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旅 その3

「とりあえず、食料問題がもっと増えましたね!」


「そうだな……」


「やはり、僕達は邪魔か?

それなら、別に………」


「いいえ!問題ありません!!

一度、決めた事はそのままやり遂げます!」


「お、おぅ………」

(意志が固いな)


「とりあえず、移動しましょう。

まずは、食料到達出来る所へ行きましょう!」


「あてがあるのか?」


「はい。前、聞きました!

僕は、寄りませんでしたが、信用できる話でしょう!」


「その自信は、一体何処から……?」


そして、俺達は暗い山を下って行った。



やがて、日が昇った。


「陸に荷車を押してもらうのは、引けたからな。

壱助が、来てくれて嬉しいぜ!」


「別に、言ってくれれば………」


「誰が、4歳にやらせるか!」


「え!!年、言いましたっけ?」


「顔に書いてある!」


「か、書いてありますか!?」


「え………いや…」


「何処ですか!?」


そう言って、陸は俺を見てきた。


「何となくだよ!4歳な気がしたんだ!」


俺は、引き気味に言った。


「……もう!最初から、そう言って下さいよ!」


そう言って、笑った。


俺も、それに釣られて笑顔になった。



やがて、昼過ぎ。


俺達は、一つの里に来た。


「おじちゃん!!おばちゃん!!」


「………!陸?」


「お久しぶりです!」


「……無事、だったのか?」


「はい!お二人も、無事で良かったです!」


「あぁ………何とか!」


「ここは?」


俺は、陸に聞いた。


「……隠れ里です!」


陸は、少しの沈黙の後、答えた。


「隠れ里?陸君、それって何?」


三太郎は、陸に聞いた。


「人目を避けてひっそりと暮らす人々が住む村里や、

世間から隔絶した理想郷の事を、言うんですよ!」


陸は、それに優しく答えた。


「へぇ!凄いね!!」


「はい!そうでしょう!」


「どっかに、行くんか?」


おじちゃんが、聞いてきた。


「はい。広島に行きます!」


陸がそう言った。


その途端、2人の顔の色が変わった。


「陸、辞めなさい!!

広島には、何か落ちるよ!」


「そうだ!何か落ちるぞ!!」


詰め寄って、そう言った。


「待ってくれ!そんな事、どうして言えるんだ?」


俺は、落ち着かせながら、聞いた。


「………すまなかった、取り乱したな。

勘だ、わしの勘はよく当たる!

きっと、広島には何か落ちるぞ!!」


「……なら、尚更俺は行く!!」


「何故だ?」


「…家族が待っているんだ」


「そうか。なら、早く行かないとだな!」


おじちゃんは、大きく笑った。


その日は、疲れも溜まってたのもあって、

早めに眠りに着いた。



ーーー

次の日、朝日で目が覚めた。


「…………」

(少し、寝過ぎた気もする…)


「起きたんですね!」


「あ!今、起こそうと思ってたんだが……」


「おはよう。お兄さん!」


「あ……おはよう」


皆は、普通に元気に朝を迎えて、

その中で、温かい太陽に照らされて起きる。


普通の日常の中で、生きているようだ。


外の空気は、普通に美味しい。


草木は、気持ちよさそうに風を受ける。


そんな、草むらで遊ぶ陸と三太郎。


「ご飯だぞ〜!」


大きく張った、壱助の声。


「……フフッ…」


これが、最初からある日常の様だ。



朝飯を食べた後、俺達は旅立つ事にした。


「食料など、諸々ありがとうございます!」


「良いんだよ!それより、どうか……無事であってよ!」


おばちゃんは、悲しそうに微笑んだ。


「はい!行ってきます!!」


俺達は、離れた。


そんな後ろ姿を、ずっと見ていた。


「あははっ!!」


「もう、それは僕のですよ!」


そんな横で、二人ははしゃいでいた。


「静かにしろ……!!」


壱助が、静かに怒った。


「……ごめんなさい、兄ちゃん!」


三太郎は、すぐに謝った。


「まぁ、小さいのですから!大目に見て下さい!」


それを見て、陸は強めの口調で言った。


「……すまん」


壱助は、言い過ぎたと思ったのか、小さく謝った。



その内、知らない所に居た。


「ここは…何処だ?」


俺は、目を擦りながら聞いた。


「そうですね……どっかの山ですね!」


「そうだな、山だ!」


「……そうか」


「お兄さん!疲れてるなら、まだ寝てたら〜!」


「いや、そうもいかない!」


正直、この身体は限界に近い。


でも、壱助のお陰で、いくらかは元気になった。


だから、平気ではある。


まだ、行ける。行けるはずだ。



やがて、一つの寺が見えてきた。


その前で、坊さんが掃除をしていた。


「……おや、どうしたのかな?」


「今晩、ここに泊めさせて下さい!!」


そう、陸が言った。


坊さんは、少し微笑んで頷いた。


「着いておいで……案内するよ!」


そう言われて、着いて行った。


そこには、いくらか広い空間があった。


「おじちゃん!ここ、使っていいの?」


三太郎が、興奮しながら聞いた。


「良いよ。好きなだけ、使うといいよ。

そうだ、ご飯を用意しよう!!きっと、気に入るからね!」


そう言われて、坊さんは去って行った。


俺達は、一言も発さずに、坊さんの帰りを待っていた。



しばらくして、坊さんは帰ってきた。


その手には、大きなお盆を下げながら。


「ほら、お食べ……」


坊さんは、肉が入ったうどんを出してきた。


「………うどん?」


俺は、不思議で聞いた。


「そうさ、鹿肉のうどんだよ」


坊さんは、微笑んで返した。


「でも、こんな贅沢出来ない!」


壱助が、遠慮がちに言った。


それを見た坊さんは、少し悲しそうに言った。


「鹿さんが、可哀想だよ!彼等にも、平等な命がある。

それを、贅沢出来ないと残すのかい?」


「別に…そんな事は、言ってない!!」


そう言うと、壱助はガツガツと食べ出した。


それを、陸と呆れながら笑った。



やがて、日が沈み出した。


坊さんは、ぽつんと座って空を見ていた。


「……この国は、どうなるんでしょうね」


「……!」


「こちらへ、お座りなさい!」


手招きをされた。


その為、隣に座った。


「この…ずっと先では……戦争の為に、多くの人々が戦っています。

私は、それが悲しいです」


そう、坊さんは涙を流した。


俺は、驚いて、小さな布切れを渡した。


「ありがとう。でも、大丈夫だよ!

この戦争で、生み出されるのは、何も残らない、陸、空、海だけ。

他には、何も残らないんだよ。

君は、どう思う?私には、何もなさないと思っている……」


坊さんは、眉間にしわを寄せて言った。


「俺も、そう思います!

でも、戦争が無かったら、俺達はもっと違ったと思います!

戦争が無かったら、今度は戦争を望むでしょう。

どれほど、愚かな行為か知らない幼い心で。

毎日の風景も、くだらい事で笑い合うことも、

どれだけ、平和で、幸せかを自覚せずに。

食糧難にも、敵国に怯えることも無く、

安心した布団で眠って、当たり前の家に帰る。

この先は、どうなるでしょう?

それでも、望むのです。どうか、平和な時代になって欲しいと!!

当たり前の日常と、誰も失う事も無い人々を」


俺は、坊さんの目を真っ直ぐ見て答えた。


坊さんは、優しく微笑んで、頷いた。

その目には、悲しさだけが映っていた。


「そうだね、そんな未来が良いね。

当たり前の戦争と、次には居ない人々。

そんなものは、無い方が良いね」


そうすると、坊さんは悲しそうに、俺を抱き締めた。


その腕は、強くもなく、弱くもなかった。


そんな坊さんは、震えていた。


戦争と言う狼に、怯えている子羊の様に。

ご覧いただき、ありがとうございました。

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