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始まり

これは、事実を元にしたフィクションであります。

事実と異なる、場合が発生するかもしれません。

もう、戦争が始まってから4年が経っていた。


でも、余り戦争をしている実感など無くて、

ただラジオで、日本は勝っているという放送のみを聞いていた。


「それじゃ……母さん、買い物はこれだけ?」


「えぇ、そうよ!お願いするわね!」


「……うん。すぐに、帰るよ!」


そう言って俺は、京都に買い物に行った。


ーーー

「………」

(確か、おみあげ用に八ツ橋だっけ……またか…)


そう思いながら、探していた。


ドンッ


「わっ!?」


誰かとぶつかって、相手が床に倒れる音が聞こえた。

慌てて、謝ろうと振り返った。


そこには、俺と同い年ぐらいの痩せた少年が居た。


「ごめん……大丈夫?」


俺は、彼に手を差し出した。


「あ……いや、ごめんなさい!僕も不注意でした!」

(なんだろうこの手………握手かな?)


彼は、それを優しく握り返しながら、首を傾げていた。


「………足、擦りむいてるな…大丈夫か?」


俺は恥ずかしくて、気を逸らす思いで、

たまたま目に入った怪我を指摘した。


「あ……大丈夫だよ!気にしないで!」


彼は少し無理に笑うと、お辞儀をして立ち去ろうとした。


でも、彼の足からは、ダラダラと血が流れ続けていた。


俺は慌てて彼の手を取った。


「……何処?家まで送る!」


そう言うと、彼は笑いながら


「それじゃ、お言葉に甘えて!」


と、言ってきた。


俺は、その子をおんぶしながら買い物を済ませた。


「それじゃ、家は?」


「愛知県、名古屋市だよ!」


「…………え…」


「も、もしかして…遠かった?それなら、歩いて帰るよ!」


「いや、一緒だったから……驚いただけ…」


俺がそう答えると、嬉しそうに


「本当に〜!!」


って、笑いながら答えていた。


俺は、世界もこんな風に笑い合えれば良いのになと、

少しばかし思ってしまった。


ーーー

それから、駅に着いて汽車に乗った。


「僕さ、汽車乗るの始めてなんだ!」


「……ふ〜ん、そうなんだな…」

(それじゃ、ここまでどうやって来たんだ?)


「……父も理由は知らないけど、急に招集されちゃって……

でもね!いつか、帰ってきたら汽車乗せてあげるって言われたの!

いつか、父と乗れるかな?」


「……どうだろうな、戦争が終われば乗れるかもな…」


「……戦争?何処で、戦争が………?」


「……え、知らないのか?ここだ、日本!」


「戦争………そっか。じゃあ、分からないね!」


彼は、少し悲しそうに微笑んだ。


「ねぇ、そういえば名前、何ていうの?」


「名前……俺は、高麗こうらい 隆平たかひら

君は?何ていう、名前?」


「僕は、竹山たけやま 晴彦はれひこ

昭和七年生まれの11歳だよ!」


「ふ〜ん、そうなんだな」


「はぁ!?君が聞いてきたんだろ!

全く………興味なさそうにして……」


「悪かったな……!」


そう、少し微笑んで返した。


彼とは、名古屋駅で別れるまで、ずっと話を続けた。


「それじゃ、またね!隆平くん!」


「あぁ……またな!」


俺は少しだけだったのに、新たな友達が出来たような気分だった。


その後、俺は家に帰った。


「ただいま!」


「あら!おかえりなさい!」


「八ツ橋は、無かった……」


「あら、そうなの!また、今度にしようかしら!」


「はいはい……」

(どんだけ、食べたいんだ……)


正直、別に生活に困るだとかそんな事はない。

強いて言うなら、最近は食料や物資が余り届かない事ぐらいだ。


「………弟達、呼んでくる」


「えぇ、いつもの空き地で遊んでると思うから、お願いね!」


「分かった!」


俺は、近くの空き地に向かった。


「えいっ!とりゃあ!」


「ウワッ……!!」


「あはは!日本は、強いんだぞ!!」


「クッ……クソォ!!」


「こらっ…!」


ぽかっ


「いったぁ!何するんだ、兄ちゃん!」


「虐めるなって、言ってるだろ?」


「……でも、だって!異端児なんだぞ!」


「………」


彼はアメリカ……元より、敵国の血が混じっている。

だから、よく異端児だと言われている。


そんな子だ。


「それでもだ……彼は、日本生まれの日本育ちだ!

顔立ちや目の色が違っていても、紛れも無い日本人だ!」


「……ごめんね、空!虐めて………」


「……イイよ!こんなworld!

生み出したのは、すべてオトナタチ……」


彼は寂しそうに呟いた後に、トボトボと去っていった。


「………俺達も、帰るぞ…」


「分かったよ!」


道中、別の所で妹も回収して帰った。


「ただいまぁ〜!!母ちゃん、今日のご飯何!!」


「今日は、芋ご飯。好きでしょ〜!」


「えぇ、また芋〜?」


「我儘言わないの……食べれるだけ、ありがたいのよ!」


「……はぁ〜い!」


弟は、その後もしばらく不満そうだった。


ーーー

「それじゃ、おやすみ……」


「また、明日な!」


今日も、1日が終わった。


でも、何もない1日だった。


本当は、戦争なんて嘘で、

俺達は騙されているだけのように思えた。


「隣組とか、要らなかったかもな……」


そう思いながら、眠りについた。


ーーー

朝、日差しが眩しくていつもより早めに起きた。


「……おはよう…母さん」


「あら、いつもより早いのね!

何か、あるのかしら?」


「いいや、何も無いけど……」


「そう?それじゃ弟達を起こしてきて!」


「はいはい……分かってるさ」


俺はそう言って、弟達の所へ行った。


義徳よしのり!梨々りりこ!朝だぞ!」


「ん〜、お兄ちゃん……もう起きたの?」


「兄ちゃん……もう少し、寝かせてくれよ…」


「全く………たるんでると、父さんにーー」


「分かったよ!」


「もう、お兄ちゃんは頭が硬いんだから!」


そう言いながら、身支度をして、

さっさと降りて行ってしまった。


ーーー

その後、ご飯を食べて、

家を出た。


「お兄ちゃん達!いってらっしゃ~い!」


「行ってくる……」


「行ってきまぁ〜す!」


それから俺達は、学校へ向かった。



学校に着くと、幼馴染達が戦争ごっこをしていた。


「………何してんの?」


俺は、聞いた。


「お?隆平!お前も、やるか?」


そう、Kが聞いてきた。


「助けてくれよ、隆平!

こいつ、カルタの絵下手過ぎて……どれがどれか分からないんだよ〜!」


そう、Mが言った。


「はぁ!?何だと!!」


Yが、怒り口調で言った。


「皆が、言い争うの〜!!」


そう、Tが言った。


「知らねぇよ……」


俺は、軽くあしらった。


そう話しているのは、幼馴染の五人だった。


「…………」

(言うて残ってるのは俺含めて……六人だけか……)


他の同級生は、皆、様々な理由で疎開して行った。

俺達も、近い内にあるのだろうか。


そう考えていたら、


「どうしたんだ?男子ばっかで、つまらないか?」


そう、Kに言われた。


「……あぁ、そうかもな!」


俺は、笑いながらそう返した。


「なんやとぉ〜!野郎共じゃ、いけないってのかぁ!」


そう、Mが笑いながら言った。


「おぉ、良いぞ!M!!やれやれ!」


Kが、後ろで応援していた。


「悪かったって!!あはは、許して!許して!」


俺は、しばらくの間、追い掛け回された。



それから、数日が過ぎた。


幼馴染は、一人を残して

皆、疎開して行った。


「幼馴染すら、もう……全員で集まれないんだな…」


Kは、悲しそうに言っていた。



そんなある日だった。


「……暇か?」


Kが、聞いてきた。


「どっちかっていえば……」


「だよなぁ〜!」


そうKは、何かを考えるように空を眺めていた。


「お!見ろよ、飛行機だぞ!

珍しいな……こんな所飛んでるなんて!」


「そうだな………」

(何か……胸騒ぎがする…)


「そういえば、知ってるか?

この間さーー」


また、うざったらしく話をしてきた。


俺は、いつもの事だと、軽く相槌を打ちながら、

ボッーと空を眺めていた。



そんな日だった。


その日、俺達全校生徒は体育館に呼ばれた。


行ってみると、全校生徒が残っているのは、

両手で数えられそうな程だった。


「えー、全校生徒の皆さんにお話があります!

戦争も激戦化してますし、数日前に起きた大地震の影響で、

しばらくの間休校することにしました………」


そう、言われた。


「うわっ、本当かよ……」


Kが、ボソッと言った。


「……………」


俺はただ、そんなKを見ていた。


ーーー

やがて話は終わり、

俺達は帰ることになった。


「………隆平…」


「……?」


俺は、呼び止められて振り返った。


「……隆平…もし、俺達が消えても……前向いて生きろよ!」


そうKは、急に言ってきた。


「はっ……?何言ってるか分から…ないぞ……」


いや、分からなくもない。

でも、考えたくも無い。


「……とにかく、また会う日までな!」


彼は、笑って行ってしまった。

やけにそれが、鮮明に残った。

ご覧いただき、ありがとうございました。

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