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魔術師のいる部室  作者: 白い聖龍
秘密のある村
16/80

まるで、ゴーストタウンだ

夜刀浦駅に着き、ワンショルダーのリュックと淳子さんから頼まれた高さが15センチ横が5センチくらいの風呂敷に包まれた四角い箱を持って電車を降りる。

 駅は、いつも乗っている西金駅とは違い、敷地が広く何台も電車が停車している。

 俺は、ちょっと都会な雰囲気を出している光景に新鮮さを感じながらも駅の改札を出る。

 駅を出ると、周りにはデパートや、ビルが立ち並び、目の前には大型のバスターミナルがある。

 そして、昨日、淳子さんからもらったメモをポケットから取り出して内容を確認にする。


「えっと、次は陰巣枡インスマス行のバスに乗ればいいのか」


 俺は、バスターミナルへと足を運ぶ。

 ターミナルに着くと、1番から5番までのバス停に3台ほどが停車していて、俺は車両脇にある看板を確認し、4番に止まっているバスに乗り込む。

 バスに乗ると、男性の運転手が1人、乗客が後ろの席に若い女性2組、下車口近くの横の席に高年の老人が1人座っていた。

 俺は、乗るバスを確認するため、運転手に尋ねる。


「あの~すみません? このバスって陰巣枡村いんすます行で合ってますか?」


「………」


 聞こえていなかったのか?

 運転手からの返事がない、もう1度、俺は尋ねる。


「あの! このバスは陰巣枡村インスマス行ですか!?」


「……チッ………表のプレートに書いてあるだろ……」


 運転手は俺の大声に面倒くさそうに答える。


「……乗るなら500円だよ……」


 そう言うと運転手は手を出し、料金を請求する。

 俺は、男の態度にムカつきを覚えながらも、財布から乗車賃を渡し、後ろから2番目で老人が座っている所より1つ後ろの席につく。

 程なくして、バスは陰巣枡に向けて出発した。

 

 バスは、駅から国道に出て、海沿いの道を走っている。

 車両の内は、後ろのふたり組の女性たちが話し声が響いている。

 ふと、俺は前に座っている老人を見ると、じっと、窓の外を眺めている。


「はぁ……なんだかな……」


 そんな時、バイブレーション音が鳴り、俺はポケットから携帯電話を取り出して、画面の確認をする。

 メール受信のアイコンがあり、受信BOXを開く。


「淳子さんからだ」


 受信したメールには『お仕置き中』と書かれたタイトルに添付画像がある。

 画像を確認すると、ゴスロリメイド姿でホウキを持ち、恥ずかしそうな表情を浮かべた須藤先輩がアークライトの掃除をしている写真が添付されていた。

 

「先輩には悪いが自業自得だなって、お使い頼まれてる俺も人のこと言えないか」


「ねぇねぇ、お兄さん?」


 後ろの席から声を掛けられる。

 振り向くと、後ろの席に座っている2人組みの女性の片方からのようだ。


「はい、なんですか?」


 女性達は、年齢は大体20代前半で、1人は白の短パンに黒のTシャツ姿で、茶髪のショートヘア、もう1人は、茶色のズボンに

水色のシャツを着て、黒のセミロングだ。

 声を掛けてきたのは茶髪の女性の方のようだ。


「あなたも、陰巣枡に旅行ですか?」


「いえ、俺はちょっと人から届け物を頼まれて」


 俺がそう答えると、茶髪の女性は自己紹介を始めた。


「私は、伊藤香苗いとうかなえ、こっちは武藤沙希むとうさき2人とも大学生なの」


「俺は、望月秀一、高校生です」


 自己紹介を終えると、黒髪の武藤さんが俺に話しかけてきた。


「えっと~ね~私たちは~大学で民俗学を~専攻していね~」


「民俗学ってなんですか?」


 民俗学を知らない俺は、つい、そう言ってしまった。

 俺の答えが面白かったのか、2人はお腹を抱えて笑い出す。


「あはははは、沙希ってば、民俗学って高校生に言ったって分かるかけないよ」


「はははぁ~そうだね~、えっとね、民俗学っていうのはね、その地域に住んでいる人たちに話を聞いて、生活や風習、信仰や歌曲などを資料としてまとめることをするんだよ~」


 今まで、学業など数学や国語ぐらいしか知らなかった俺にはちょっと衝撃だった。


「へ~、それじゃあ、2人は陰巣枡には何かの研究で?」


「うんそうだよ、陰巣枡における風習のレポートをまとめるために2泊3日でね」


「そうそう~、そうじゃないと~香苗ちゃんの~単位が~大変なことに~」


 武藤さんの爆弾発言で伊藤さんが突如慌て始める。


「ちょ、ちょっと沙希!! 余計なこと言わなくていいの!!」


「あははは~、だって~」


 そんな話をしていると、バスが目的地に到着をする。

 バスが停車すると、運転手だった男は無愛想に降りていき、事務所と思われる建物にさっさと入っていてしまった。

 なんだか最後まで無愛想な人だなと感じつつも俺達もバスを降りた。

 降りた瞬間、強い潮の香りが俺の鼻を通る。

 

「ここが陰巣枡か……」


 バスの停留所は、大体20㎡くらいの広さで、地面はアスファルトでなくコンクリートで固められていた。

 ぐるりと周囲を見て回ると、事務所の脇に線路の跡らしきものを見つけた。

 

「前は電車が通ってたのかな?」


 そこは、線路に引いてある砂利が敷いてあるだけで、レールなどは撤去されていた。


「望月くーん!! 私たち、東風荘って民宿で泊まってるから、もし時間があったら寄ってねーー!!」


「あ、はーい!!」


 2人は俺に手を振り、停留所を後にした。


「んじゃおれも行くか……」


 俺も停留所を出る際に、一緒に乗っていた老人がバスを降りてきた。


「……さ………い………」


 どうやら何か呟いている。

 俺が何気なしに耳を良くすましてみるとこんなことを言っていた。


「ダゴン様ダゴン様今日はいいものが入ります。ダゴン様ダゴン様…」


 ダゴン様? なんのことだろうか?

 老人は、出口ではなく、運転手が入っていた建物のへと入っていった。


「……はぁ……なんだかな」


 一抹の不安を覚えつつも俺は停留所を出た。


 停留所を出ると、道はアスファルト部分は殆んど無く、土で雑草とかを取り除いただけの道が広がっていた。

 そして、海が近いのか波を打つをが、BGMのように流れていた。

 俺は、淳子さんから貰ったメモの地図を確認する。


「えっと、そうしたらこの道をまっすぐでいいのかな」


 地図片手に道を50メートルほど歩くと、目の前に集落っぽいものが見える。


「あそこ……かな……」


 集落に入ると、まるで平成と思えないほど木で出来た家が立ち並び、魚を開いて干しているいたり、桶や網などが外に置かれているが、人の気配がない。


「まるで、ゴーストタウンだ……」


 ゴクリと息のみ集落を歩く、家々からはやはり誰かいるのだろうか、視線を感じる。

 集落を歩き続けるが、目的の家が一向に見えてこないことに不安を感じた俺は、誰かに道を聞こうと歩く。

 すると、100メートルほど進んだところで、俺のほうに背を向け家の水道の前で何かをしている人を見つけた。


「ちょっと聞いてみるか……」


 俺が後ろから近づき様子を見ると、どうやら、干物にするのか魚を包丁で捌いている男性だった。


「あの~ちょっとすみません~」


「…………」


 俺を掛けるが、男は聞こえていないのか、それとも聞こえていても無視しているのか、黙々と魚を下ろしている。

 男の態度にムッとしてしまい、いつもの調子でつい大声を上げてしまう。


「あの!! ちょっと!! すみません!!」


 この声に男も気づいたのか、ヌッと立ち上がりこちらを向く。

 身長はだいたい2m近くある大男で、手には包丁、頭は少し禿げ上がり、目はギョロっと大きく、唇は魚のように少し飛び出している。

 

「あ……えっとですね……」


 男の姿に驚き、つい声が小さくなるが、男はかがむようにこちらをじっと見ていが黙ったままだ。


「あの……俺………摩周ましゅうさんって方のお宅に……いきたいんですけど……それって、こ、この道で合ってますか?」


 ギラリと光る出刃包丁に目をやりながらも、俺は蚊のような小さな声で尋ねると、男は道の向こうを指し、ドスっと座り込んで、元の作業に戻った。


「あ……ありがとうございましたーー!!」


 俺は、その場から逃げるように、道の奥へと一目散に駆け出した。


「くそ!! チョーーこえーー!! なんなんだよ!! この村!! さっきの男いい、運転手といい愛想が無さすぎるだろ!!」


 まるで、主人公にボコボコにされた子悪党のような台詞を叫びながら、目的地へと急いだ。


「ぜぇぜぇぜぇ……はぁ……」


 集落を抜けると、道が開け目の前に大海原が広がり、潮風が体に当たり心地が良い。


「はぁはぁ……えっと……」


 俺が周りを見ると、右には漁港なのか船が何隻か止まっているのが見え、左の方には200mぐらいの距離だろうか、崖の上にこの集落には似つかわしくない5階建てのビルが建っている。

 屋上に東風荘っと描かれている看板らしいものが見える。

 俺はもう1度地図を確認にし、どうやらお届け先の摩周さん宅はどうやらあそこのようだった。

 

「なんだ……目的地一緒じゃないか……」


 バスで一緒になった2人組み、伊藤さんと武藤さんもあそこへ宿泊していると別れる時に言っていたのを思い出した。


「さて、後もちょっと……」


 俺は、目的地である東風荘へと進む。


 ビル前まで来ると、白いコンクリート作りで少し古びた雰囲気を持つ東風荘があった。

 入り口の自動ドアから入ると、ロビーには椅子が4つと受付カウンター、カウンター右脇に階段と左脇にドアが1つ、そしてここで飼育しているのだろうか何匹かの魚が入った水槽がコポコポというと音を立てていたが、人気がない。

 俺は、カウンターに備え付けてある呼び鈴を押すと、奥の部屋から中年の男性が出てきた。


「よくお出で下さいました お泊りですか?」


 集落いた男や運転手に比べると、かなり愛想のいい対応につい心が潤んでしまうが、俺は淳子さんから頼まれた用事を思い出した。


「いえ、俺…いや、僕は白井淳子さんの代わりにここに荷物を届けるように言われた望月秀一といいます えっと、摩周幸造ましゅうこうぞうさんでいらっしゃいますか?」


 俺が淳子さんに渡された風呂敷を差し出すと、中年男性はそれを両手で取り御礼を述べた。


「ええ、私が摩周です、わざわざこんな辺鄙なところまでご苦労様です、疲れたでしょう? もしよろしければお茶でもいかがですか?」


「あ、いえ、僕はこれを届けるだけですか、もう帰ります」


「そうですか……ところで、外に車とか止まってませんがどうやってここまで?」


「夜刀浦からバスでここまできましたけど?」


 摩周さんがロビーに備え付けられている時計を見ると、俺も釣られてみるが、時間は13時を少し回ったところだ。


「そうなると、次のバスの時間は夕方の5時くらいになってしまいますね」


「ええ!! 夕方!!」


 摩周さんのは話によると、陰巣枡村行きのバスは1日に3本、午前の8時と11時、午後は17時に1本だけでそれを過ぎると、明日の朝までバスを待たなければならない 夜刀浦からバスで1時間半とても歩いて帰れる距離じゃない。


「どうしよう、まいったな」


 俺は腕を組んで悩んでいると、右の階段方から声が発せられる。


「あ~~望月君だ~~~」


「あ、ほんとだ」


 声のするほうを見ると、先ほどバスで一緒だった、武藤さんと伊藤さんが階段を下りて俺に近づいてきた。


「もう用事終わったの~~?」


「ええ、どうやらお届け先がここだったみたいで」


「わぁすごい偶然!!」


 俺は2人に事情を説明すると、伊藤さんは何か思いついたのか1つ提案をした。


「時間があるなら、私たちの部屋で来なよ」


「いや~、それだと、ご主人に悪いんじゃ……」


 宿泊客でもない俺が、客室に行くことはさすがにまずいと感じた俺は横目で、摩周さんをみると、彼はニコリと笑顔作り言う。


「うちなら構いませんよ、よろしければ後でお茶と菓子でも用意しましょうか?」


「ねぇ~、ご主人も言っているし~どう~~?」


「え~と、それなら……」


 3人の意見に俺は折れ、バスの時間が来るまで2人が宿泊する部屋にお邪魔することになった。


「それじゃ決まりね!! こっちこっち!!」


「早く早く~~」


 伊藤さんと武藤さんに手を引かれ部屋まで案内される。

 

(わぁ……女の人に手を掴まれるってお袋と先輩以外じゃはじめてかも……)


 そんな、純朴少年のような考えが頭を過ぎる中、俺も階段を上がる。

 2人が泊まっている部屋は3階の1番奥の場所にあった 入り口脇には非常用の階段があることを示す非常灯がある。


「ここが私たちの部屋だよ~~」


 武藤さんが部屋を開けると、広さ6畳ほどで、中央にはテーブル、右側にテレビに置時計、左には布団が入っていると思われる押入れ、右側隅っこには彼女らの荷物と思われるものが置かれていた。


「それじゃ座ってて、私、ロビーにお茶菓子貰いに行って来るから」


 そう言うと伊藤さんは部屋を出て行った。

 ふと、テーブルの上を見ると、2人が何か資料をまとめるためか、筆記用具に大学ノート、何かの資料本を幾つか置いてあった。


「あ~~これね」


 武藤さんが、笑いながら1冊を俺に差し出す。

 それを受け取り、パラパラ捲ると、外国のいろいろな生活の姿を映した写真や、それついての説明が書かれていた。


「大学っていろいろ大変そうですね?」


「そんなことないよ~私は~好きなこと勉強できるから~~とっても楽しいよ~~」


「ただいまー! あれ? 何話してるの?」


 ロビーから伊藤さんも戻ってきて彼女らといろいろな話をした。

 大学のこと、勉強のこと、サークルのことそして将来のこと。

 話をしているうちに俺は思った。


(将来か……)


 将来、今は須藤先輩と一緒に探索者という仕事を高校の勉強と一緒にやってはいるが、もしそれが終わった俺はどうすればいいのだろうか?

 また、中学生時代と同じく、学校へ行き、家に戻り、ゲームをプレイする毎日……高校生活でも俺はそれを望んでいたはずだ……

そうはずだった。

 そんな中いつの間に時間は経ち、部屋に備え付けられている置時計は、16時15分を回っていた。


「あ、俺そろそろ行かないと」


「え、もう時間?」


「時間が経つのは早いです~~」


 俺は、2人にロビーまで見送られる。


「すみません、なんか俺に付き合ってもらって」


「ううん、こっちも楽しかったよ」


「望月君~気をつけてね~~」


 2人と別れ、俺はバスの止まる停留所へと急ぐ、今の時間は16時45分、ギリギリ間に合うはずだ。

 駆け足であの薄気味悪い集落を駆け足で抜け切り、停留所入り口にたどり着く、現在時刻は16時55分ギリギリだ。

 停留所に入るとそこにバスの姿はない。


「あれ!?」


 俺は慌てて携帯で時間を確認する。

 16時57分、まだ出発時刻ではないが現にバスはいない。

 どういうことなのか、現状を確認するべく停留所にある事務所の建物に入ると、どうやら先客がいるらしい。

 

「いったいどういうことやねん!! バスはもう出たなんて!!!」


 この聞いたことのある関西弁、俺は目の前にいる人物に見覚えがある。

 小柄な体系、金髪を2つに縛った髪型、白い肌。


「おい、藤波」


「ふぇ?」


 彼女もこんなところで聞いたことのある声に話しかけられ変な返事をし、こちらを向く。


「やれやれ……ほんと、オマエとは何かしらトラぶってるときによく会うな」


「ええ!! 望月やん!! なんでここに!!」


 驚愕する藤波を尻目にそれは俺の整理だと心の中で思ったのだった。


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