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魔術師のいる部室  作者: 白い聖龍
秘密のある村
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19XX.8.6 ダゴン様にて


 俺は、今起きた光景を理解するのに少し時間がかかった。

 先輩のように魔術や俺のように武器がないにも関わらず、自分の身長より二回り以上の体格差がある化け物を彼女はねじ伏せてしまった。

 まるで、ゲームに出てくる格闘家グラップラーのようだ。

 俺に同じ芸当ができるか?

 出来る筈もない、こんなことが遣って退けそうなのは、うちの部長、須藤先輩くらいだろう。


 「ふぅ……待たせたね、望月君」


 俺のそんな考えを知る由もなく三森さんは、ニコッとした笑顔でこちらに話しかけてきた。


 「三森さん、今のは……」


 「ああ、前の大学の時に危険な場所へ調査に行くことが多かったから、格闘技と気功を少々ね」


 「そ、そうですか……」


 先ほどの動きをみる限りではどう見ても少々といったレベルじゃないと思うが、俺は頭の中でそんなことを考えていた。

 

 「望月君ライトを……」  


 彼女は、倒した魚人に近づき俺が手に持っている懐中電灯を魚人に光を当てるように指示を飛ばし、俺もそれに従う。

 すぐに、三森さんは顔や、腕などを調べ始める。

 ふと、俺が魚人に目をやると、前に見たものとは違い、肌の色は茶色の鱗がびっしりと生えており、背中には大きな赤い背びれあった。

 しばらく体を調べていたが、今度はそれを止め、ブツブツと何か考え始めた。


 「う~ん、やはり、どう見てもこれはあれだ、でもどうしてこんなところに? けどそうなると、向こうの奴は……」


 「あれって、向こうのって、どういうことです?」


 「え、あぁ、ごめんね、1人で考え事してて、まぁ、ちょっとね」 

 

 三森さんはどうやら、この化物のことを知ってるような感じだったが、それを悟られたくないのか言葉を濁した。


 「それじゃ、次の奴が来る前に降りましょう」


 「は、はい」


 ちょっと腑に落ちない点はあったが、俺たちは1階ロビーへと向かった。


 階段を下り、1階につくと出入り口上に備え付けれている非常灯の緑色の光が薄暗くロビーを照らしていた。

 俺が真直ぐに出口に向かおうとすると、三森さんが不意に呼び止める。


 「望月君、すまないけど、ここを出るのは、少し待っててもらえるかな?」


 突然の提案に俺は動揺した。


 「えっ、すぐに逃げるんじゃないんですか?」


 「そうしたいのは山々なんだけどね、さっきの奴を見て、少し気になることがあって、ちょっと調べたいものがあるのよ」

 

 「わ、わかりました」


 「ありがとう」


 彼女はそういうと、受付カウンターの後ろにある事務所の方へと向かって行き、俺もそれに続く。


 事務所には不思議と鍵が掛かってなく、容易に入ることができた。

 明かりを点け、中を確認すると、4畳半くらいの広さで、奥に机と宿泊名簿などが入っているスチール製の棚が置かれているのが分かった。

 三森さんはすぐに机の引き出しや、棚など、探せそうなところは虱潰しに調べ始めた。

 残された俺はすることもなく部屋の隅っこで突っ立ってその様子を見ていたが、机の方へ向かう。

 机には写真縦が飾られており、10歳ほどの一人の男の子が写されている。

 摩周さんのご子息だろうか。 

 俺は、彼女が机の上に置いた調べ終わったファイルを手に取りをペラペラと暇つぶしに捲っていた。

 どうやら手に取ったのはここの宿泊名簿のようだ。


 「へぇ~、こんな閑散とした場所なのに結構人が泊りにきてるんだな」


 数ページ捲ったところで、机に積まれていたファイルや本がバランスを崩し下に落ちた


 「あ……」


 俺はそれを片付けようと、一つ一つ拾い上げていくと、本と背表紙の間から何かがひらりと落ちる。


 「なんだ」


 手に取ると、それは1枚の白黒写真で、時間がかなり経過しているのか、四隅は茶色く黄ばんでいた。

 写真には、鳥居が写されどこかの神社のような場所だ。

 鳥居の中心に3人の人物がならんで写されていた。

 1人は、少し若いオーナーの摩周さん、2人目は、日本人ではなく中年くらい欧米人のようだ、3人目は、劣化のためか顔が黒光しているが、2人とは違いセーラー服を着ていることから、女子高生くらいだとの人物だと思われる。

 裏面を見ると、”19XX.8.6 ダゴン様にて”と書かれていた。

 

 「日付は今から10年くらい前だな、それにダゴン様?」

 

 たしか、三森さんが話の内容にもたしかその単語が出てきたな、けど、この写真を見る限りだと、何かの神様のようだ。

 俺がいろいろな潜考をしていると、先ほどから事務所を調べていた三森さんが声を上げた。


 「やはりだめね残っていない!!」


 それに驚き俺はさっきの写真を自分のズボンのポケットに突っ込んだ。

 

 「さっきから何を探しているんですか?」


 「いや、ちょっとした私用だよ、時間を取らせて悪かったね、さぁ、行こうか」


 私用?

 こんなところにところにわざわざ残ってまで調べるあることってなんだろうか?

 そんな考えが頭を過るが、結局、俺は彼女に促されるまま、民宿から外に出る。

 外に出ると、俺たちは駐車場にて、俺が突き落とした怪物が体から内臓物と血をまき散らした状態で見つけた。

 民宿の3階から落ちたのだ無理もない。

 彼女は、足で2回ほど突いて死んでいることを確認する。

 「どうやら、大丈夫のようね」


 「こいつ、俺が突き落とした奴だ……」


 「……なら、急いで漁港に向かいましょ、私が倒した奴がそうだけど、何人か仲間が戻ってこないとなると、連中が探し集まってくるかもしれない」


 「……そうですね」


 俺たちは、急いで民宿を後にし、漁港へと向かった。



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