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あの子はうちの専門の”ferret” 探索者なんだ

夢の話しについては、wikiを参照しています。

「う……」


 気がつくと、知らない天井が最初に、俺の目に飛び込んできた。


「ここは……」


 周りを見ると、奥にドア、右手に椅子と机に灰皿と幾つか本が並べられ、机の上のランプが部屋全体を照らしている。


「はぁ…」


ゆっくりと体を起こしたとき、ズキっとした痛みが頭を襲う、一体自分の身に何が起こったんだろうか、気を失うまでの記憶を辿る。


「ええっと、たしか、あのアパートを出て……」


 少しずつだが、記憶が蘇ってくる。


「後、須藤先輩が、出口に向かってて……それで……あの時、拾った紙を読んだら……」


「そうだ、あの時、女性の部屋の中で拾った、古びた紙を読んだら、知らない言語が頭の中に入ってきて」


 その時、ガチャリと奥の扉が開く。


「おや?気がついたのかい?」


 部屋に入ってきた人物は、年齢は20代後半くらいだろうか、亜麻色の髪を後ろで束ねて、白いワイシャツに、ジーパン姿の女性で

手には、カップを2つ持っている。


「びっくりしたよ、恵美が君を担ぎこんできたときは」


「恵美? 須藤先輩のことですか?」


「ああ、そうだよ」


そう話すと、女性は、俺にカップの1つを差し出す。


「いただきます」

 

 差し出されたカップを俺は受け取りカップの中を覗く、カップには紅茶が入れられており、一口飲むと、口の中に紅茶の香りが全体に広がる


「おいしい」


「ははは、そうかい」


女性は、笑いながら、右側にある椅子に腰掛けて、自己紹介を始めた


「私の名前は ”白井 淳子” ここは、私のお店 ”アークライト” っていう骨董品店だよ、名前は言えるかい?」


「ええ、望月秀一です」


「望月君ね、制服を見たところ、恵美と同じ学校のようだけど?」


「はい、今年入学したばかりで」


「じゃあ、恵美とは1学年下になるわけだね」


 白井さんはグーッと紅茶を飲むと、ワイシャツのポケットから、1枚の古ぼけた紙を取り出した。

 彼女が手に持っている紙には、見覚えがある、俺が読んでしまった、あの紙だ。


「さて、望月君、これはなんだかわかるかい?」


「はい……俺が見つけた紙ですよね」


「そうだよ、そして、これは ”屍食教典儀” という魔術書のページだ」


「魔術……書?」


 いつから、俺は、こんなファンタジーの世界に飛び込んだのだろう? 魔術書だの、魔術師だの、入ってくる言葉が理解できない、

俺の考えを他所に、白井さんは、話を進める。


「そう、魔術書、この屍食教典儀というのは、主に邪教の食人の記録や、呪術などの呪いに関することが書かれている、魔術における資料のようなものなんだが…… 君が誤って読んでしまったって恵美に聞いてね」


「食人……呪い……」


 その言葉に、俺を拉致した女性、赤黒く染まったビニール袋、人間の首……あの部屋で見たものが、フラッシュバックする。

 白井さんはそんな俺の様子を見ると、ちょっとホッとした表情で語り掛ける。


「まぁ、その様子だと、脳は焼ききれて居ないようだね」


「え……焼ききれる?」


 白井さんは胸ポケットから煙草とオイルライターを取り出し、1本のタバコを口に含み、キンっという金属音立ててライターに火を付けて、煙草吸いつつを話を続けた。


「ふぅぅぅ。 これは、本来、普通の人間が読めば、1ページとはいえ、膨大な魔術に関する知識が脳に直接送られるものなんだ、続けた読めば、脳が焼ききれるか、精神が飛んで、廃人になってしまうこともあるだ」


「………」


 そんな危険なものだったなんて……、魔術書の危険性を知り、表情が硬くなる。


「それにしても、恵美から聞いたが、君の連れてこられた部屋に魔方陣があったんだって?」


 魔方陣? そういえば先輩が押入れの奥で見つけていた奴だろう。


「そうです、俺はよく分かりませんでしたが、先輩は何か、納得したようでしたけど」

 

「どのような配置だったかな?」


 白井さんの質問にあの部屋で見つけた、魔方陣の配置を俺は説明する。


「ええっと、たしか、魔方陣を中心として、左右に蝋燭がありました それに魔方陣の上には写真が乗っていました」


 俺の配置の説明を聞いた、白井さんは、1口タバコを吸い、少し考えた後、口を開いた。


「ふぅ、おそらく、それは ”悪夢”の呪いだね」


「悪夢ですか?」


「そうだ、悪夢だよ、恵美が見つけたメモに”地獄のような悪夢を見ろ”……と書かれていたのだろう」


 あの時、先輩が写真立てから見つけたメモの内容には、そのようなことが書かれていた。


「ええ、確かにそうです」


「ところで、何で人は夢を見るか知っているかな? 望月君?」


 何で夢を見るのか? そんな質問を白井さんは俺に投げかける。少し考え込んでみたが分からなかった。


「いいえ、わかりません」


 俺の質問への回答を、彼女は聞き煙草を吸いつつ答えた。


「望月君、夢というのはね、本来は、人間の心の浄化のためにあるんだ」


「心の浄化ですか? 夢がですか? 内容が悪夢でも?」


 夢にそんな作用があるなど、俺は初めて知った。 なぜなら、夢など眠れば、見る人は見るし、見ない人は見ないそれぐらいの認識しかしていなかった。


「んん~~、そうだね、たとえば、嫌なことや、怖いことがあったのをいわば、現実の反動として、人の心をすっきりさせるためにあるんだ」


 たしかに、昼間に、嫌な出来事があったのが、夢の中に出てきたとしても、朝になって目覚めれば大概はすっきりとした気持ちになることがが多い。


「だが、この呪いを掛けられた人間は、毎晩、毎晩、悪夢を見るそして、悪夢の内容を覚えていないんだ」


 夢の内容をを覚えていないというのはどうことだろうか? 彼女は説明を続ける。


「つまりはだ、悪夢の内容を覚えていないということ、何が原因で悪夢を見たということが理解できないんだよ、原因が理解できないということは、それに対する回避行動ができないということなんだよ、ということは、現実でおきた原因が回避できないということは、原因が分からないことに対するストレスが蓄積する、そして、毎夜、寝床について悪夢を見て毎朝には、全身冷や汗や不快感で起きるを繰り返す、これはかなり精神的にかなり来るね それに」


 白井さんは煙草を大きく吸い込み、話を続けた。

 

「ふぅ……… それに、この呪いは、使用者つまりは術者が死んでも、解除されないだ。 呪いを受けたものは死ぬまで悪夢を見続ける、それは

死よりも恐ろしいことだね、そして、呪いの呪術の知識をこのページから覚えた」


 折りたたまれたページを白井さんは、俺に見せる。


「望月君はすでに、体感したと思うが、魔術書を常人が読むということは、かなり精神的に負担が掛かることなんだ だが、彼女は復讐したい一身で、それに耐え読みきり,理解し呪いを成功させたんだ」


 たしかに、俺もこのページの1文字目を読んだだけで気を失ってしまった。それを読みきるというのは女性の私怨の深さが伺える。


「ただ、1つ、誤算だったのは、このページには、呪術に必要である、身代わりが書かれている部分が欠損していたこと、その為、呪術の反動で

彼女は、ただただ、血肉を貪り食い、魔力を集めるだけの食人鬼に成り果ててしまった」


「悲しいですよね、思っていた人に裏切られて、呪いを掛けて、自分まで化け物になってしまうなんて……」


「人を呪わば穴二つってやつだよ、望月君」


 そう、白井さんは説明し終え、俺は、ふいに先輩のことを思い出した。


「そういえば、先輩はどこです?」


「ああ、恵美なら、ちょっと出ていてね、すぐに帰ってくるとは思うんだけど」


 そして、俺は、1番疑問に思っていることを白井さんに問いかける。


「そうなんですか 後、先輩のことについて、ちょっと聞きたいんですけど、白井さん」


「白井じゃなくて、淳子でいいよ、それでなんだい?」


 俺が1番疑問に思っていることそれはやはり……


「ええ、じゃあ、淳子さん、先輩は本当に ”魔術師” なんですか?」


 俺の質問に、淳子さんは、また、タバコを吸い答えた。


「ああ、そうだよ、恵美は魔術師だよ」


 あっさりと、淳子さんは答えてくれた、やはり、先輩はRPGとかに出てくる魔術師らしい、あの光の杭や壁を見た後でも、信じられなかったが

彼女の話だと本当らしい。


「それにね、あの子はうちの専門の”ferret” 探索者なんだ」


 淳子さんの話しによると、淳子さんが窓口として捜索や討伐などの依頼を、魔術師である先輩が討伐するという仕事をこなしているとのこと。


「今回の依頼が、私が手に持っているのは、魔術書の欠損したページで、今回の恵美の依頼だったんだよ」


「依頼?」


「本来は、守秘義務とかなんとかあるんだが、望月君はもうすでに巻き込まれているから話すけど、1ヶ月前にアメリカにあるミスカトニック大学というというところから、大学図書館に保管されていた、この ”屍食教典儀” のページが何者かに持ち出された」


「けど、犯人はすぐに捕まったが、肝心のページは、日本の古物商に売り払ってしまったってことで、大学の友人から捜索の依頼が来たんだけど、

丁度、2週間前くらいから、西金市で人が失踪したり、殺されたりする事件が起きている噂が流れていたんだ、ニュースになったのは、一昨日の事件が、初めてだね」


「じゃあ、今朝のニュースの犯人は、食人鬼のあの女性……」


「まぁ、そういうことになるね」


 タバコを吸いながら淳子さんは答えてくれた、話が一通り終わったタイミングで、部屋の扉が開けられる。


「やぁ、望月君、気がついたのか」


扉の前には長い黒髪に、同じ制服、須藤先輩が立っていた。


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