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私は正義の味方だ

トントンと何かを叩く音が聞こえ、薄暗い部屋の床で俺は目を覚ました。


「う……ここは……」


 物凄い悪臭と目の前には、台の上で何かを切っているあの女性の後ろ姿があった、さらに、周りを見ると、冷蔵庫に、電子レンジ、テーブル…、右側に玄関、左側に襖が閉まっている。

 察するに、女性の自宅の台所のようだ。彼女の気がそれている内にここから脱出しようと立ち上がろうとするが、うまく立ち上がれず、転んでしまう。

足を見ると縄で縛られている、腕は後ろに回されて同じように縛られているようだ。

その音に気づき、女性がこちらを向く。


「キ…キガ…‥ツイタカ…」


「くそ!放せ!」


 また、俺は拘束されている縄を解こうと必死に体を動かす。


「クク…ケケケ…ココナラ…イ…イクラ…オマエガ…アバレヨウト…ダレモ…コナイ」


「ふざけるな!!この!!!」


「クケケケ…」


 そうしているうちに、女性は、こちらに近づき、俺の髪を掴み上げ、顔近づける。


「ぐ……」


 女性は、上機嫌なのか、ニヤニヤと表情を緩めている。


「オ、オマエハ…キョ、キョウの…メイン…ディッシュ……ダカラ……、ワタシノ……カテ…ナレ…」


「”糧”だって!!」


「ソ、ソウ……オマエハ……ワタシノ……エモノ……ククク……」


「この!!何が獲物だ!!」


「ククク……モウジキ……ゼンサイ…スープ…出来る…モウ…スコ…シ…オトナク…シテロ…」


 そう言い放つと女性は、俺の髪を離し、また、流し台へ調理の続きへ向かった。


(くそ!どうする!!どうする!!どうする!!このままだと、あいつに殺される!)


 色々と脱出のための思考が巡る、その時、流し台で作業してる女性の隣に大きなビニール袋が見えた。

薄暗くてよく見えないが、なにやら赤黒い物が大量に付着している。


(なんだ、あれ?)


 何気何しこちらを観察しながら調理していたのか女性は、袋の存在に気づいた俺に離しかける。


「キ…キニなる…カ…?」


 女性は調理の手を止め、ビニール袋へと近づき、自分の右手を突っ込み、ガサガサと袋の中を漁り

何かを取り出した。


「え…」


 女性が、ビニール袋から取り出し物………。

それは、人間の首だ。


「う、うわわあああぁぁぁ!!!」


 人の首を手に取り女性は微笑みながらこちらを向く


「ククク…ドウダ…コイツは……」


「ひ、人じゃないか!!その人を殺したのか!!」


「ソウ…だ…ソシテ…ワタシノ…”カテ”ニ…ナッタ…」


「い、イカれてる…」


「ケド…オマエモ……ワタシ……カテ…」


 首をビニール袋に戻し女性は、流し台から、包丁を手に持ちこちらに近づく。


「くそ!この!!外れろ!!この!!」


 次の俺の番だ、このままでは、あいつの言う通りあのビニール袋の中身の仲間入りだ。

必死になって自分が縛られてる縄を必死に解こうともがくが無駄な抵抗だった、そうこうしている内に、女性が俺の目の前に立った


「アトハ……メイン…を…ツクル…ダケ…」


 女性は、包丁を大きく振り上げる。

 ギラリと光る包丁が俺の目に映る。


(殺される! 殺される!! 殺される!!! 死にたくない!!!  やだ!! 誰か!!! 誰か!!!!!)


「誰か!! 助けて!!!」


 まるで、RPGで、敵に追い詰められ、大ピンチのヒロインのように俺は叫ぶ……と次の瞬間。


 ドン!!っという轟音が鳴り響き、部屋の中のチリや埃が煙のように宙を舞う。


「おやおや、お邪魔だったかな?」


 聞き覚えのある声が俺の耳に入る、俺も女性も声のした方を向ている。

 煙が収まり、そこには、見覚えのある人物が立っていた


「どうやら、間一髪のようだったね、望月君」


須藤先輩がこの部屋の玄関と思しきところに立っていた。


「ナ、ナンだ! オオオ、オマエハ!!!」


「私か?」


「私は…」


「私は正義の味方だ!!」


 片手を腰に当てキメ台詞を言う先輩が、なぜだろう、こういう状況だというのに

とてもかっこよく俺の目には映っていた


「さて、悪いがその子は、うちの部に入部予定の新入生でね、返してもらうよ」


 長い黒髪を軽く振り、腰に手を当てたままの格好で、須藤先輩は女性に言い放つ。


「ナ、ナン、ナンナナだ!オマエハ!!」


 調理の邪魔をされて、激怒したのか、女性は先輩に向かって襲い掛かる。

 先輩は、やれやれというと態度で、ポケットから1枚の栞を取り出し、目の前に放った瞬間。

 突如として、光の壁らしきものが現れ、女性の攻撃から先輩を守り、その壁の作用なのか、

女性は、吹っ飛び、俺の右隣へとぶち当たる。


「グガガガ………」


「まったく、やれやれだな」


 先輩は、ゆっくりと、女性へと近づこうとする


「グググ……」


「観念しろ、どう足掻いてもお前に勝ち目はない」


「グググ……オ、オマエモ…マジュツシ…なのか……」


「おまえも? その彼はただの人間……のはずだが?」


 先輩は顎に手をあて首を傾げている。

 まさにチャンスとばかりに、様子を伺っていた女性は、俺に取り付き、包丁を首元に当てる。


「ド、ドウダ!! コレデ、ウゴケマイ」


「ほぅ」


「先輩!」


 首当たる包丁の冷たい感覚が俺を襲う、少しでも刃を引けば、頚動脈は切れ、血がシャワーのように噴出し、絶命する。


「カエレ!! カエレ!!」


「ふふふ、人質をとったつもりかい?」


 先輩は、そんな余裕を見せながら、ゆっくりとまたこちらへ近づく。

 

「クルナ!!カエレ!!マジュツシ!!」


「ふぅ、だから言ったろう、お前はもう終わってる」


 先輩は目の前に止まり、指をパチンと鳴らすと、先輩の黒髪の長髪が少しゆれ、何かが、女性の眉間へ突き刺さる。


「アアアア!!!!!」


女性は包丁を離し、俺は先輩方へと飛ばされる。


「ぐぇ!!」


 変な風に飛ばされてか、後頭部を打ち、フラフラになりながらも、女性の方を見る。

 彼女の眉間に刺さっていたのは、太さが3cmくらいある、光の棒だ。

 女性の方に見入っていると、先輩がもう1度、指を鳴らすと、床、天井、壁、ありとあらゆるところから、光の棒いや、光の杭が女性を襲う。


「アアアアアアアアア……」


 全身を光の杭が突き刺さった女性は、バタりとうつ伏せの形で倒れ動かなくなった、そして、体全体が白く変化し、砂のように崩れる。

先輩は、女性だった粉体を一握り掴み、左のポケットから小さな小瓶を取り出し、詰めた。


「ふぅ、望月君、無事かね?」


 なにやら、やり終えた先輩は、俺の気遣ってか声をかけたが、俺は先輩にいろいろと聞きたいことがあった。


「ええ、なんとか、それより先輩どうしてここが? 後、あの光の杭や壁はなんなんです?」


 頬を指で掻きながら先輩は口を開く。


「あ~~えっとそれはだな~」


「それは?」


「実は、すべて、望月君の見ていた幻想だったとか」


「茶化さないでください!!」


「ははは、いやいやついつい」


「また、ついですか!! あなたって人は!!」


 先輩はまぁまぁとう態度で俺を静止しようとするが、どう見てもこの状況で茶化す先輩が悪い、茶化して満足したのか、先輩は俺のした質問に答える


「望月君、あれはね、魔術だよ」


「魔術?ゲームとかでよく使われるやつですか?」


「そうだよ、望月君、私は……」


急に真剣な顔になり先輩はこう言った


「私は、魔術師だよ、望月君」


(先輩が魔術師?どういうことだ? そういうものは、ゲームや小説の中の話じゃないのか?)


 先輩の言葉にいろいろな考えが巡り、考え込んでるところに声を先輩がかけてくる。


「まぁ、とにかくだ」


先輩は、部屋の置くの襖の前に立った。


「この奥に何があるんです?」


「あの女性がこうなってしまった原因だよ」


「原因?」


「ああ、これも”依頼”のうちでね」


 依頼?どういうことだろうか、そんな考えをよそに彼女は襖をあけて奥へと入っていく、俺もそれに続いた。


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