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半端者

作者: 朝臣
掲載日:2025/11/04

はじめまして。

朝臣と申します。

檻のように、迷路のように、どこまでも森が続いている

——天を覆った樹冠の隙間、疎らな日差しが刺している


檻のように、迷路のように、どこまでも森が続いている

——薄暗闇の向こうから、化生や魑魅魍魎の鳴き声がする


檻のように、迷路のように、どこまでも森が続いている

——姿を見せず、声だけを


檻のように、迷路のように、どこまでも森が続いている

——嗤うように、嘲るように、響かせる






茂みが揺れた



鳥になれない人間が、一心不乱に駆け抜けてゆく


息を切らしながら



枝葉を折り、蔦をちぎり、駆けていく


手足は刺され、創つき、削られ、赤い斑点を大地に垂らす





また、茂みが揺れた



餓えた群狼が駆けている


獲物が散らす、依々な血の臭いを辿る


只管に、執拗に、狡猾に、獲物を追う





森が開けた




人間の前に、崖が現れる


底では激しく水が流れている


刺々しい岩々を削りながら




人間は立ち竦む


振り返り、崖を見る




狼が迫っている

——……飛べない


逃げないと

——飛べない


飛ばないと

——飛べない!!


死が迫っている

——飛べない!!!!




狼の群れが森から飛び出した

——もう時間がない!


狼たちが広がりながら、包むように迫る

——飛ばないと!


狼たちは、その姿を朧げな闇に変えた

——せめて一度でいい


闇の中で、狼たちは牙をむいた

——飛びたい!





ニンゲンが纏った襤褸の下、明滅とともに翼が現れる


傷一つない、純白の翼




ニンゲンは跳んだ


翼を広げ、羽ばたいた












落ちた




遥かな空には届かない


似せかけの翼だけでは、空を舞えない


その翼を支える、魔術(チカラ)を持たない




半端者は、谷底の川に()ちた






狼たちは、崖の淵でそれを見ていた


一匹、また一匹と、踵を返した



その体を闇に変えながら、森の中に消えていった



抜け落ちて残された羽を、風が空に運んでいく


後に残ったものは、何もなかった

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