表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/80

しまった、明日、先輩に返さないと

学校までの道のりは徒歩でバス停まで向かいそこからバスに乗って駅へ行く、そこから電車にゆられ学校のある西金駅に向かう、西金駅を出たら駅前商店街を抜けて学校指定のバスが止まるバス停まで歩き、学校行きのバスに乗り、学校に到着する。

 

 おおよそ通学時間は1時間ぐらいだろうか。

4月はじめに、入学してからこの通学にも慣れた来たものだ。


 今朝のニュースの内容を学校行きのバス停で何人かの生徒が話題にしていたのを見かけたが、今の俺の目標はそんなことではない。

 今日こそ入部届けを手に入れてこのお使いイベント終わらせて、ゲームプレイ時間の確保というイベントボーナスを手に入れなければということで頭が一杯だ。


 放課後………。


 本日の授業も終わり、後はあの写真部の女部長”須藤先輩”から入部届けを受け取るだけとなった。


 自分のクラスで帰り支度をさっさと済ませ、写真部部室へと赴く。


 写真部の部室までは1度行った道のりだ。


 迷うことはまずない。


 階段で4階から2階へ、B棟からA棟の渡り廊下を渡り、A棟2階の1番奥の部屋、科学準備室に辿り着く。


 ドアをノックする・・・・・が返事がない。


「あれ? おかしいな、昨日をすぐに返事がしたのにな」


 ドアノブに手をかけて回して押すと、簡単に扉が開く。


「鍵、開いてる」


 そのまま扉を開けて中に入ると、須藤先輩の姿はなかった。


「まだ、来てないのかな?」


 部屋の中を見渡すと、中央にあるテーブルに須藤先輩のもと思われる鞄と小説が置かれている。


 思わずテーブルに近づき、置かれていた小説を手に取る。


「いったい何を読んでいるんだろう?」


 興味本位からパラパラとページをめくる。


 その時、スッと1枚の栞が小説から滑り落ちた。


「あ、やべ」


 急いで床に落ちた栞を左手で拾い上げた。


「どこのページに挟んであったんだ?」


 故意でないとはいえ、人が読んでいた小説の栞を取ってしまった。


 ゲームで言えば、ノベルゲームのセーブデータを勝手に消してしまったようなものだ。


「不味いな……」


 このトラブルをどうするかと俺が悩んでいると。


「わぁ!!」


 突然の不意打ちに体がビクッと痙攣し思わず声が出る。


「うわぁ!!」


 急いで振り向くとそこには、いたずらが成功しケタケタと大笑いする須藤先輩の姿があった。


「あはははは。びっくりしたか? 望月君」


「な、何をするんですか!」


「いやね、私の荷物の前に立っていたのでな、つい」


「ついって!あなたは!」


 くそ、油断した。


 いくら考え事をしていたとはいえ、いきなり驚かされるとは誰が創造しただろうか。


「ははは、すまん、すまん、ほれ」


 笑いながら須藤先輩は、俺の目の前に1枚のプリント差し出してきた。


「約束していた、入部届けだ」


「ふん」


 驚かされて頭にきていた俺は、差し出されたプリントを右手で乱暴に受け取り、そのまま部室出口のドアへ向かった。


「おや?もう帰るのかね?」


「ええ!もう目的は果たしましたから!」


 なんて失礼な人だろう。

 確かに今までもネットゲームとかで人を罵倒する人や悪口を言う人の経験をしたことはあるが、いきなり驚かされるなんて初めてだ。


「ふふふ、悪かったよ、まぁ、もし何かあったらまたおいで」


「いいえ!もう来ませんよ!」


 そう言い放つと部室を出る際、ドアを強めに閉める


「はぁ、なんて人だ・・・・・・」


 学校の正門まで行くと、タイミングがよかったのか駅方面行きの指定バスがバス停に到着していた。


 バスに乗り込み、ふと、先ほど受け取ったプリントを確認する。


 何であれ、後はこれに必要事項に記入をして、明日、委員長に渡せばイベントクリアーだ。


 その後、駅行きのバスを乗り終えて駅に向かう途中の商店街で、最近帰り際に寄っているゲームセンターの前を通りかかる。


 店舗の入り口に1枚の告知ポスターが貼られている。


「入荷したんだ」


 近年アーケード稼動したばかりの格闘ゲームがついにこの店舗に入荷したという告知ポスターだ。


「ワンコインやっていきたいけどな」


 電車の時間を確認するためにズボンのポケットに手を突っ込む。


 その時、携帯と一緒に何かが入っている。


「ん、なんだ」


 ポケットを弄り、携帯以外の何かを取り出してみる。


 正体は、部室で拾い上げた栞だ。


 あの時、先輩が俺を脅かした際に携帯の入っている左のポケットに無意識に入れてしまったようだ。


「しまった、明日、先輩に返さないと」


「…………あれ」


 その時は栞を外してしまったことに動揺して気づかなかったが、四角く白い栞には赤黒い変な模様が描かれている。


「変わった模様だな」


 模様は中心に円に六芒星が描かれ、上には数式下にはロールプレイングゲームで使われていそうな言葉で意味は分からないが3行ほど書かれている。


「…………あの先輩、変わってるからな」


 確かに変わっている。

 

 そんなに親しくもないのに人を脅かしたりして人をからかう先輩だ。


 こんな模様が書かれた栞を持っていてもおかしくはない。


 そう決め込んだ俺は栞を再びポケットに突っ込み、代わりに携帯を取り出し時間を確認する。


 「口惜しいが新型の格闘ゲームはまた今度だな」


 電車の駅到着までの時間が迫っているため、俺は足早に駅へと向かう。


 駅に到着すると、電車の到着を知らせる電光掲示板の前に何やら人垣ができている。


 俺も一緒に掲示板を見てみると、遅延のテロップが流れている。


 程なくして、駅のアナウンスが流れる。


 遅延の原因は信号機の故障事故が発生しているようだった。


 早く家に帰ってRPGのレベル上げの続きをしたかったが、遅延している電車は俺にはどうすることも出来ない。


 運がいいのか悪いのか、さっき時間がないため諦めた新型格闘ゲームをプレイする時間が不本意ながらできてしまった。


 ならすることは1つだ。


 「仕方ない、ゲーセンで時間つぶすか」


 そして俺は先ほどのゲームセンターへと赴く。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ