僕の弟は何をしても可愛いのだ。
「ただいま帰りました。長らく留守にしてしまい、すみませんでした。」
先程僕達はオルガナイト王国のサンガリア公爵家へと帰って来た。
「いや、お疲れ様。うちの騎士団長からちょこちょこ報告を受けていたから問題ないよ。
それより大変だったねぇ。倒れたんだって?
体は何ともないのかい?」
おぅ…、倒れた事まで報告されてた…。後ろでギルが、そんな事聞いてませんが…?的な若干キレ顔をしている…。その隣でそんなギルをウィル君が呆れた顔で見ている。
……あぁ〜、帰ってきたんだなぁ〜…。
「はい。ちょっと精霊達に魔力をあげ過ぎちゃいました。その後しっかり休んだのでもうすっかり良くなりました。体調は万全です。」
だからギル…、そんな顔しないで。
「ギルの事も良くしてくださってありがとうございます。」
生物学的父母が僕を動かす為にギルに何かするかも知れないからと、ギルもサンガリア公爵家へと避難させていただいている。
「その後はどうなっておりますか?」
リリカル公爵や生物学的父母の断罪の準備は進んでいるのかな?まさかもう終わったとかじゃないよね?!
僕の気持ちを察したのかロバート様が苦笑いして、
「あぁ、そろそろと思っていたよ。証拠も十分過ぎるほど集まったし、証言も揃った。
陛下とも相談してリリカル公爵とストロイエ侯爵夫妻、ギルバートの婚約者となったモーグル伯爵夫妻は当主交代の上、蟄居となる。その他リリカル公爵の悪事に加担した者も領地への謹慎、王都からの追放処分とする予定だ。」
何それ……。随分と甘い処分じゃない?
「そんな顔をするな…。甘いと言いたいのだろう?分かっているさ。
本当は裁判にかけて奴隷堕ちにする案もあったんだ。しかし、おおっぴらにそこまでやってしまうと他の貴族や民からの反発が大きくなるだろう。
その結果ギルバートやジェラルド君がその尻ぬぐいをしなければなるまい。交代した若い当主に厳しい目が向けられ、最悪当主に相応しくないだの難癖つけられてお家騒動へと発展しかねない。
だから悔しいだろうが今回の件は内々で処理して何かしらの理由付けされてからの当主交代だね。」
……う〜ん…、何か悔しい……。
ギルをちらっと見るとギルも悔しそうに顔を歪ませている。
悔しいがそれとは別に、……へぇ~…、そう……、騒ぐ奴らがいるんだ。それは黙らせておかないといけないね……。後で調べなきゃね……。
ちらっとジルを見ると頷いてくれたので後で教えてもらおう。
「…私も目を光らせておくからあまり過激な事はするなよ。」
ロバート様に呆れたように言われたが、過激じゃないよ!当然の事だよ!あんなに頑張っているギルが!我慢しているギルが!次期当主に相応しいギルが!舐められるなんて僕が我慢出来ないからね!!
「……して、その抱っこ紐に包まっている子が例の子かい?やはり目を覚さないのかい?」
「はい。目覚めを拒否しているかのように眠ったままです。……でもこの子に嫌なものを見せたり聞かせたりしたくないのでもう少し寝てて欲しいですね。この子が目覚めたら汚い奴らなんていない綺麗な世界を見せてあげたいですからね。」
だからさっさとあのゴミクズ共を片付けてしまわないとね。
ロバート様の前を辞してギルとウィル君とお茶をする。
「ギル、今後難癖つけてきそうな家があるのかい?」
ギルが悔しそうな顔をして、
「やはりまだ僕が若いからと、僕が失策をするのを虎視眈々と狙ってる家は幾つか心当たりがありますね。僕を失脚させて自分の息子を後釜に据えたいのでしょうね。」
…へぇ〜、あるんだぁ…。あのゴミクズを掃除したら今度はそっちも掃除しなきゃだね。
それにしても貴族とは駆け引きしたり、足の引っ張り合いだ。こんな所にギルを置いておいて良いのかなぁ…。
お兄ちゃん心配になってきちゃった…。
「ギル、次期当主やりたくないなら僕と一緒に来ても良いんだよ?貴族なんてドロドロした足の引っ張り合いでしょ?ストロイエ家なんて潰しちゃえば良いんだからギルがやりたくない事を我慢してやる事はないんだよ?」
ギルは一瞬キョトンとしてから笑いながら、
「兄上ありがとうございます。大丈夫ですよ。僕はストロイエ侯爵家次期当主になります。結構楽しいんですよ。まだ力が足りなくて舐められたりしてますが絶対いつかギャフンと言わせて見せます。
でもそうですね、もう嫌になったら兄上の所に押しかけるかもしれません。その時はよろしくお願いしますね。」
僕の弟が偉すぎる…。
「うん。絶対だよ。無理はしないでね。」
僕とギルがほのぼのとしていると、呆れた様にウィル君が、
「アル君大丈夫ですよ。こいつ結構腹黒くてやられたら倍返しで仕返しするやつですから。」
うん。腹黒のギルもまた良し。僕の弟は何をしても可愛いのだ。
決着の日がもうそこまで近づいてきている。




