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魔術師のいる部室  作者: 白い聖龍
秘密のある村
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ははは、ちょっとスリリングだったね

漁港に到着すると、船から陸揚げした魚などを仕分けする施設や、自動販売機、漁船も何台か係留されていて、辺りには潮と、魚の生臭さが入り混じった香りが漂っている。

 そして、ここにも、あの化け物どもが、俺達を探すかのように徘徊している。

 俺たちは、漁港入口近くにある陸揚げした魚を入れておく青いコンテナの陰に隠れ、三森さんは、そこから首を出し辺りを見回していた。


 「1、2、3、う~ん、見える限りでも5体はいるね」


 「三森さん、どうしますか? 今からでも他の道を探しますか?」


 「いや、さっきの事務所を調べるのに時間を取られすぎた、今から他のルートに行っても同じことね」


 「それじゃあ、どうするんです、ここでこうして隠れていてもいつかは見つかってしまいますよ」

 

 彼女は、少し周りを見渡して、何か思いついたのか、漁港に停泊している漁船を指差した。


 「こうなったらあの漁船を伝ってここを抜けるしかないね、望月君、体育の成績はどうだったかな?」


 中学時代など、今よりもゲーム熱がひどく、放課後、休日は1日中テレビの前に座っていたため、体力があるはずもない。


 「え、えっと、たしか、中学の頃の成績だと2でしたよ」

 

 彼女は、少し”ククク”と笑う。


 「OK、それじゃ行くよ!」


 三森さんはいきなり、俺の手を引き、俺達から1番近い漁船へと走り出した。

 

 「うわ、ちょっとまだ心の準備が!」


 彼女は、民宿での格闘技もそうだが、俺のイメージしてる大学教授とはかけ離れていた。

 漁船に向かって走るスピードも常人よりもかなり早い、俺の手を引いているのにまったく物ともしない。

 当の俺はいうとこけないようにあとについて行くので精一杯だ。

 そして、瞬く間に漁船へとたどり着き、飛び乗って身を潜めた。


 「ははは、ちょっとスリリングだったね」


 「はぁ……はぁ……」


 息切れしている俺をしり目に隣に隠れていた三森さんの顔見るとまるこの状況を楽しんでいるように笑っていた。


 俺が船から漁港の方を覗くと、化け物どもはあたりを見渡しながらうろうろしているようだった。


 「どうやら、見つかってはいないみたいですね」


 「さて、これからが正念場だよ」

 

 三森さんは、隠れながら船の反対側へ移動し、俺もその行動に合わせる。

 

 「これからどうするんです?」


 「あれさ」


 彼女は向こう側に見える船を指差す。


 「ここから、船伝いに反対側にある林道を目指すよ、この漁港さえ抜けてしまえば、後は、林道を抜け橋を渡って国道だ、君はそのまま夜刀浦まで歩いて、そこで電車を待てばいい」


 「わかりました、けど…………」


 ここまま、三森さんについて行けば俺はおそらく脱出できるだろう、けど、一緒にいた藤波や大学生2人はどうなるだろうか。

 そんな気持ちを察してか彼女は俺に諭すように話しかけた。


 「大丈夫だよ、君の友達も、うちの学生も、私がちゃんと助け出すから」

 

 「わかりました」


 確かに、彼女のさっきの動きといい格闘技術といい、今の丸腰の俺よりかは確実に彼女らを助け出せると思い返事をするが

 何もできない自分に憤りを感じる。


 「OK それじゃ、私から行くからね」


 そういうと、彼女は、ヒョイッと身軽に隣の船へと音を立てずに飛び移った。


 「次は、俺の番か」

 

 漁船と漁船の距離はおよそ1mほどだ、波で船全体が揺れてはいるが、体育成績2の俺でも余裕で越えられる。


 「よっと!」

 

 思いっきり足を蹴り船の間を飛び越えるのには成功をしたが、着地の際にドンという大きな音を立ててしまった。


 「あ……」


 「望月君! 早くこっちへ」


 彼女に促され俺は、急いで漁船の操舵室の陰に隠れた。

 そして、三森さんがそっと顔を出し辺りを見回す、俺も反対側から同じ行動を取る。

 漁港の怪物たちを見ると、波の音が掻き消してくれたのか、相変わらず周りをうろうろ捜索している。


 「どうやら、気づかれてはいないみたいね」


 「すみません」


 俺が、さっきの着地のことを謝罪する。


 「気にしないでいいわ」


 そう言うと、彼女は俺の肩をポンと叩き、再び、漁港の様子をうかがい始める。

 俺は、今までの緊張の疲れが出たのだろう、操舵室の壁を背にして座り、海の方を眺める。


 「望月君、あれを見て」


 さっきまで、向こうの様子を見ていたが三森さんだったが、何かあったのだろうか、不意に声をかけてきた。

 

 「え……どうしたんですか?」


 「連中引き上げていくよ」


 俺も、漁港の方を物陰から覗くと、どうやら、俺達を見つけられ無かったのか、次々と漁港から出ていく様子がうかがえた。


 「どうやら、これで一安心みたいね」


 「そうですね」

 

 どうやら、彼女もこの状況下で多少は緊迫していたのだろう、大きく息をつく。

 

 「それじゃ、連中もいなくなったし、先を急ごう」


 「はい」


 俺が立ち上がり移動しようとした時、敵が居なくなった安心からの気の緩みか、操舵室にドアノブに腕をぶつけてしまう。

 

 「うわ!」


 同時に、中から何かが俺に襲いかかる。


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