大丈夫です」


確かにノーにしてもらいたいがさすがにそこまでしてノーにされたくはない。初見の印象は良くしておきたいのが俺の悪い癖である。

馬車が止まった場所には一人の少女と数人の兵士がいた。あれもしかして私兵ですか。

ワ―ヤバイ~な~~話が違うな~~


「あなたが例のメイド候補?」


少女が口を開く。あれ、伝達早くない?メイド長さんいつやったの?

何で目を背けて、眼鏡をかけ直しているの?地味に光に反射して怖いよ。


「そ、そうです」


当たり触りのない言葉を選ぶ。


「ふ~~ん」


そのまま後ろに行かれた。俺は黙って立ち尽くしていると後ろに重さが急に加わった。彼女が背中にのったのだ。何でかは次の言葉で分かった。


「気に入ったわ!私の好みにピッタリ!私の専属メイドになって!」


後ろで暴れている少女の言葉はまったく耳に入っていなかった。ミルシアを待たせるからではない。また自分の男としての尊厳の一つが無くなることになることに頭の中で悲鳴を上げて軽くパニックになっている自分でだった。

ちなみにメイド長は後ろで怪しく笑っていた。だから怖いです。メイド長さん。

二章の物語はメイド編です。主人公が慌てまくりますが温かく見たやって下さい。

二章では懐かしのものが登場します。

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