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2012/03/25 ゴールデン・レトリバーをラブラドール・レトリバーへ修正
親友エミリアナを泣きながら埋葬して1ヶ月後。
友好国であるツァオ国への戦争支援のため準騎士の父さんが徴兵されて軍に入り、戦地に赴くことになった。そしてその間、一人きりになる僕は父さんの姉夫婦である伯母達の家に身を寄せることになった。
伯母のイスキエルド一家は4つばかり離れた町に住んでいた。この家にはキリル伯父さんとウリヤーナ伯母さん、そして二つ年上の従兄のミハイル兄の3人で暮らしている。そういえば僕の祖父母は神都ダーンスレイブにいるらしいけれど、まだ一度も会ったことがないなぁ。
僕は村の友達たちと別れて町へと移り住み、そこではよくミハイル兄と一緒に外へと遊びに行っていた。
「へー。ミハイルの従弟かぁ。かわいいじゃん」
「は、はじめまして。エミリアノです」
「よろしくなー。よっしゃ。新入りが来たことだし、今度色々と案内してやろーぜ」
「ひっひっひ。いいもの拾える場所とか教えてやんぜ」
ミハイル兄の子供グループにも受け入れてもらって、家の手伝いをしながら町を駆け回っていた。
「おいっ、何やってんだ!」
「ひどいことしないでよ!」
「あーん? なんだお前ら」
ほかにもこんな風によく近所の悪ガキグループと、ミハイル兄と僕の二人でケンカしていたっけ。
僕はエミリアナがいなくなってから、少しだけ変わったと思う。いつも側にいて僕をかばってくれた親友はもういない。だから僕はエミリアナが眠るお墓を前に決めたんだ。
「エミィ、いままでずっとありがとう。ぼくはだいじょうぶだから。もうなかないから。いじめられても、なくもんか。だからね、しんぱいせずにやすらかにねむっててね」
そう。僕はあの時親友にもう涙を見せないと決心した。泣くといつもエミリアナは心配そうに鼻を寄せて一声鳴き、慰めるように体を寄せてきてくれた。もし、僕がまた泣いたら神の御許にいるエミリアナが心配して吠え立てるかもしれない。だから、もうエミリアナがそんな心配はしなくていいように絶対にどんな事があっても泣くものかと決めた。
「ひどいことして泣かせるなよっ!」
「うるせー! いつもいつも生意気なんだよお前ら!」
「おんなの子もおとこの子も、なぐって泣かせるやつはゆるさない!」
まあ、お互いよくボコボコにしたりされたりで、どちらかというと負け戦が多かったのだが、本当無茶な事をしていたものだと思う。
何度殴られても、蹴られても、僕たち二人は必死に殴り返して、どちらかが倒れるまでやり合っていた。
「だいじょうぶ?」
「……スン……クスン。ありがとう」
「もしよかったらぼくたちといっしょにあそばない?」
「いいの?」
「もちろん! ミハイル兄もいいよね」
「おう! どんと来いだぜ」
「あ、ありがとう。ありがとう」
けどまあ、多少痛い思いをしてもこうやって遊べる友達が増えるのは嬉しいと思えた。
何度やられても諦めない。それが僕らだった。
僕は泣き声を聞くとどうしてもエミリアナの声を思い出してしまい、それが僕に勇気を与えてくれた。殴られる恐怖に立ち向かうことができた。
天国のエミリアナに無様な姿をみせられない。それがたぶん全てだったんだと思う。
彼女の存在は幼かった僕の大きな比重を占めていた。
「エミリアノちゃんは何のお話が好きかしら?」
「騎士さま! いちばん好きなのはカーン王さまのお話です、ウリヤーナ伯母さん」
「ああ、7人の王妃様と一緒に空飛ぶ聖島に乗って九つの大禍を鎮めて回った王様の伝説ね」
「うんっ」
九つの大禍とは世界に伝わる御伽噺、夢物語だ。神話の時代に突如世界に異変が9つ起こり、神々は精霊と妖精達と力を合わせて星剣エスペランサーを創ってそれに立ち向かったという伝説。更に遥か昔に一度神々の施した九つの大禍の封印が全て解けた事により、立ち上がった一人の王様が星剣を手にして再封印をして回るという伝説がある。
僕はその再封印をして回った心優しいカーン王の話が好きだった。次に好きなのはやっぱり根強い人気を誇るタロウル竜騎士団の初代騎士団長様のお話かな。ナインヘルツ歴史上最強最悪の災厄と認定され、唯一特別な3A+の評価を戴いた獄冥戒竜。それを打倒した騎士団長様と炎と鮮血の15戦衣様達の話だ。
獄冥戒竜との決戦もほとんどひどい脚色がなされた大衆向けの『物語』という位置づけだけれど、それ以上に九つの大禍の伝説は単なる空想の話として語り継がれてきた。
……そう。それが当時わずか数年前までの扱いだった。
4851年にこの認識は一気に覆された。
その年、何者かの手によりナインヘルツNo.2”空の魔獣”の封印が解かれ、彼の魔獣はその咆哮を天空に轟かせた。そして一夜にして三カ国が降り注ぐ雷により灰燼と化した。その後も甚大な被害を出し続けた彼の大禍は世界の歴史に悪夢として刻まれた。
それ以降、九つの大禍の存在が実証されたとして世間は大いに揺れた。他の伝説の調査や研究が活発になったり、騎士団魔導団があっちこっち派遣されたり、変な宗教団体が跋扈したりと当時を思い出せば随分と不安定になっていたものだと思う。
まあ、そういった偉業を成し遂げた騎士の話を子供の頃の僕は特に大好きで、よく父さんや伯父さん伯母さんにせがんでいた。そしていつか僕も騎士になりたいと、子供たち皆が一度は夢見るそれを胸に抱きながら新しい暮らしを続けていた。
そして僕が移り住んで少し経つと戦争が終わった。
当初の下馬評を覆して弱小国のツァオ国が、世界四大騎士団の一角である黄風騎士団を擁する青狼国を見事破ったのだ。
後になって、この戦争はフィーラル大陸東部を荒らしまわる青狼国を打倒するためにツァオ国を矢面に出した代理戦争と言われるようになった。東部でも弱小国であるツァオ国に青狼国が戦争をふっかけてきた所に、青狼国を目障りだとする各国が支援に乗り出して青狼国は潰されたという話だ。
なお、支援の中には僕らの祖国で、世界第一の強国であり超大国のダーンドール神国もあったのが決定打と言われていた。神国は基本的に中立の立場だけれど、よく調停者として頼ってきた弱小国家の仲介にまわることがある。そのため弱小国家以外には結構恨まれてたりする。実際ぶち切れた数カ国が攻め込んできた事も一度や二度ではないくらいあったとの事だし。
あと噂話だけれど、同じく南の大陸の超大国のタロウル帝国の支援もあったと言われている。でなければあんな小さい国があの恐ろしい青狼国に勝てるわけがないって家族はおろか、町の皆も話していた。
ううん、ツァオ国の『幻獣騎士団』は色々と情けない世界最低の最弱騎士団として笑い話がいくつもあって、東の果てから西の果てまでその珍騒動が響き渡っているくらいだからなぁ。かつての騎士団長が小鬼に誘拐されたと聞いた時は本当何かの間違いだと思ったし。後輩なんかは幻獣騎士団の実態は、騎士でもなんでもない良いところの坊ちゃん達が騎士ごっこをやってるだけだって言い切ってるくらいだしね。
何はともあれ戦争が終わって、けれど帰ってくる兵士さんの中に父さんの姿はどこにもなかった。
1週間、1ヶ月、半年と経っても父さんから何一つ連絡もなく、生きているのか死んでいるのかも分からず、結局そのまま帰ってこなかった。
そして、ずるずるとウリヤーナ伯母さんの家に厄介になっている間に、伯母さんに赤ちゃんができた。
「ほーら。ミハイルちゃんもエミリアノちゃんもこちらにいらっしゃい。新しい家族がお腹にいるのよ」
「母ちゃん、俺弟がいい! そしてエミリと一緒に三人で遊び回るんだ!」
「うふふ。ねえエミリアノちゃんはどっちがいい?」
「え?」
まさか僕に話を振られるとは思っていなかったから、本当にうろたえた。
「弟と妹。どっちがいいかな」
「え、えっと……僕は、妹かな」
「そう。じゃあ頑張って可愛い赤ちゃん産まないとね。二人とも期待してて」
そう言って伯母は柔らかく微笑みながら、僕とミハイル兄の頭を撫でてくれた。
「おう! 母ちゃんはゆっくりしててなよ。俺とエミリとでしっかり家の仕事やるからさ! な、エミリ」
「……うん!」
「二人とも、ありがとうね。いいお兄さんが二人もいるなんて、この子も幸せね」
僕はあくまで居候だ。父さんが帰ってきたら、元いた村に帰る事になるんだと思っていた。だから僕の中のどこか奥底で『親戚』という『家族』より一歩遠くて、けれど『他人』というには近い、そんなあやふやな距離感をもてあましていたんだと思う。
そしてたぶん、今思えばウリヤーナ伯母さんはその僕の不安定な距離感に気付いていたとしか思えない。でなければああも自然に、僕は『家族』の中に含まれているんだと何度も何度も安心するように触れてくるはずがない。
僕にとって、ウリヤーナ伯母さんは一番頭が上がらない人だ。
翌年、ついに家族が一人増えた。
ウリヤーナ伯母さんが産んだのは女の子だった。伯母さん譲りのアンバーの瞳とアッシュブロンドの髪。ユーリヤと名づけられた彼女は諸手を上げて歓迎された。まあミハイル兄はちょっとだけがっかりしていたみたいだけど。よっぽど一緒に暴れ回る男の子が欲しかったみたいだ。
僕はといえば、初めてできた年下の兄妹に嬉しさ半分、緊張半分だった。けれど、やっぱり大事にしたいと思ってて、この子の立派な兄になるんだと決めていた。
そうやってまた新しい家族を加えた、これまでとは違った新しい生活が始まった。
やっぱり最初は色々と大変だったけれど、ユーリヤが3歳になる頃には大分慣れてきたと思う。
そして、ユーリヤの『異常』が少しずつ目につくようになってきた。
「ユーリ、こっちにおいで」
「うー!」
リビングで妹を呼ぶと、彼女はすぐに顔を上げてこちらに駆け寄ってくる。もう随分と立って走る姿も安定してきてハラハラすることはなくなった。
ユーリヤは喜怒哀楽といった感情はとても早いうちに豊かになったし、ご飯も色々と食べられるようになった。地面にお絵かきで遊ぶこともできる。
けれど、言葉だけがなかなか覚えられなかった。
「ユーリ、これなあに?」
「うー? あー、あー!」
「これはねー、スプーンって言うんだよ。ほら、一緒に言おう。ス、プー、ン」
「ス、うー、んー!」
言葉というよりはまるで唸り声のようだ。
そしてもう一つ、ユーリヤはやけに僕に懐いてくる。
もちろん妹は実の家族である伯父さん伯母さんミハイル兄にも笑顔で手を伸ばし、駆け寄っていく。だけど、僕に対しては明らかに反応が違っていた。
「ユーリ、もう寝るよ。ほら着替えるからこっちにきてばんざーいして」
「うー」
僕に呼ばれた途端に、ミハイル兄の膝の上にいたユーリヤはそこから迷わず飛び出して、その小さな足を一生懸命動かして走り寄ってきた。
そしてその勢いのままに僕の胸に飛び込んでくる。ユーリヤの顔を見ると、これ以上ないというくらいの満面の笑顔だった。その笑顔で小さな妹はぐりぐりと顔を僕の胸に押し付けてくる。まるで匂い付けのようだった。うん……
「ちぇっ。ユーリは本当にエミリが好きなんだな」
「あらあら、ミハイルちゃん妬いちゃったの?」
「そんなんじゃねーよ、母ちゃん……あーあ。ユーリが産まれた時に男の子じゃなかったってちょっと愚痴ったが悪かったのかなぁ」
「はっはっは、神様はいつも見ておられるということだ。ミハイル、もっとユーリに好きになって欲しかったらもっと今以上に挽回しなくちゃいけないな」
「父ちゃんまで……へいへい。俺が悪かったですよーだ。ふん」
「おっと、いじけたか。よーし、それなら今日は父さんと一緒に寝るか、ミハイル!」
「えー、勘弁してよ父ちゃーん。俺もう12だぜ」
「わはははは。逃がさんぞー。とりゃ」
「わ、分かった分かったから。抱き上げるのはやめてくれよー!」
いつもにこにこと笑顔を浮かべているキリル伯父さんがミハイル兄を後ろから抱え上げて寝室に運んでいく様は、なんというかいい親子だなぁと思った。
そんな僕はといえば、ユーリヤの服を脱がして寝巻きへと着せ替えていた。
「さ、寝ようかユーリ」
「うー!」
ユーリヤを抱っこするように抱え上げてそのまま寝室へ。高くなった視点が楽しいのか、楽しそうにはしゃぐ妹。
ユーリヤは2歳を少し過ぎたころからいつも僕のベッドに潜り込んでくるようになったので、もう最初から一緒に寝ることになっていた。
「いい子におねんねするんだよ、ユーリ」
「うい!」
片手を上げるユーリヤ。それはたぶん了解の意だろう。今日はおねしょ噴火に巻き込まれないといいなと思いながら僕は小さな温もりを抱いて眠りにつく。
とまあ、こんな風に僕と皆は暮らしていたんだ。
ユーリヤの異変の正体が分かったのは、彼女が4歳の時だった。
そう、あの時11歳の僕とユーリヤは町に出て悪ガキのグループに囲まれたんだ。
薄暗い路地裏には糞尿とゴミが散らばっている。そこに外に遊びに出ていた僕とユーリヤは追い込まれた。
追い詰めた数人のグループから2人が僕らの前に出てくる。
「よぅ、エミリアノ。この前の借りを返しにきたぜ。ったく、お前の蹴りは効いたぜ」
「なーに? また新しい子をグループに入れたの? ん……ミハイルのヤツに似てるわね。もしかして妹さん?」
「幸成にジャンナさんか」
悪ガキグループのリーダー格の二人だ。幸成は14歳ののっぽの少年で、ジャンナは13歳のハーフエルフの少女だ。
どちらも乱暴者で危険な遊びが好きな性質だった。嫌がる子に無理矢理決闘をして一方的に殴ったり、度胸試しと言って兵隊さんにちょっかい出して逃げ回ったりとその悪名はあの界隈では有名だった。
僕はユーリヤを背に隠して前にでた。
「お前たち、ユーリに手をだすなよ」
「ユーリってその子か」
「うん。手を出したら、絶対に許さない」
「……怖えな、おい。いつも甘ちゃんなお前のそんな目初めて見たぜ。
ああ、分かった分かった。心配すんなって。元々用があるのはお前とミハイルだし、そんな小さい子に手ぇ出すほど俺たちゃ腐ってねえよ」
「うん、信じてるよ」
「敵を信じてるっていうのも変な話だけどねぇ。まあいいさ、じゃあ幸成頑張りな」
「おう。この前は不覚をとったが、今日はそうはいかねえぜ」
拳を鳴らしながら僕より頭二つ以上高い幸成が構えた。
一対一だと僕の勝ち目は薄い事は分かっていたけれど、せめて何発かは殴り帰してやると僕も覚悟を決めた。
その時だった。
「ウウウゥゥゥゥッ!」
今まで聞いたことのない獰猛な唸り声をあげながら、かばった僕を押しのけてユーリヤが進み出てきた。
「こら、ダメだってユーリ! 下がってて!」
「お、おい。なんか歯をむき出しにしてすげえ睨んでくるぞ。そいつなんとかしろよ」
「ははっ。なんだい。そんな小さななりでエミリアノを守ろうってのかい? いいねえ、小さいのになかなか熱いハート持ってるじゃないか」
小さな幼児の剣幕に幸成は思わず後退りして、ジャンナさんは愉快そうに笑った。
ユーリヤは両足で石畳をしっかりと踏み、後ろの僕を覆い隠さんとばかりにその小さな両手を精一杯広げている。
幼い妹は雄雄しく『敵』の前に立ちはだかり、僕をまも……ろう……と。
「ユー、リ?」
……ふと、その小さな背にある姿が重なった。
いや、まさか。ありえない。そんなはずがない。
知らずに僕は生唾を飲み込み、心臓の鼓動の音が段々と大きく聞こえてきた。
「ち、しゃーねえ、こんなんじゃ調子でねえや。エミリアノまた次の機会に持ち越しだ! いいな!」
そう言って幸成はジャンナ達を引き連れて路地裏を去っていった。
もう誰もいなくなった路地裏に僕とユーリヤだけが取り残される。
ユーリヤはまだ警戒しているのか、彼らが去った先を向いて僕に背を向けたままだった。
僕はその小さな背を凝視しながらある一つの想像をしていた。
もし、それが合っているのならこれまでのユーリの『異常』も納得ができる。
けれどそれを認めるにはどこか奇跡じみた運命としか思えず、到底信じられなかった。けれどもし想像通りなら……どれほど嬉しいことか。
乾いた喉に唾を流し込む。収まらない動悸が胸を打つ。
僕はその背に恐る恐る声をかけた。
「……エミィ? エミリアナ?」
今は亡きかつての親友エミリアナの名前を呼ぶ。
あの勇敢で甘えん坊な大きな黒いラブラドール・レトリバーを。
僕と同じ名を持ち、一緒に育った僕の大好きな彼女の名前を。
僕の声は震えていたのかもしれない。それは期待か、不安か。
エミリアナ。それは決してユーリヤが知るはずのない名前。見知らぬ誰かの名前を呼ばれてもユーリヤはほとんど何も反応しないはずだ。
果たして、ユーリヤは僕の呼び声に劇的な反応を返した。
勢いよく振り返り、僕を見上げてくる。そして輝くような笑顔を浮かべた。
「あー!」
それを見た瞬間、僕は自分の想像が正解であるということを悟った。
ユーリヤはずっと僕がその名前を呼ぶのを待っていたのか、曇り一つない嬉しそうな顔で僕へと全身で抱きついてきた。今なら見える。その後ろにぶんぶんと盛大に振られている彼女の黒い尻尾が。
確信した。彼女ユーリヤはかつて僕をかばって死んでいった親友エミリアナの魂を持っていると。
転生。生まれ変わり。
神殿の日曜学校で教わったそんな言葉が脳裏を掠め去る。
始まりの女神が司るは創造と生命。ごく稀に女神様の御許へ召し上げられた者でその祝福を賜った者は前世の記憶を大なり小なり持つという言い伝えを思い出した。
思わずユーリアを強く抱きしめ返すと胸一杯に喜びがあふれてきた。
ああ、始まりの女神様。ありがとうございます。こうしてまたエミリアナに引き合わせてくれるなんて!
――ふと頭に冷や水が浴びせられた。
あれ、なんか色々とよく考えたらマズイような……?
言葉を覚えにくいのも、僕によく懐いていたのもきっと『エミリアナ』の影響だと思う。たぶん『ユーリヤ』は『エミリアナ』に強い影響を受けている。
ちょっと考えてみてほしい。仮にこのまま成長した『ユーリヤ』を想像してみるとどうなるか。
わんこな魂を持つ人間の女の子、妹の『ユーリヤ』を。
………………………………これはいけない。大変によろしくないんじゃないかな。
ユーリヤを抱きしめながら、背中にどっと嫌な汗が吹き出す。
目の前の小さな女の子はただにこにこと無垢な笑顔を僕に向けていた。
ああ……始まりの女神様。どうしてこうなったのでしょうか。
導入部はもうちょっと続きます。
はやく『現在』に追いつかねば。
でもダイジェスト的に進むと大分書くのが楽だなぁ。
あ、本作はあくまでコメディちっくを目指します。
次は使命に燃えるエミリアノ君のお話の予定。