表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔術師のいる部室  作者: 白い聖龍
秘密のある村
23/80

今回のことは、あいつが関係しているのか?


 ホテルの敷地を出て、アスファルトが敷かれていない土道を進むと、道が二股に分岐している所で、俺達は歩みを止めた。

 三森さんは方角の確認をし、俺は周りを見渡す。

 片方は、漁村の方へ繋がり、もう片方はおそらく漁港へとつながる道だろう。

 俺は、そこから村の方角を見ると、いくつかの家が明かりを点けているのが見えるが、他は出払っているのか、ほぼ真っ暗だ。

 漁村を通れれば、国道までは近いと、三森さんは言っていたが、周りが敵だらけ上、村を通ろうとすれば、家に隠れている怪物にいつ何時襲われるかわかったもんじゃない。

 

 「後は、この道を――」


 現在地を確認していた、彼女がそう言いかけた時に俺の手を引っ張っていく。

 俺は状況が分からずに、三森さんの成すがままに近くの茂みに隠れる。


 「一体、どうしたんですか?」


 俺が問いかけると、彼女は強い口調でこう答える。


 「シッ、静かに! ライトを消して!」


 俺は彼女に言われるままライトを消し、そして、三森さんはとある方向を指差した。

 その方向には、村の方角から多数の懐中電灯と思われる光がこちらへ向かってきていた。

 数にして、おそらく15~20人くらいはいるだろう。

 さすがに、格闘技を習得している三森さんでも、多勢に無勢と感じ取ったのか、周りをボケッとみていた俺を引っ張ってここに隠れたのだろう。


 「いくらなんでも、数が多いわね、咄嗟に隠れたからこちらは見つかってないとは思うんだけど……」


 「…………」


 数分後、分岐道に、村からやってきた連中がぞろぞろと集まってきた。

 ただ、俺達を襲ってきた怪物とは違い、魚っぽい顔の奴もいれば、俺達と変わらない人間の姿をした奴もいる、全員男性のようだ。

 そして、全員が胸から金色のネックレスを首から下げているのを、彼らが持っているライトの光が照らし出す。


 「なんか、俺達を襲ってきた奴となんか違いますね」


 俺は、茂みの陰で奴らに聞こえないように、三森さんに話しかけた。


 「そうね、それに彼らが身に着けているネックレスは一体何からしら?」


 「ホテルにいた奴は着けていませんでしたね」


 また、三森さんが手を顎に当て考えている。

 その間、俺はまた様子を伺うつもりで茂みの隙間から連中の方を覗く。

 後ろの海の音で良くは聞こえないが、彼らは、これからどう行動するかを話し合っているように見えた。

 

 「どうにか、このままどこかへ立ち去ってくれそうだな」


 しばらく様子を見ていると、1人の男が何かに気付いたのか、突然、道を開けるように立ち位置をずらし、それに続くように他の奴らも次々と体を退かし、一本の道ができる。

 出来上がった通り道をゆっくりと、まるで、大木の森を歩いているようにこちらに歩いてくる人影が見える。

 そして、その人物の正体は俺にはすぐに分かった。


 小柄な身長、灰色の頭からすっぽりと包んでいるローブ、そして、手に持っている木札、間違いない。

 先日の泥人形事件の時に、俺と先輩の前に現れた”魔剣士”だ。


 「なんで、あいつがこんなところに……」


 顔は、周りの暗さも相まって確認はできないが、あの雪のように白い木札は見間違うことはない。

 

 「今回のことは、あいつが関係しているのか?」


 魔剣士の様子を見ていると、声までは聞こえないが何やら男たちに支持を出しているように見える。

 連中は、指示を了承したのか、全員が、俺達がいた民宿の方へと向かっていた。

 魔剣士もそれに続くように歩いて行くが、突然立ち止まり、俺達が隠れている茂みの方に顔を向け、俺は、魔剣士と目が合ってしまう。

 

 「気づかれた!?」


 俺は慌てて、視線をそらし、深く茂み隠れる。


 「ん? なにかあったの?」


 俺の異常な行動を心配してか、三森さんが声を掛けた気がするが、俺には届いていない。

 魔剣士の実力は、須藤先輩とほぼ同じくらい、丸腰の上に魔術すら使えない俺では太刀打ちはできない。

 かといって、三森さんも格闘術を習得してはいるが、魔剣士の繰り出す攻撃を避けられるかどうかわからない。

 俺が、もう一度、茂みの間から魔剣士を見ると、1、2分くらいだろうか、ジッとこちらを見ていたが、まるで、何事もなかったように民宿の方へと向かっていった。


 「行った……か……」


 「……く……ん! 望月君!!」


 俺がホッと胸をなでおろすと、隣から突然大きな声が聞こえる。


 「うわっ!」

 

 「さっきから、話しかけてるのに、いったいどうしたのいうの!?」


 どうやら、三森さんが心配してか、さっきから俺に話しかけていてくれていたようだった。

 

 「いえ……なんでも……」


 手を見ると、自分でもかなり緊迫していたのだろう、ジンワリと、汗がにじみ出ていた。

 

 「……っ」


 俺は、ズボンで汗を拭い去る。


 「まぁ、何を見たかわからないが、こちらが声を掛けてるのに返事をしないのは勘弁してよ」


 「す、すみません」


 「はぁ……まぁいいわ、お互い言いたくないこともあるからね」


 三森さんは、茂みの間から周りを見渡し、連中がいなくなったことを確認する。


 「さぁ、漁港へ急ぎましょう」


 「はい」


 魔剣士が現れたことは気になるが、俺達は当初の目的である漁港へと向かった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ