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魔術師のいる部室  作者: 白い聖龍
魔剣士
11/80

女なめるなや、兄ちゃん!

 西金アリーナーからアークライトに着いたが、時間はすでに夕方6時ぐらいになってしまった。


「こんばんわ~」


 店の中に入ると、周りには、古い机や時計、つぼや、どこかの部族がつけていそうなお面やエジプトにありそうな像などなど、いろいろ置かれている。


「お、来た来た、こっちだよ秀一君」


「やれやれ、思ったりより遅かったね」


 淳子さんと須藤先輩は、店の置くのカウンターでお茶を飲みながら俺を手招きしていた。


「わざわざごめんね、呼びつけてさ」


「いいえ、別にかまいませんよ、とこで用事ってなんです?」


「なんだ私は無視か」


 嫌味を言った先輩を無視し、呼び出したことを淳子さんに謝罪され、早速本題に入る。 すると、カウンターの下から、布に包まれた物を淳子さんが取り出した。

 それを、置く際にゴッツっという重そうな音を立てる。


「これを秀一君に渡そうと思ってね」


「これはなんですか?」


 淳子さんが布を開くと、中からは1丁の銃が出てくる。

 その銃は、色はシルバーで、グリップのところは黒いラバーのような感じの物、形的には、おそらく映画とかで刑事が持っていそうな、リボルバータイプというところだろ。

 しかし、ここは日本で、銃の所持は、法律違反なはずだ。


「えっと、これって銃ですよね? 本物?」


 もし本物なら、この人を警察に突き出してあげるのが、善人としての勤めであるが、そんな思惑を淳子さんは笑飛ばした。


「ははは、これはモデルガンだよ、ただし、魔道具マジックアイテムとして改造をしているけどね」


「魔道具ってなんです?」


 淳子さんの説明によると、このモデルガンは、実弾は撃てないが、その代わりに魔術挿入した弾丸を打ち出せるように改造を施してあるとのことだった。


「まぁ、望月君は先の魔術の練習を見てのとおり、まだ未熟だからな」


 先輩は、魔術の練習がうまく言っていないことを嫌味のようにお茶を啜りながら言い放つ。

 アークライトに来る暇があれば、アリーナでの取材を手伝ってほしかったよと思う。

 そんな先輩を放置し、俺はカウンターの上に置かれた銃を手に取る。

 持つと、ズシリと重い、重さは大体、1キロぐらいはあるんじゃないだろか。

 

「ところで、銃を撃った経験は?」


 淳子さんはそんな質問をしてくるが、答えはNOである、いままで、俺は本物どころから、モデルガンを持つのも今日が初めてだ。

 

「そんなのあるわけないじゃないですか?」


「なら、ゲームならどう?」


 ゲーム……たしかにそれなら、FPSファーストパーソン・シューティングゲームでなら、撃った経験はある、あくまで、ゲームの中の話だ。


「ちょっとは、齧ったことはありますよ、けど、モデルガンとかは初めてですよ」


「使いこなせないようなら私が使ってみようか?」


 質問に答える俺に、相変わらず先輩が茶々を入れてくるが、それも無視し、淳子さんと話を続ける。


「まぁ、魔術が使えるようになるまでの繋ぎと考えてもらっていいかな? 後はこれ」


 淳子さんは更に、カウンターの下から、この銃の弾丸を取り出す、弾丸には先端には、クリアブルーの球状の弾が詰め込まれていた。


「この先っちょに詰まっているのが、魔術弾で飛距離は大体30mってところかな、後、わかってると思うけど絶対に人には向けないこと」


「分かってますよ」


 そう言い俺は、銃を一眼レフなどと一緒に持ってきたバックに入れようとする。


「あ、ちょっとまって」


「え」


 銃を仕舞おうとした俺に淳子さんが待ったをかける。


「えっとね、グリップのところにあるエンブレムを押してみて」


「エンブレム?」


 銃のグリップをところを見ると真ん中に盾の絵が描かれたエンブレムが填められている。

 俺は、淳子さんに促されエンブレムを押す、銃は、一瞬光ったと思ったら、盾の絵の描かれた1枚のカードになった。


「へー便利ですね」


 カードを見ると、”guardian”と書かれている。


「ガーディアン……守護者か……いい名前じゃないか、望月君」


「まぁ、弾とか無くなったら、私に言ってくれれば仕入れるからさ」


「仕入れるって、えっ! タダじゃないんですか!?」


 淳子さんの一言に俺は驚愕する、RPGとかならここは、補充は無料が定番なはずなのだが、現実は非常である。

 淳子さんの方を見ると、右手の人差し指と親指でOの形を作り、ニヤニヤ笑っている。


「今回は、銃と弾はサービスしとくよ、人生なんでも先立つものが必要だよ、秀一君」


「とほほ」


 銃はタダでゲットできたが、今後、弾丸という消耗品がかかることを考えるともっと他の武器はなかったのかと思いたくなる。


「さて、ところで、2人にこれをみてほしいんだ」


 淳子さんは、さっきとは打って変わって、急に真面目な態度になった。 そして1枚のFAX用紙を俺達に見せた。

 俺は、それを受け取り内容を読み上げる。


「えっと何々、『成西市において、泥で出来た人型の怪物により、人が襲われている事件が発生する、なお、発生場所は1か所ではなく、複数に同時に発生した事例あり、探索者各位は、成西市に応援に向かわれたし』か、成西市って確か隣の市ですよね、先輩」


「ああ、そうだな」


 横でお茶を啜っていた先輩は、面倒くさそうに答えた。


「こら恵美、ちゃんと内容を読まないか、後で確認したいって言ってももう見せないよ」


「そんなこと言われなくても大丈夫だよ 淳子姉、とりあえずそいつを退治してくればいい話だろ?」


「端的に言えばそうですけど、発生したところってどこなんですか?」


 淳子さんは成西市の地図を広げ、事件が起きた場所を記す、公園、学校、工事現場、神社、どこも一貫性がなくばらばらだった。


「んまぁ、事件の詳細を聞いている限りはどうやら、今のところは、人を脅かしたりとかなんだよね それがエスカレートする前に何とかしてこいってことだから、そこまで難しい依頼ではないよ……ただ」


 淳子さんは突然、言葉を詰まらせた。


「ただ? 何かあるのか淳子姉」


「ああ、どうやら、他の探索者からの連絡で、白い刀を持ったフードを被った奴に襲われたらしいんだ」


「そいつも、仲間とか?」


 俺の質問に淳子さんは、煙草を1本取り出し吸いながら答えた。


「泥人形を操ってる奴を追い詰めたんだが、いきなり、こっちに襲ってきたんだけど、そいつも、泥人形が襲っていたらしいからつるんでるわけではないみたいなんだ」


「ふーん、フードを被った剣士ね」


 先輩は、顎に手を当てて何かしら考え事をしていたが、何か思いついたのか淳子さんに尋ねる。


「淳子姉、先ほど、連中の写真は無いのか?」


「ああ、それなら、ちょっとまってて」


 淳子さんはカウンターから奥の部屋に行き、2枚の写真をカウンタの上に置く。


「左が泥人形使い、右が例の剣士だよ」


 左の写真には、細身で、メガネを掻けた、スーツ姿の男性が写っている。

 右の写真には剣士が写っているはずなのだが、少しピンボケしていて、はっきりとは写っていない。


「すまないが、2人には明日、成西市に行って泥人形使いの討伐に向かってくれ」


「分かりました」


「はいはい」


 やれやれという相変わらずの先輩の態度に俺は釘を刺す。


「明日はサボらないでくださいね」


「分かってるよ、望月君、君も心配性だな」


 はぁ、結局は、ゴールデンウィークはゲームをプレイする時間はなさそうだ。



 早朝、西金駅から2駅ほど進んだで、成西市に俺達はやって来た。

 電車を降り、改札へ向かう中、どこから捜索するかを先輩と相談する。


「先輩どこから探しますか? やはり、一旦、事件が起きたところを回りますか?」


「ん~~、そうだね」


 先輩は、朝も早かったためか、いつも以上にだるそうな返事を返してくる。

 そんな先輩の態度に、初依頼の俺は不安を隠せない。


「ちょっと、先輩確りして下さい、俺は今回初めてなんですから!!」


「ふぁぁあ、そうだね……望月君」


 生あくびをする先輩に、苛立ちを覚えてくる。


「だ・か・ら!! これからどうしますかって聞いてるんですよ!! 俺は!!」


「そんな、大声を出さなくても聞こえてるよ……まったく、君は相変わらず短気だね」


 やはり、からかわれているのだろか……そんなことを考えていると、先輩は1つの提案をしてくる。


「おそらく、事件のあったところは、すでに、他の探索者達が回っているだろうし、ここは手分けして探した方が、得策だと思うのだけれど?」


「う……」


 たしかに、先輩の言うとおり、前起きたところに犯人が現れるとは限らないし、2人で行動するよりかは

手分けした方が得策なのかも知れない。


「淳子姉から写真のコピーを貰ってるよね?」


「ええ」


 俺は持ってきたワンショルダーのバックから、泥人形使いと剣士の写真を取り出し確認する。


「なら、私は市内地を探してみるから、望月君は国道沿いに探索してくれ」


「分かりました」


 先輩の提案に賛成し、俺が駅から国道方面へ向かおうとする時、真面目なトーンで彼女が声をかける。


「望月君、もし、犯人を見つけても絶対に深追いしないで、私に連絡をしてくれ、魔道具を渡されているとはいえ、魔術師としては、君はまだ未熟だ、だから絶対に無理は……」


「はいはい、わかってますよ」


 先輩の心配の声に適当な返事を返して国道へ向かった。


 先輩と別れ、国道に出ると、ダンプやらバスやら多数の車が往来をしている。


「とりあえず、歩いてみるか……」


 俺は、歩きながら、コンビニや、車屋、デパートなどを探索したが、それらしき人物を見つけることが出来なかった。

 

「はぁ……成果なしか」


 とぼとぼと、道路沿いに歩いていくと、視界に大型ゲームセンターの看板が目に入ってきた。

 

「………ちょっとだけ見てみるか」


 そうこれも、探索、犯人を捜すための探索だ。 おそらく先輩も俺と分かれた後、あの性格だ、必ず何処かでサボっているに違いない、そうだ、そうに決まっている。 だが、俺は違う、あくまで犯人捜査のためだ。 と自分に言い聞かせ、ゲームセンターの方へ足を向けた。


 ゲームセンター前に着くと、いつも行っているところと違い、大きな駐車場にバッティングセンターが外にあった。 やっぱり、地方大型店は、やっぱし違うなと感心しながら、自動ドアを潜る。


 店内には、大型の体感筐体や、UFOキャッチャー、大型のメダル筐体などなど、いつも行っているところには置いていないゲーム機が置いてあった。


「さて、何からやるかな」


 店内を物色していると、UFOキャッチャーコーナーに人の群れが出来ている。


「なんだろ?」


 俺もそこへ行ってみると、人垣でよく見えないが、なにやら揉め事のようだった。

 

「てめぇ!! 俺が両替している間に撮りあがってよ!!!」


「何いうてんねん!! そこから離れた方がわるいんじゃ!!」


 何処かで聞いた声がする……、人垣を掻き分け声の主の見える位置まで来ると驚く人物がいた。

 騒ぎの中心にいたのは、食人鬼の時に絡んできたあの金髪の男性と、私服だが、これまた人を変態扱いした金髪関西弁の女子高生が言い争いをしている。


「あぁ! 俺がここの距離まで持ってくるのに幾らつぎ込んでると思ってんだよ!! ゴルァ!!」


「知らんがな!! だったら、ゲーム機に名前でも買いとけや!! あほんだら!!!」


 どうやら、喧嘩の原因は、景品の取り合いらしく、お互い一歩も譲らない。


「くそこの女!!!」


 金髪男性は、腕を振りかぶり、女子高生に殴りかかろうとする。


「ふん!!」


 女子高生は、それをヒラリと交わした、攻撃を回避された男性は俺の方へ勢い余ったのか突っ込んできた。


「ええ!!ちょ!!」


 俺も逃げようとするがときすでに遅し……。

 余程勢いを付けたのか、俺と男性は激しくぶつかり、俺は下敷きになってしまった。


「いっちちちち、この野郎……あ、てめぇは!!」


 金髪男性は俺を顔見るなり、いきなり胸倉を掴んできた。

 ぶつけられてフラフラになっていた俺は、為す術もなく男性に捕まってしまい。

 彼の顔が俺の顔に近づける。 男性の顔を間近で捕らえると、食人鬼の呪いが効いているのか、目には深いクマと頬は少しコケ、無精ひげを生やしている。


「ええっと、なははは」


「丁度いい!!! てめぇがこの分俺に払えよ!! あぁ!! ゴラァ!!」


 うん、またしても八つ当たり、俺はコイツの手下になった覚えは無いのだが……。


「ええっと、俺は、何もしてないんじゃ……」


「うっせんだよ!! ボケが!! さっさと出せや!! カス!!」


 そう問答していると、男性の後ろから、さっきの女子高生の声が聞こえる。


「なに関係ない人にチョッカイだしてんねん!!!」


 男性が振り向くと、女子高生は、彼の顔面目掛けて、ハイキックをお見舞いする。

 その際、チラリと彼女のスカートからピンクのパンツが見える。

 ゴキっという音が聞こえ、男性は白目を向いて泡を吹いてバタリと俺とともに倒れてしまった。


挿絵(By みてみん)

「女なめるなや、兄ちゃん!」


 ビシッとキメ台詞を吐く女子高生だったが、またしても揉め事に巻き込まれた俺は本当にツイてない。


「ごめんなー、変なことに巻きこ……ってあの時の変態やん」


 倒れた男性と一緒に倒れた俺を女子高生が手を差し伸べてくる。

 やはり俺は変態扱いなのか……納得はいかないが、助けてくれたことに俺はお礼を言い手を取る。


「あ、ありがとう」


「どういたしまして、なんや、痴漢の次はストーカーか? 兄ちゃん?」


 どういうわけか、彼女の中で俺は痴漢からストーカーへとランクアップしているようだった、正直そんなジョブチェンジはいらん。

 そうこうしているうちに、店員2人がやってきて、金髪男性をゲームセンターの奥へと連れていった。

 俺達も、事務所まで連れていかれ、事情を話したらすぐに開放となり、裏口からゲームセンターの正面に戻って来たとき、女子高生が話し掛けて来る。


「ほんと、あんたもツイてないな、この間は私に変態扱いされて今度は絡まれてるなんてな~」


「いいよ、こういうのはこの所慣れてきたところだから」


 彼女は「そうか」というと、店の正面にある自販機からジュースを2本買うと1本を俺に放りキャッチする。


「おっと」


「さっきのお礼や、これで堪忍や」


 ジュースをカシュっと開け、一気に飲み干した彼女は、自己紹介を始めた。


「まぁ、これも何かの縁や、私は ”藤波 リタ”、成西高の1年や、あんたは?」


「俺は望月秀一…… 西金高1年……」


 成西高校か、昨日の剣道大会で西金うちとぶつかったところか。

 ぶっきらぼうに返事を返した俺に、藤波は話を続ける


「なんや、同い年かい」


 同世代だったのかうれしかったのか、彼女は機嫌がよくなったらしい。

 うれしそうな様子の藤波と話をしていると、ゲームセンターの扉が開き、1人の人物が出てきた。

 その人物を見て俺は当初の目的を思い出す。


「あ……」


「どうしたんや?」


 藤波の返事を他所に、俺は出てきた人物の顔を確認する。

 泥人形使いだ、服装は私服だが、間違い無い。


「えっとごめん、藤波、俺、行かないと」


「あっそか、なんか引き止めて悪かったな」


 俺は、藤波と別れ男の後を追った。





 

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