表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/22

呉市の生活と、また来るもの

やがて、目的地に着いた。


「ここは………?」


「お気に入りの駄菓子屋なんだ!

小さい頃から、ずっと通ってる!!」


「おや、りゅうちゃん。よしちゃん!!

その方たちは?2人のお客さんなのかい?」


おばあちゃんが、話し掛けてきた。


「まぁ………事実、そうだろうな…」


「そうだね〜!そうなるかも!!」


「お、お客なんて!!そんな………!!」


「良いだろ、壱助!事実、客だ!」


俺は、そう言った。


「…………そうか…」


壱助は、不満そうだったが、納得したみたいだ。


「ちょいと、待っててくれ!」


そう言って、奥に引っ込んで行った。



しばらく、昔は幼馴染達とも、

よく駄菓子屋に来たことを、懐かしんでた時だった。


おばあちゃんが帰ってきた。


「ほら、持ってきたよ!」


そう言って、袋いっぱいのお菓子を渡された。


「わ〜い!!やった!ありがとう!!」


「いつも、ありがとうございます!由美さん」


「良いのよ!皆が、喜ぶなら、それで良いわ!」


「それじゃ、失礼します!!」


そう言って、俺達は外に出た。


「由美婆さん!元気そうに、見えるでしょ?」


秋山さんに、聞かれた。


「はい!見えます!」


「見えます………」


そう、俺達は答えた。


「でもな……夫を、シベリア出兵で亡くしている!

あれでも、精神を相当病んでいるんだ!

俺達の事も、亡くした子供だと思っている!」


「…………そうなんですか……」


壱助は、悲しそうな顔をした。


「だから、あぁやって顔を出してるんだ!」


そう言いながら、悲しそうに微笑んだ。



ーー

やがて、様々な所に寄って、

彼等に着いて行った。


「ごめんね〜!連れ回すような事して!!」


「大丈夫です!」


俺は、そう答えた。


「後、ここだけだ……!

そうしたら、帰ろうか!!」


「はい!」


「分かりました!」


そうして、吉原さんが扉を押すと、

俺達より下ぐらいの子達がいっぱい居た。


「お兄さん!!」


皆が、2人に飛び付いた。


「ごめんね〜!お待たせ〜!!」


「ねぇ、お兄さん!あの2人は誰?」


小さな梨々子そっくりの女の子が、話し掛けた。


「…………知り合いだ!」


「これから、この2人がたまに来てくれるだろう!」


「…………!?」


「な、何言って………!!」


そう言って、壱助は抗議しようとした。


でも、皆はもっと不安そうな顔をした。


「お兄さん達……もしかして、居なくなるの?」


「………いいや、しばらく来れなくなるだけだ!」


そう言って、微笑んだ。



やがて、俺達はその場を離れた。


「……………あの駄菓子は、あの子達用なんですね!」


「そうだ!」


「そして、君達にもあげるよ!」


そう言って、さつまいものキャンディーをくれた。


「…………ありがとうございます!」


「俺達は、そろそろ旅立つんだ!」


「上から移動が、通達されたんだ!」


そう笑った。


「…………何処に行くんですか?」


「北海道だ!技術が評価されて、是非と言われたんだ!」


顔を曇らせて、古来さんは言った。


「ここにも、帰ってこれるか分からない!

でも、最後に楽しく話せて良かったよ!!またね!」


そう、秋山さんは微笑んだ。


その笑顔には、悔しさと苦しみが隠れている。


そんな気がした。



ーーー

次の日。


朝早くに、2人と出会った場所に来た。


「あれ?二人共…………」


「なんで、来たんだ?」


「………これを、どうぞ!」


俺は、少しばかりの小切手を渡した。


「……………これから、国の名誉のために向かう人間に、

これは不必要だよ!」


「………死ぬなんて、許しません!」


「………困ってしまうね!」


そう言いながら、受け取った。


それを大事そうに、胸ポケットに入れた。

そして、2人は去って行った。



ーーー

そんな、広島の生活にも慣れた時だった。


俺達は、連れ戻された。



3月19日。


爆弾が落ちた。


遠くから、唸るようにウゥーと聞こえる。


それが何か、すぐに分かった。



それは、空襲警報だった。



ドンッ


「……っ!!」


その時、優しかったおばさんが、

三太郎を押した。


おばさんは、狂った獣の様な目をして、

走って行ってしまった。


俺は、思った。


戦争とは、時に人の本性すら、

狂わしてしまうのだと。



俺達は、知らない土地で、

途方に暮れることになった。


「や、やぁ〜!!やぁぁぁぁ!!」


海が、恐怖で泣き出した。


三太郎も、怖そうに辺りを見渡している。


「だ、大丈夫!!ダイジョブ!!」


「そうだ!大丈夫に、決まっている!!」


空も不安な筈なのに、

義徳と共に、皆を慰めている。


「………壱助!逃げる準備をしてくれ!」


「分かっている!!」


そう言って、そそくさと荷台に荷物を詰め込んでいた。


「早く、頭巾を被れ!!」


そう指示をして、少しして俺達も出発した。



周りは、パニックで逃げ惑っていた。



俺達は、その中を走って、

何処かにある筈の防空壕へ向かった。



向かっている途中、またドカンッと、

地震が起きたような地鳴らしが来た。


ふと、その方を見ると、

戦艦がドカンッドカンッと、撃っている。


その上には、敵国らしき飛行機が飛んでいる。



正しく、見慣れていて、始めての光景だった。


「あの人は、元気かしら?」


母さんが、そう呟いた。



軍艦。


ここでは無いが、何処かの軍艦に乗っているだろう。



「…………お父さん…」


梨々子が泣き出した。


それに釣られて、義徳も泣き出した。



「梨々子…………」

(泣きもしないで、必死に耐えていたものね………)


でも、泣き声も、大勢の子供も、邪魔な対象になる。



何処に行こうが、追い返される。



それでも、家族の為に、

必死に走り回った。



やがて、一つの防空壕を見つけた。


そこの中には、何人もの人々が居たが、

手招きをして入れてくれた。


俺達は、やっと入る事が出来た。



防空壕の中では、様々な人々の声が反響する。



「もっと、詰めろ」や「暗いよ………」という声。


「誰か、布を下さい!!怪我をしました!!」


遠い暗闇から、問いかける声。


「静かにしろ……気付かれる」


と嘆く、商店街の魚屋らしきおじさん。


皆の日常を、一気に壊されたように、

大きく揺れる防空壕と、鳴り続ける警報のみ、

頭にこだました。



ーーー

やがて、警報も止んだ。


俺達は、町に戻って来た。


町は、もくもくと燃える家屋があり、

座礁した戦艦が、多く見受けられた。


耳には、人々の悲しみや恐怖の声が聞こえて、

鼻には、焦げ臭い匂いがこびりついた。



家に戻ると、おばさんが小刻みに震えていた。


幸い、家は無事だったものの、

俺達に対する後悔なのか、おばさんは震えていた。



少しして、俺達に気付くと、

一目散に駆け寄ってきた。


「大丈夫やった?大丈夫やったか?」


本当に、普段は、人を見捨てる様な性格ではない。


恐怖の余り、正気を失ったのだろう。


「もう、置いていかないでくださいね!」


強めに注意して、俺達は中に入った。

ご覧いただき、ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ