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魔術師のいる部室  作者: 白い聖龍
秘密のある村
34/80

私達は人間たちからの独立……


 「1人……じゃ………と?」



 「はい! 敵は防空壕前です。 今、剣士様と摩周様が向かっております!」


 「なら、ワシらも行くぞ! 魔術師殿!」


 村長は俺の方を見て一緒についてくるように促し、俺も深く頷き同意する。



 「魔術師~~?」


 武藤さんは、まだ自体が呑み込めていないようで頭に?マークが浮かんでいるのが、他人である俺にでもわかった。


 「えっと、武藤さんはここに居てください!!」


 俺は彼女にここに居るように指示出すと村長と一緒に敵が来ているという防空壕の入口に向かった。 


 部屋を飛出し防空壕入口に俺達は走って向かう。


 体の方は村長の治癒魔術のおかげか、どこにも痛みがあるところがない。


 「本当にきれいに治ってる」


 骨折していた右腕を軽く振って完治具合を確かめている俺に村長が自慢げに話しかけてくる。


 「あたりまえじゃ。 この程度の魔術など小さな子供でも使えるわい」


 じゃあ、俺はその小さな子供でも使える魔術を今まで使えなかったわけか。


 何故だろう。


 目から熱いものが頬を伝っていくのを感じる。


 「一体どうしたのじゃ?」


 「いえ、なんでもないっす……」


 恥ずかしさから村長から顔をそむけていたが、彼が不思議そうに声を出す。


 「しかし、敵の目的はなんじゃ? いくらこちらが疲弊しているとはいえ、もう一戦交えるほどの戦力は残っておるというのに……」


 「なら、一体どうして?」



 村長は魚顔で表情が変わらないようだったが、今回の相手の出方には疑問を抱いているように感じる。


 「考えるには、よほど自信があるか、それとも奇襲か、もしくは単なる馬鹿か……」


 「俺的には奇襲は勘弁してほしいですね」


 「とにかく行ってみないと分からんな! 何があるかわからんから今のうちに銃に装填をしておくんじゃ」


 俺は村長に促されて、慌てて上着のパーカーに突っ込んだ拳銃にマガジンを装着しスライドを引いて弾を装填してすぐに撃てるようしておく。


 「あそこが入口です!」


 一緒に走っている村人が指差す方向にうっすらと明かりが見えている。


 光はどんどん強くなり、俺達は外からの光の中へと飛び込む。


 (ま、眩しい……)


 灯りが点いていたとはいえ、今まで暗い防空壕の中にためだろう。


 目が光の変化に追い付かずに、視界が真っ白になる。


 けれど、それもだんだん落ち着き始める。


 外に出ると、太陽が空の真上をさし辺りおそらく今は時間的には昼ぐらいだろう。

 

 となると俺は軽く10時間ほど寝ていた計算になる。


 上を向いている顔を元に戻す。


 目の前に1人の青年と魔剣士、摩周さんそれに何人かの村人が青年との間に線を引いたように距離を開けて睨み合っている。


 青年の年齢はおそらく10代後半から20代前半くらいで、中分けにした黒髪で上は裾を出したYシャツ下はジーパン姿だ。


 魔剣士は威嚇するように純白の刀を復元させ相手に向けて構えている。


 摩周さんは、怒りとか悲しみとかを感じさせる表情で、真直ぐに青年を見つめている。


 (これは一体……)


 おそらくだが、今、あそこに立っている青年は敵だろう。


 だとしても、こっちには村人が10人ほどだし、俺や村長、摩周さんもいる、それに今では切り札と言える魔剣士もいる。


 形勢的にかなり青年に不利な状況だ。


 なら、彼はなぜこんなところにやってきたのだろうか?


 奇襲を打つにも狐面にやらせてしまった方が早いような気がする。


 さまざま憶測が俺の頭の中で回る中、周囲は鳥のさえずりぐらいしか聞こえない静かさで、誰一人として声を上げていない。


 その沈黙は青年のこの言葉で破られる。


 「ここに来たのは他でもありません。 父さん、今すぐダゴン信教を渡し降伏してください」


 いきなりの降伏勧告に、ざわつく村人達。


 その騒然を切り裂き摩周さんが声を上げる。


 「友彦!!」


 (友彦? この人が摩周さんの息子さん?)


 1人摩周さんが群衆を押し切り前に出る。


 「友彦! どうして、どうしてこんなバカなことを!!」


 「馬鹿なこと?」


 摩周さんの呼びかけに友彦さんはやれやれという態度を取る。


 「このことは前にも説明しまたよね? なのに父さんは分かってくれなかった。 それをまた問いかけるのですか?」


 友彦さんは、視線を摩周さんから村人へと向け叫ぶ。


 「あなた方は今のこの生活に満足しているのですか!! たしかに私たちは過去に2度も大きな失敗をしました。 けど、それはすべてはこの村に住む者のためなのです!!」


 「友彦!!」


 「父さん!! あなたは黙っていてください!!」


 摩周さんの制止も友彦さんの気迫に掻き消される。


 「いいですか! 400年前、私たちの先祖は人間たちに対抗するためダゴン様を降臨させ、その力を持って周りの村々と対抗してきましたが、それもあの陰陽師率いる連中に阻止され、人間との共存を求めました…………が、その結果どうです!! いまだに人間達は、我々を化け物。 そう!! 化け物と罵り続けた!! 違いますか!!」


 化け物。


 その単語に俺は最初に深きものども(ディープワンス)と遭遇した時を思い出す。

 たしかに俺達人間から見ると彼らは化け物だ。


 友彦さんは続けて叫ぶ。



 「たしかに、我々は人間とは違いすぎる。 言語や顔、体、彼らからすればそれは化け物に見えるでしょう。 ですが、我々は彼らに何かしかしましたか? 村を蹂躙したり、物を盗んだりしたでしょうか? 答えは”No”です。 我々は何もしていない。 そう何もです!!」


 「どうかしたのですか~~?」


 俺が友彦さんの演説に聞き入っていると後ろから声を掛けられる。


 振り向くと防空壕で大人しく待つように指示した武藤さんが立っていた。


 「武藤さん!!??」


 「ごめんね~やっぱり心配で見に来ちゃったんだよ~~」


 指示を無視したことを謝罪されたが、相手が一人とはいえこの状況おそらく何かあると俺は考えていた。


 なら武藤さんがここに居るのは危険だ。


 「ここは危ないですから防空壕に戻ってください」


 「いやだ~~ここにいます!!」


 再三防空壕へ戻るように指示をするが、頑としてそれを受け入れてくれない。


 そしてついに彼女の岩のような意志に俺が折れる。


 「わかりました。 ここに居てもいいですが、危険と感じたらすぐに戻ってくださいね」


 「は~~~い」


 「………」



 相変わらずの間延びした返事に力を抜かされる。


 力が抜けたのがよかったのか、俺は一つのことを思い出す。



 「武藤さん、紙とペン持ってます?」


 「うん、ちょっとまって」


 彼女は自分の身に着けてるウェストポーチを開け、ガサガサと探し中からメモ帳とペンを見つけ俺に差し出す。


 俺はそれを受け取り、メモ帳に魔術式を書き込んでいく。


 「はい~これ~けど何に使うの?」


 「ちょっとした御まじないですよ」


 さっさと式を書きそれをパーカーのポケットへと突っ込み、再び友彦さんの声に耳を傾ける。



 「――ですから、20年前に我々の同志は、人間達に媚び諂っている村人を嘆き、再びダゴン様の復活させ、我々に自由を取り戻そうとしました。 しかし、それも、私の父と祖父が人間たちに協力をするという愚行のおかげで阻止されました」


 「当たり前だ! 我々は400年前のあの時に人間との共存を誓ったからだ!」


 摩周さんが対抗するように声を上げるがそれも友彦さんの行動で返す。


 「ならば!! 彼はどうです!!」


 友彦さんが指差した方向には、この村に来て初めて出会い俺を助け防空壕まで運んでくれた村人がいた。


 「彼は祖先の血が濃いという理由だけで村から出ることを許されていません!! それでも人間たちと共存していると言えるのですか!? それは共存とはいえない人間達による飼育ですよ!!」


 その言葉に摩周さんは苦虫を噛み潰したような顔をする。


 俺はチラッと村長の顔みるが、表情は変わらないがおそらく同じ気持ちだろう。


 「私達は本当の自由の為、村人達の未来の為に理解とこの馬鹿な内部分裂を終わらせるためにここに来ました。 だから、父さん!! ダゴン信教を渡してください!!」


 「ダメだ!! これはお前たちには危険すぎる!! お前たちこそいい加減にダゴン様の力で勝ち得たものが幻想だと、なぜ分からない!!」


 「我々はそんなことをするためにダゴン信教を使うのではないのですよ」


 「なんだと!?」


  友彦さんの発言に摩周さんは驚いた表情を見せる。


 「父さん……核というものを知っていますか?」


 「……核……だと、そんなもの誰だって知っている」


 「ならば話が早い。 それは人間が作り出した人口の太陽。 かつては大きな大戦を終わらせた最終兵器です。 それを各国家が持つことにより抑止力が生まれ世界大戦のような悲劇がなくなりました」


 「そんなことは、歴史の教科書に載っていることじゃないか! 何が言いたいんだ友彦!!」


 友彦さんは一度深呼吸をしてこう答えた。


 「私達は人間たちからの独立……つまりは、我々はダゴン様を抑止力にここに国を作るんです!」


 「国!?」


 この発言に村人達は動揺しざわめき始める。



 「何を馬鹿な! そんなことの為にダゴン様を使うなどと!! 何を馬鹿な!!」


 「そんなこと? 今まで保守派で貫き通した結果が今の状況なのではないのですか!? これが一番の解決方法なのです!! その為にはダゴン様を現代に復活させなければならない!!」


 「…………」


 友彦さんの理論に摩周さんは黙りこみ、友彦さんは右手を前に出す。


 「さぁ!! ダゴン信教を渡しなさい!!」


 「…………」



 「………………………………」



 「………………………………………………………………」



 しばらくの沈黙の後、摩周さんが口を開く。



 「………………………………ダメだ。 信教は渡せない!」


 「………………………………………………………………なら仕方ありませんね」


 友彦さんが左手で指をパチンと鳴らすと、突如として彼の後ろに広がっていた森がゆがみ始める。


 その光景に俺も村人達も動揺する。


 「一体なんだ? 何が起きてる?」


 ゆがみが収まると、そこには何十体もの深きものども(ディープワン)が牙や爪を剥き出しにし、こちらを威嚇している。


 「なんだと!」


 村長が驚いた声を出す、俺はすかさず彼に問いかける。


 「村長! こちらの戦力は!?」


 村長は悔しそうな声で答える。


 「ここ居るので全員じゃよ」


 「うそだろ……」


 彼はもう一戦やれるほど戦力があると言ったが、こちらには村人が20人ほど、対して向こうは優に50体以上いる。


 形勢は完全に不利だ。


 深きものどもの(ディープワンス)の唸り声が響き渡る中、友彦さんがこちらに向かって叫ぶ。


 「これが最後の警告です!! 素直に降伏しなさい、今ならあなた方を悪いようにはしない!!」


 「くそ、武藤さ――」


 危険な状況に彼女を安全な防空壕へ逃げるように指示しようと振り向いた時だった。


「も、望月君~~~!」


 そこには、武藤さんに片羽絞をした赤いローブの狐面がそこに立っていた。


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