ようこそ、我が写真部へ
「すみません、助けてもらっただけじゃなく、ここで介抱までしてもらってありがとうござます 須藤先輩」
俺が先輩にお礼を言うと、彼女は微笑んだ。
「いやこちらこそ、謝らなくては、あの時、君が魔道書のページを読むのを止められなかった、すまなかったね、それと、これ」
なんだろう、こちらがお礼する立場なのに、先輩は、あの時のことを、俺に謝罪をし、その後、制服のブレーザーのポケットから、俺の携帯を取り出してこちらに差し出す。
「あ、俺の携帯……」
女性つまりは食人鬼に最初に出会ったときに、落としてしまった俺の携帯電話だ、すっかり、忘れていた、携帯を受け取り、着信履歴を見ると
何件か自宅から掛かって来ていたようだ。
「しまった……先輩、淳子さん、すみません、ちょっと電話してきます 自宅から掛かってきたみたいで……」
「ふふふ、そこら辺なら心配要らないよ、望月君」
どうやら、俺が魔道書のページを読んで、気絶している間に、先輩が俺の自宅に連絡をしていてくれたようだった。
「まぁ、とりえず、君の母親には、写真部の歓迎会で、はしゃぎすぎて寝てしまっていると伝えてあるから」
「俺は、小学生ですか、それに、まだ、入部届けを出していませんけど? あっそだ」
俺は、自分のブレーザーのポケットから、学校で、誤って落としてしまった栞を先輩に差し出した。
「すみせん、ワザとではなかったんですけど……」
「ああ、これ私の栞ね」
先輩は、栞を受け取り、表紙を見て、驚いた表情を見せた。
「え……」
先輩の表情を見てか、淳子さんも、栞に覗き込む。
「あちゃ~これは――」
俺は、2人の戸惑いが分からず、思わず質問を投げかけてしまう。
「えっと……何かマズイ事があったんです?」
俺の問いかけに、先輩は栞の表面をこちらに見せた、栞のしたの方に、3行ほど書かれてた、あの意味のわからない文字が1つ消えている。
「あの……えっと……」
その時、先輩に両肩を掴まれ、すごい剣幕で俺に問いかけてくる。
「望月君! 君は、魔術を使ったのか!?」
先輩は、いつものチャラけてる態度ではない……が、当の俺自身には魔術を使った覚えがない……はず。
「ちょ、ちょっと! 先輩、魔術なんて俺使った記憶ないですよ!」
「本当に覚えはないのか!? よく思い出して!!」
俺は先輩の質問に1つの情景が思い浮かぶ。
「…………あ……」
そう、食人鬼に拉致される前のことを思い出す。
「そ…そういえば、最初に襲われた時に、首を絞められて、それで、あの時、手が光ったような……」
「ああ、なんてことだ……淳子姉」
先輩は、焦った表情で淳子さんに助けを求める、淳子さんは、タバコを1本咥え、火を点け、吸う込むと、真剣な顔付きで俺に話しかける。
「ふぅ……、望月君、これは困ったことになったよ」
「え……っとどうこうとなんですか?」
淳子さんは話を続ける。
「君が、ただ拉致された被害者で、魔術を見た目撃者だったなら良かったんだ……が、魔術を、意図的ではないとはいえ、使ってしまったんだ、これは、また話が違う」
「話が違うってなんでですか?」
張り詰めた空気が部屋全体を覆う、淳子さんは一口タバコを吸い、ひと呼吸おいてから続ける。
「つまりはね、望月君、魔術を使ってしまったことは、とある組織に狙われる可能性があるんだよ」
「組織?」
そこへ、先輩が会話に割って入ってきた。
「”Willard Hunt” 魔術師狩りの連中のことだよ」
「魔術師狩り……」
先輩は俺の肩を掴んでいた手を離し、真面目な表情で俺の顔見て話す。
「望月君、どうやって、魔術を使うと思う?」
その質問に、俺は少し考えたが、答えが見つかるわけもない、第一に魔術などというものを見たはのは今日が初めてなわけだし、どう使うかと言われてもわかるわけがないのだ。
「………わかりません」
「魔術というのはね、道具とイメージ、魔術式が合っていれば誰にでも使えてしまうんだ。」
誰にでも使える、その言葉に、俺は疑問を持つ。
「誰にでも使えるって、そんなに便利なものなんですか? 俺は今日初めて知りましたよ」
「君も見ただろう、君を襲った化物を倒してしまった魔術の力を」
確かに、先輩の言うとおりだ、仮にも男である俺が、拉致される時にても足も出なかった相手を、彼女はあっさりと倒してしまった事実を認識するが、なぜ、一般的に魔術という便利な力が世間に浸透していなのは
どういうことだろう。
「それでは、なんで、魔術は世間一般に広まっていなかったのですか? これだけ便利な力なら誰も使いたがるはずです」
「便利すぎるが故に、広められては困る連中がいるからだよ、今は、科学が世界で浸透しいる時代だ、そこに魔術なる摩訶不思議なものが浸透する、すると、今までの、利権や兵器などあらゆるものが、崩壊してしまう、だから、魔術を恐る人は多いし、魔術は科学と違ってリスクが伴うことが大半だ、代償を背負ってまで使おうとする奴など、そう多くは居まいが、それでもあの時の食人鬼のように、復讐のために使うこと輩もいる
魔術の乱用を防ぐために、私たちは魔術師は、”魔術協会”に登録している、そして、協会に登録していないモグリの魔術師を狩る者を”魔術師狩り”と言うんだ」
急に話が大きくなってしまったが、先輩の話を要約すると、誤って魔術を使ってしまった俺は、このままではモグリの魔術師として処分の対象になってしまうとのことだ。 なら、その協会とやらに黙っていればいいのだろう……っと一般の人間なら考えるだろうが、魔術を使った人間は、一般人には感知できないが特殊な匂い的なものが体から発してしまうらしく、それが、未登録の魔術師の目印になってしまうとのことだ。
「じゃあ、俺はどうすればいいんですか―」
途方に暮れるしかない、そう俺はただ、ゲームをする時間が欲しかっただけなのに、ちょっとしたことから変な事件に巻き込まれてこんなことになっている。 失望している俺に先輩が一言、そう一言を発する。
「よし! それなら望月君、私のパートナーになりなさい」
その言葉に、淳子さんはガタリと音を立てて椅子から立ち上がり、先輩に怒鳴る。
「恵美! 何を勝手に! パートナーになるってことは、彼が、危険な探索や討伐に駆り出すってことになるんだよ!」
淳子さんの言葉に、先輩はいつものように答えた。
「だからだよ、淳子姉、彼も魔術協会に登録してしまえば、少なくとも、魔術師狩りの目標からは外れる」
「ふむ……」
淳子さんは少し考えている様子だったが、俺の方をチラリと見て、先輩に話しかける。
「恵美、登録するのはいいが、最低2年は、探索者として活動しなければならないよ」
「だけど、2年経てば除籍権利が貰える」
どうやら、2人の話をまとめると、このままでは、俺は、その魔術師狩りの連中に処分されてしまうが、魔術協会に登録をし、探索者の先輩のパートナーとして仕事を2年こなせば、魔術を今後一切使用しないというの条件に、魔術協会から登録を除籍できるものらしい。
「それじゃあ、俺は、助かるんですか?」
解決策が見つかり少しホッとする。 しかし、危険な探索をこなさなければならないが……。
そんな考えをしていると、先輩が肩をポンと掴みニヤけた表情で語りかけてくる。
「ふふふ、今、思ったのだが、望月君、私は2回も君の命を救ったことになるわけだ」
「ええ、そうですね」
先輩のニヤけた表情とても嫌な予感がする。
「実はね、丁度、写真部でも雑用が欲しかったところだっと言うわけで、明日から幽霊部員でなく、正規部員として活動をすること」
ああ、やっぱり、こういう事かっと何気なにし予想はしていたが、やはりこうなったか。
どうやら、俺の高校生は思っていたものと違うものになりそうだ。
俺の落胆の態度に先輩は、いつものように笑って、手を差し出す。
「ようこそ、我が写真部へ」
俺は、観念し、少し溜息をついてその手を握り返した。