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Lesson1.ワスレナグサ(7)

 二日目の昼過ぎ、また少し雨足が強くなってきた頃に前方を行く馬車を見つけた。幌をつけているが、中に人がいることがわかる程度の簡素な作りだった。遠目から大体6~7人程度、御者役を入れて8人パーティーだろうと推測した。


「なんとか、追いつきましたね」

「事情を話して、協力を求めてみるか」

「んー、そうですね」


 コレットが逡巡したのが気になったが、クダチは馬車の横に馬をつけ、併走しながら呼びかけた。


「おーい、そっちもブレイバーの受験者か」

「何だ、お前」


 御者役の男が馬を止めると、何事かと受験者たちが荷台から顔を出す。皆一様に苛立っているように見えるのは、自分たちが出遅れていると認識していて、焦っているからだろう。


「邪魔する気じゃないだろうな」

「そんな気は無い。ただ、少し聞いてほしい話があるんだ」

「おい、スノウ、こんな奴らにかまってる暇ないだろ」

「そうよ、早くしないと全部狩られちゃうじゃないの」


 パーティーを組んでいても、結局は受験者同士。お互いが足を引っ張るのではないかと疑心暗鬼にかられているのは間違いがなかった。


「まあ、話を聞く程度は問題ないだろう。皆も降りてこいよ」


 スノウと呼ばれた御者役の男が、この臨時パーティーのリーダーらしい。年長者だからリーダーに祭り上げられた、そんな感じだ。


「すまない、時間は取らせないから」


 クダチは、簡単に二人の自己紹介をすると、これまで調べた内容を推測を交えて惜しげもなく提供する。ゴブリンが移動しているらしい事、凶悪なモンスターが出現しているらしいこと、村が襲われる可能性が高いこと等など。

 しかし、情報を出せば出すほど、逆に相手の不信感は募っていくようだった。すべて聞き終えた後にスノウが他の者を代表して尋ねた。


「その情報は、お前等が貴重な1日を潰して得たものだろう。何故簡単に俺たちに教えるんだ」


 他の者も大きく頷いている。先行して到着することのメリットを潰してまで、情報の取得に費やしたのだから、その情報を何の対価も無しに提供するなど考えられないのだ。口の悪い者はあからさまに罠だと騒いでいる。


「依頼主の安全が優先だろう、報酬も貰えなくなるしな。なら先に村を守るべきだと思う。俺逹2人だけではそれが難しいから、君らに声をかけた」

「一応筋は通っているか…」


 スノウは顎に手を当てて思案している。


「追いつけば他の連中にも同じ話をするつもりだ」

「わかった。相談させてくれ」


 自分はリーダーだが、重要な方針の決定は合意制をとっているからと、スノウは離れた場所に仲間を呼んで話し合いを始めた。

 仲間をなだめすかしながら、事情を説明しているスノウの後ろ姿を見て、コレットは大変そうだなぁと本気で同情した。


「なんか、人の良さそうな感じです」

「そうだなぁ、けどアイツ、早死にするタイプだと思うよ」

「早死にですか」


 クダチが言うには、冒険者では良い奴ほど早く死ぬらしい。確かにスノウは仲間が危機に陥れば、我が身を省みず飛び込んでいくタイプに見える。

 うまく利用されてポイされる可哀相な役回りに思えるかもしれないが、それでも独善的な人よりは何倍もマシだと思うコレットであった。

 間もなくして、スノウが戻ってきた。他の仲間はもう馬車に乗り込んでいる時点でおおよそ見当が付いていたが、答えを待つ。


「悪いな、俺たちは予定通りゴブリン退治に動く」

「そうか…いや、いいんだ。時間を取らせてすまなかった」

「いやこっちこそ、貴重な情報をもらったのに力になれなくて申し訳ない。俺個人としては、協力したいと思うんだが、こういうとき臨時パーティーってのは面倒だな。リーダーなんてお飾りみたいなもんだし」

「ははは、苦労してるみたいだな。特にあの魔法使いの女性が難敵そうだ」

「なんでわかる!いやそうなんだ、出発が遅れたのだって…」

「へえ、大変だな。うちのコレットなんか…」

「うそだろ、こっちは…」


 コレットは、話しながらチラチラ盗み見をしてくるスノウから、身を隠すようにフードを目深にかぶり直した。

 最近は女性としての特徴もしっかりと出てきていて、あまりじっくり見られると恥ずかしいのだ。

 しかし、そう気にすることもなかった。すぐに馬車から女性の罵声が飛んでくると、スノウは大きく舌打ちをした。


「もう行かないとな。試験が終わったら再会しよう」

「ああ、酒でも一緒にな」

「スノウさんも、お怪我なさらないよう、気をつけて」

「うう…なんて優しい。コレットさん、うちのパーティーに来ないか?」

「おいっ、堂々と引き抜くなよ」

「うるさい、俺には癒やしが必要なんだよ」

「知るか、ほら急がないと仲間が待ってるぞ」


 悔しそうな顔を隠そうともせず、スノウは馬車へと戻っていく。途中何度もコレットの方を見てアプローチしていたが、当のコレット本人はただ笑顔で手を振るだけであった。


「さて、そろそろ俺たちも行くとするか

「そうですね、雨足も強くなってきましたし」


 こうして、コレット達は予定より半日おくれてクムリ村へと着いた。

 道中で他のパーティーにも遭遇したが、皆一様に同じ反応を返されただけだった。

困りました…3度も前面書き直し。

なんか、おかしな回になちゃったかもしれません。

はぁ…。

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